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まるでドキュメンタリーの緊張感 “異端であり正統”な震災映画『風の電話』

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東日本大震災からもうすぐ9年が経とうとしているが、先週公開された『風の電話』は、異色の「震災映画」だ。

3.11で家族を失った女子高生・ハルが、叔母と暮らす広島・呉から、故郷の岩手・大槌までをヒッチハイクして帰るロードムービーである。道中でさまざまな人たちと出会い、ハルは、失っていた生きる意味を取り戻す。

印象的なのは、全編にまるでドキュメンタリーのような生の雰囲気が漂っていることだ。それもそのはず、メガホンをとった諏訪監督は「即興演出」という手法の使い手だそうで、ぼくは監督の映画は初体験だったが、基本的には台本がない、現場で即興で作られていく絵作りは、息を呑むような雰囲気を演出し、観客に、演者の言葉を1つも聞き逃せない緊張感を与える。

当然、演者にも負荷がかかり、力量が試されるこの手法だが、本作において特にインパクトがあるのは、震災で多大な被害を受けた福島出身の西田敏行。西田が演じているのは、福島に住む男性なのだが、軽妙に東北弁を操り、福島の扱いへの不満を述べる姿を見ていると、まるでそれは西田敏行なのか、西田が演じている男なのかがよく分からなくなってくる。

西田と同様にインパクトがあるのは、ハルと西島秀俊演じる元原発作業員が訪れる在日クルド人宅のシーン。出演しているのは、実在のクルド人の人々で、日本での苦労をとうとうと語る姿はドキュメンタリーのよう…ではなく、そこは本当にドキュメンタリーなのである。

また、こうした無茶な(?)な演出方法に柔軟に対応し、ヒロイン・ハルに息を吹き込むモトーラ世理奈のポテンシャルの高さにも舌を巻く。特にハルが、突然いなくなった家族と、家族を突然奪っていった津波に対して放つ怒りの咆哮は圧巻の一言で、痺れてしまった。

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