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 厚労大臣として2009年の新型インフルエンザにどう対応したか(6)

 新型インフルエンザ対策で、私が心残りだったことは、ワクチン製造である。

 日本国内で必要とされるワクチンの数は、5700万人分とされている。

 しかし、私が厚労相だった期間は、2009度中に製造可能な国産ワクチンは1800万人分に限られ、残りを海外からの輸入でまかなうという、大まかな方針しか提示できなかった。

 新たに予算をつけて、ワクチンの製造に本腰を入れるよう画策したのだが、何しろ官僚たちの尻は重く、思うように事態は進まなかった。

 国産ワクチンは、鶏の有精卵を使って製造され、出荷までに半年以上の時間がかかる。これは、世界の製薬メーカーと比較すると、非常に遅れている。

 世界では、豚の肝臓や昆虫を使った細胞培養も登場している。これらは、出荷までに2か月ほどしかかからないという。実に、国産の3倍のスピードである。

 新型インフルエンザ対策は、何度も繰り返しているように一刻を争っている。これら海外の最新技術を速やかに導入すべきだと思うのだが、老舗の国内メーカーとつながりの深い厚労官僚たちが、それをよしとしない。

 実際、外国産のワクチン輸入を進める私の許に役人たちがやってきて、

「大臣、国産は安全なのですが、外国産にはアジュバントという免疫を高める物質が入っていて、副作用の危険があります。輸入を許可しないで下さい」といってきた。

 中には、「日本では、承認許可が下りないレベルの劣悪なワクチンだ」と話す役人もいた。

 私は、自らのネットワークを駆使して、先ほどのアジュバントについて調べてみたが、どこにも「副作用で死者が出た」という話は出てこない。むしろ上がってきたのは、アジュバントの免疫効果によって、ワクチンの効果が高まるという情報だった。

 このような情報は、東大医学部出身の教え子たちからなるネットワークから入ってきたものだ。私は、駒場時代に理科3類、つまり医学部の学生を教えていた。彼らは、私が厚労相の頃には、40歳代で医学研究の最前線におり、いつも私に情報を提供してくれた。

 もし私がこのような「官僚以外」からの情報チャンネルを持っていなければ、役人のいうことを鵜呑みにしていたかもしれない。

 私に“進言”した役人たちは、自らの意見を率直に述べただけではなく、自らの既得権益や天下り先を守りたかったのではないか。だからこそ、平気で偏った情報を大臣にあげてくるのではないか……そう感じざるを得なかった。

  大臣と官僚との闘いとは、情報戦争でもあったのである。

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