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高額な放映権、ドタバタ続きの国際中継…元TBSチーフプロデューサーに聞くサッカー中継の裏話

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多くの熱狂を生むスポーツ・サッカーの舞台裏を取材する森雅史さんの連載『インサイド・フットボール』。今回は代表戦など、国際試合の中継の裏側に迫ります。大金が動く放映権の決まり方から、あの北朝鮮からの中継の裏話まで。ここでしか読めない話を今回もたっぷりお届けします。


お茶の間にいながら世界各国で行われているサッカーの試合を見ることができるようになった現在。テレビのスイッチを入れれば当然のように映像が流れ、現地の音声が聞こえる。だが、実際の現場では今も変わらず多くのスタッフが冷や汗を流しながらコンテンツを送り届けているのだ。

今回は元TBSの名物チーフプロデューサー、名鏡康夫氏にご登場いただき、海外からのスポーツ中継でプロデューサーが務める役割を明かしてもらうとともに、これまで苦労した様々な中継放送の裏話についても教えていただいた。

話を聞いた元TBSチーフプロデューサー・名鏡康夫氏 浦正弘

ゴールデンタイムは大台突破。サッカー国際試合の放映権料

サッカーを放送するとき、まず放送権の取得があります。たとえば現在行われている2022年カタールワールドカップ・アジア2次予選は、テレビ東京を除いて各局で放送権をシェアしています。まず、国際サッカー連盟が(FIFA)がインターナショナル・マッチデーを決めて予選が組み込まれますね。そこから各局が話し合いをして、「何曜日は避けたい」などの各局の編成事情を考慮して、放送する試合を決めていきます。

その中には当然放映権料という話が出てきますから、その価格に見合うと思ったら交渉するという感じです。具体的な金額は言えませんが、ゴールデンタイムで放送する予選などはほぼ大台は超えます(一億円以上?)。その他の試合に関して言えば、深夜帯などになるとテレビ局側もスポンサー収入などの実入りが少なくなるので、そこは金額は少なくなると思って下さい。

国際親善試合で試合が深夜枠になってしまったときなどは、各局とも乗らない中いろいろ思案して手を挙げたこともありました。たとえば2007年9月にオーストラリアとスイスで開催された「3大陸トーナメント」ですね。イビチャ・オシム監督のときです。

放送する試合が決まった後もプロデューサーにはいろいろな実務が発生します。まず編成部を通じて「この時間帯だからこの金額で」ということで制作の予算が決まります。まずはそこで「えっ?」ということになるのですが(笑)。そして、そこから算段です。

現場スタッフのホテル手配もプロデューサーの仕事

そもそも海外から放送する場合にはピンからキリまでの方法があります。「オフチューブ」と言って、現地に行かずに映像だけもらって日本国内で音声を付け加える方法もあれば、2台か3台のカメラを現地のスタジアムに入れて、国際映像という、現地作成の映像に加えて放送することもあります。また、場所によってどれくらいのスタッフを投入するか考えなければなりませんが、アジアの予選クラスだと、制作陣も含めて15人から25人ぐらいのスタッフは注ぎ込んで中継します。

そういうことを考えながら、試合の2、3カ月前には下見に行くのですが、そのとき同時にホテルも探します。各局で事情は違うと思うのですが、大きな取材班を出すような局だと「ロケーション・マネジャー」という役割の人がいたり、アシスタント・プロデューサーがその役を担います。TBSは意外とシビアだったので(笑)、プロデューサーが全部やらなければいけませんでした。

ホテルをいくつも回って、スタジアムへのアクセスを含めた立地条件、値段がリーズナブルかどうか、Wi-Fiのスピードなどを調べて全てを加味し、最後は「これだけの人数で今、予約するから早割でもう少し安くならないか」とか交渉するんです。

また、渡航費に関しては、当然機材を持っていくわけですから通常の重さを超える超過荷物の問題が出てきます。必要な機材がわかってきた時点で、「この人数で搭乗するからディスカウントを頼む」という交渉も行っていました。それから僕は放送後の打ち上げの場所まで決めてきましたよ。滞在する間にスタッフが現地食以外を食べたそうな感じになってくることも考えて、中華料理店を予約したりもしました。世界中で、中華料理は間違いないです。どこでもありますし、必ずおいしいですから。

ホテルや食事の手配まで、名鏡氏は幅広い業務を自らおこなっていたという 浦正弘

TBSならでは「世界ふしぎ発見!」の助け船

世界のいろいろな地域に行きましたが、放送の難易度は場所によって大きく違いました。ヨーロッパに行くとすべて環境が整っているので何の問題もありません。放送に慣れているし、サッカー中心の場所ですから、苦労はありませんでした。

問題はアジアですね。サッカーの凄さということでもあるのですが、なかなか行かないような国や地域から放送しなければならないこともあるんです。よく知らない国が割り当てられた時は大変ですよ。「これはどうすればいいんだ?」って。

日本人がいるかどうかもわからない国だったら、まず大使館に行ってコーディネートできそうな人を紹介してもらいます。日本人に限らず、昔日本語を習っていて今は現地に住んでいる人でも構いません。そして何とか見つけて契約し、現地のいろいろなことを処理してもらいます。

TBSが得だったのは「世界ふしぎ発見!」という番組があって、そのスタッフはいろいろな場所に行っていることでした。「世界ふしぎ発見!」のスタッフから現地のコーディネートをしてくれた人物を紹介してもらうことが出来たんですよ。優秀なコーディネーターで、しかもテレビに慣れているという人物とのルートができているので、そこは本当に助かりました。

コーディネーターが決まったら、次は技術的な問題も解決しなければなりません。試合日が決まった時点で技術部と連動し、必要な事項をクリアしていきます。

たとえば回線の問題ですね。試合の映像を撮って、それをどういう経路で日本に送るか。これは電話と一緒でいろいろな業者がいて、信頼度と値段が違います。そこで技術部に見積もりを取ってもらって、どこを選ぶか決めていました。「ここは安いけど、この前トラブったから止めよう」というのもありましたね。

実は回線って、バックアップ回線まで含めて2本繋いでるんですよ。万が一本線が切れた場合にバックアップに切り替えるようになってるんです。それも例えば本線はアジア経由で飛ばして、バックアップは別ルートで飛ばすようにしています。海外からの中継って、ときどき映像が止まって数秒のタイムラグの後復帰することがあるじゃないですか、あれは本社でバックアップに切り替えてるんです。

他には現地で使う中継車のレンタルも手配します。下見に行く前に現地のプロダクションを探しておいて、下見の際に実物を確認します。その中継車も様々な種類があり、しかも放送の方式によって足りない機材も出てきます。するとその足りない分は日本から持っていかなければならないんです。もっともそういう技術的なことは「テクニカル・プロデューサー」という役の人物に任せますね。

もちろん回線なども含めてトータルでコーディネーションしてくれる会社もあります。ただ、すべて値段交渉次第ですね。本当になんだかんだお金はかかります。それを全て含めて予算に合うようにしなきゃいけないんです。

現地を経験したからこそわかるエピソードも多い 浦正弘

中継直前のドタバタ、ハーフタイムの選挙カー…苦労は続く

イビチャ・オシム監督の時のイエメン戦、2006年9月6日に行われたアジアカップ予選のときも酷かったんですよ。イエメンは中東でもあまり裕福ではない国で、現地のプロダクションの中継車を見たら、これは何十年前のだよっていう年代ものでした。

そのときのコーディネーターはレバノン人で、これが食わせ者だったんです。英語も話すししっかりしてると思って最初は任せてたんですよ。けど、その彼が用意していた当日のカメラマンもレバノン人で、これがいまいち。しかも中継車って普通はスタジアムの外に置くじゃないですか。ところが行ってみたら陸上トラックの、しかもメインスタンド前に置いてあって。

セッティングもドタバタしたんですけど何とか終わって、打ち合わせで「この時間から、しっかりとこのメニューどおりで行くぞ」と確認して、いざ試合の前にアナウンサーと解説者がピッチの横に立って「今日の試合は〜」と始めることになったんです。

ところが画面はカラーバーのまんま。カメラの映像に切り替わらないんですよ。慌てて中継車にすっ飛んでいって「何やってるんだ、時間だぞ!」ってドアを開けたら、現地スタッフが差し入れのピザを食べてるんです。「てめえ~!コノヤロー!」って怒鳴りつけてやりました。

それで中継が始まったら始まったで、スタジアムのパラボラが陸上のトラックの横にあるんですよ。僕もびっくりです。見張りは1人いるんですけど。もしパラボラにボールが当たって角度が変わったら映像が飛ばせないじゃないですか。それだけで全部アウトです。

僕は心配だから試合の途中にパラボラのところに行って、他にもスタッフをパラボラまで呼んで「ここを守れ。ボールが飛んできたら全部排除しろ」と言って一緒に構えてました。ハーフタイムに当たらなくてよかったとホッとしてたら、スタジアムの中に車が入ってきたんです。ちょうど選挙があったようで、候補者が選挙カーに乗ってやって来た。もうなんでもありでしたね。それで後半のキックオフが遅れたような記憶があります。ホント……イエメンは大変でした。

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