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イギリスのEU離脱が実現、メディアや国民の反応は?

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1月31日、いよいよ、イギリスの欧州連合(EU)離脱が実現した。

EUからの離脱をイギリスが決めたのは、2016年6月の国民投票によるが、あれからもう3年半が経つ。その間、首相が2回代わり、イギリス議会は空回りを続けた。

小林恭子

国民投票では離脱支持派と残留支持派が拮抗し、思いがけなく僅差で離脱派が勝つと、2つの勢力の対立が亀裂となって残った。しかし、昨年12月の総選挙で、「離脱を成し遂げる!」と繰り返した与党・保守党が圧勝したことで、離脱に向かう道筋がようやく見えてきた。

イギリスのEU離脱は「ブレグジット」(Britain+Exit=Brexit)と呼ばれてきたけれども、今後、この言葉は使われなくなるかもしれない。イギリスのいないEUは普通のことになってゆくのだから。

世界の不安をよそにイギリス国民はいたって冷静

「離脱したら、いったいどうなってしまうのだろう?」。日本を含む世界中の人が、ずいぶんと心配しているようだ。「経済が打撃を受けるだろうし、雇用にも負の影響がありそうだ」、「移民嫌いの人がいっぱいになって、息苦しくなるのでは?」、そして「右傾化している」、「ポピュリズムだ」、「内向き化している」という批判も多い。離脱後の通商交渉はこれから始まるので、ビジネス関係者は不満でいっぱいに違いない。

しかし、イギリス国内は、ヘンリー王子とメーガン妃の事実上の「引退」宣言で大騒ぎしたものの、不思議と落ち着いた雰囲気に満ちている。「さあ、これから頑張るぞ」という静かな自信のような空気さえ、感じるのである。

Getty Images

その理由を見てみよう。

まず、ここにきて、国を真っ二つに割った離脱派と残留派との「対立が消えてきた」ことが主因だろう。

国民投票に向かうキャンペーンでは、当時の内閣(キャメロン政権)さえも2つに割れていた。キャメロン首相やオズボーン財務相は残留運動を率い、ゴーブ司法相や国民に人気が高く、閣議に出ていたジョンソン・ロンドン市長(現在の首相)は離脱運動を主導した。

熾烈なキャンペーンが続く中、投票日の1週間前に、残留支持だった労働党の女性議員が国粋主義的な男性に刺殺されるという事件まで起きた。

高齢者vs.若者、貧困層vs.富裕層…対立は国民の間に深い亀裂として残った

世論調査の多くが残留派、つまり現状維持派が勝つと予想しており、離脱派の勝利は青天の霹靂だった。

「なぜ?」国民は知りたがった。

投票行動を有権者の年齢、居住地、所得、教育程度で分析してみると、大まかながら「高い教育を受け、都市部に住み、所得がある程度高く、比較的若い人」が残留を選ぶ傾向にあった一方で、「高等教育を受けず、イングランド地方北部の工業地帯に住み、所得が比較的低い、やや高齢の人」が離脱を選んだことがわかってきた。

ここで、離脱対残留の対立は、「高齢者対若者」、「所得の低い人対高い人」、「教育程度の低い人対高い人」、「ロンドンがある南部と工業地帯の北部」など、社会的対立となってゆく。

国会議事堂前の残留派のデモ参加者(撮影筆者)

残留支持者は離脱支持者を自分たちより「低い」人として馬鹿にし、離脱支持者は残留支持者を「偉ぶったエリート層」、「庶民の暮らしがわからない人」として反発していく。

議事堂前の離脱派のデモ参加者(筆者撮影)

残留派は離脱派が「何も分からなくて、離脱に投票した」、だから「再度の国民投票があってしかるべきだ」と主張する。離脱派にしてみれば、「馬鹿にするな。ちゃんと分かっていて、投票したんだぞ」という怒りにつながっていく。

筆者は、視聴者参加型のテレビ番組をこの数年間、よく見てきたが、政治家やジャーナリストたちが「もう一度、国民投票を」と主張するたびに、会場内から怒りの声が上がった。

「決められない議会」に、残留派も嫌気

残留派の最たる存在が、下院議員であった。特に最大野党・労働党の下院議員である。労働党が拠点とするのが、イングランド地方北部の労働者層だ。この層の多くが離脱を支持。有権者は離脱を選択していても、「それでも、イギリスにとって残留が一番」と信じて疑わない議員が多かった。

イギリスが世界に誇るのが、議会制民主主義だが、ブレグジットに関しては、この議会が「決められない」状態となった。キャメロン首相の後を継いだ、元残留派のメイ前首相。彼女がEUと交渉し、どうやって離脱するかを決める「離脱協定案」をまとめ、議会に採決に持っていったが、これが何度も下院で否決されてしまった。

保守党の中には、強硬離脱派がいて、「その条件ではまだEUとの関係が近すぎる」といって、なかなか支持を出さない。

一方の労働党議員らは、本音部分は離脱に反対だから、メイ首相の離脱案にゴーサインをださない。そして、2015年まで保守党と連立政権を組んでいた自由民主党は、親欧州。この政党は再度の国民投票を望んでいるので、メイ案には賛同できない。

スコットランド国民党(SNP)もメイ案には反対だ。なぜかというと、スコットランド地方は国民投票で残留派が多かった。イギリスが離脱となってはスコットランド住民の意思に反することになってしまうので、反対せざるを得ない。

それぞれの政党の様々な思惑が絡み合い、議会での審議は空転に空転を重ねた。メディアで連日報道される議会の迷走ぶりに、残留派の国民でさえ、「いい加減、どっちかに決めてくれ!」と叫びたくなるほどだった。

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