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新型コロナウイルスが世界を分断する(金融日記 Weekly 2020/1/24-2020/1/31)

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 新型コロナウイルスの恐怖が世界を覆っている。中国の武漢で発生したこのウイルスは瞬く間に人々に感染し、死者数は日に日に増えている。そして、残念な知らせだが、これは今後も増え続け、おそらくピークは数カ月先だということだ。この原稿執筆時点で日本での感染者数は20人で、まだ日本では「直接の」死者は出てないが、いまのところ致死率は2〜3%程度と推定されており、時間の問題で日本からも犠牲者が出ると思われる。

 武漢から日本政府のチャーター機で帰国した日本人にはほぼ全数検査が行われ、約1〜2%程度が新型コロナウイルスに感染していることが判明した。この感染率と武漢の人口から筆者が推定した現在の武漢での感染者数は概ね10万人程度で、これは香港大学の研究チームの推計である約7.6万人とよく一致している。日本の潜在的な感染者数はおそらく数百人のオーダーで、感染は拡大し続けるので、現在の2〜3%の致死率が維持されるなら、これから日本で数十人、あるいは数百人の犠牲者が出てもおかしくない。通常はこのようなウイルスは変異により致死率が下がることが多く(宿主を早く殺すウイルスは拡散されず生き延びられないので)、そうなれば犠牲者はもっと少なくなるかもしれない。筆者も当然だがそうなることを祈っている。



●Novel Coronavirus (2019-nCoV) Resources
https://www.asm.org/Press-Releases/2020/nCoV2019-Resources

★新型コロナウイルスは感染者数・死者数ともに指数関数的に増加中。2003年のSARSも2009年の新型インフルも超えるスピードだ。
●武漢の感染者7万6千人か 香港大のチームが推計
https://this.kiji.is/596344982815589473?c=39550187727945729

 良い知らせもある。これからも新型コロナウイルスの感染者数・死者数は予想通りに増え続けるだろうが、中国政府の大胆かつ過激とも言える封じ込め作戦、そして、何より武漢で暮らす人たちの犠牲の下で、これらは武漢に集中するだろう。しかし、良い知らせとはこのことではない。良い知らせとは、最終的には世界で万単位の犠牲者が出たとして、公衆衛生的には、そこまで重大な問題ではないし、個人の問題としてはそこまで健康上の驚異ではないということだ。

 人々は極めて大きい数を直感的には理解できないのだが、この程度の数字はそれほど大きくないのだ。たとえば、身近な季節性インフルエンザは日本だけで毎年1000万人程度が感染し、そのうち1万人程度(致死率約0.1%)が死亡すると言われている。新型コロナウイルスで、たとえば日本だけで数百人が犠牲になるかもしれないが、人間は現代でもその程度の病死とはいつも隣り合わせであり、今回の新型コロナウイルス騒動で何か特別に大きな死の危険因子が増えたわけでもないのだ。
 
●新型インフルエンザに関するQ&A 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

★アメリカでは現在インフルエンザが大流行しており今シーズンだけですでに8000人以上が死亡したと見られる。
 以上は、筆者をはじめ、統計学を学び物事を定量的に見ることを好む人の考え方であり、多くの感染症に明るい医師や公衆衛生を学んだ専門家の感想でもある。しかし、筆者は自分のような人間は、社会の中では極めて少数派だということも認識している。多くの人は物事を定量的に捉えることはできないし、感情的で、非合理的だ。メディアはセンセーショナルなニュースを好み、狙い通りに大衆は煽られる。そして、民主主義という制度では、こうした多数派の人たちに耳を傾ける政治家が政策を担っている。

 新型コロナウイルスはもはや医学の問題ではなく、政治、そして、経済の問題なのである。そして、それは極めて大きな問題になりつつある。現在の中国経済はかつてないほど世界の中での存在感が大きくなっているからだ。

 筆者は先週は香港に滞在しており、この原稿はマカオで書いている。香港もマカオも中国の一部ということで「不要不急の渡航」をやめるように外務省に勧告されたばかりだ。香港もマカオも感染者数は日本と大差ないが、ウイルス拡散を何としても防ぎたい中国政府の意向からか、街の様子は以前と様変わりした。企業の従業員は自宅待機、あるいは自宅勤務を推奨され、多くのオフィスが閑散としている。街を歩く人たちは皆マスクをつけている。武漢に立ち寄った人は入国を拒否されている。こうしたことの経済への影響が甚大だということは言うまでもない。上海や北京ではもっと厳しいウイルス対策が実施されていると聞く。観光産業などは、おそらく前年同期比で8割減、9割減の世界であろう。そして、中国の工場に多くの日本企業が依存しており、サプライチェーンが止まってしまっているという深刻な問題を引き起こしている。

 そして、このウイルスは社会に大きな分断を引き起こしつつある。世界各地で中国人への差別が報告されている。こうした分断は、もともとあった反中国のイデオロギーと相まってさらに加速していく危険性がある。

 現在、武漢で多くの医療関係者が自己犠牲を厭わず、患者の治療、そして、感染拡大のために必死に働いている。こうした人間の最も美しい精神がウイルスに打ち勝つのか、あるいは最も醜い部分が社会を分断させていくのか、いったいどちらになるのだろうか。日本で最初の新型コロナウイルス関連の犠牲者となったのが、病死ではなく、チャーター機で帰国した日本人を「隔離」しなかったことでメディアから厳しく非難されていた官僚の自死であったことは、何かこれから社会で起こる不吉なことを暗示しているような気がしてならない。

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