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小泉大臣の育休取得は実は極めてニッポンのサラリーマン的な方法

環境大臣の小泉進次郎さんが国務大臣として初となる育休をとるということで話題になっています。世間一般としては良い選択という評価の声が大きいと感じていますし、私も良い選択だと思います。ただ、いろんなことがごちゃごちゃに議論されており、このままでは一過性のニュースとして消費されておしまいになる可能性が高いという意味で危惧もしています。

まず男性が育休をとる必要性として、産後うつがどうだとかいわれています。それも1つの論点だとは思いますが、産後うつのリスクを引き合いに出すまでもなく、出産はそもそも命がけの大イベントですから、出産後の女性の体はボロボロになっています。昔から「産後の肥立ち」とか「産後の床上げ」とかいって、産後1カ月くらいは布団を敷きっぱなしにして暮らすことが推奨されていました。産後のママが、病院から退院してすぐに家事と育児のワンオペなんて、生物的に無理なんです。必ず誰かお世話する人が必要。

そんな大変なときでも男性が仕事を休む習慣がなかった時代は、親族が住み込みでヘルプに来てくれたり、里帰り出産という形が多かったわけです。親族のヘルプが受けられず、お金でサポートを買うこともできないとしたら、直接のパートナーが仕事を休んでサポートするしかないんです。じゃないと、リアルに命に関わりますから。とにかくこの時期、母子を孤立させないのは昔からの常識です。

逆に産後うつのリスクを回避するという意味では、出産直後の夫の育休だけでは実は全然不十分なんですよね。産後うつが発症するリスクは産後数カ月、半年、1年という長期にわたって続くので。ではその間ずっと夫は育休をとるべきなのかというと、それも現実的ではないでしょう。育休はとらなくても、毎日定時に帰ることを基本にして、妻の体調が優れないときには臨機応変に会社を休めたりすることが理想です。

そしてとにかく夫婦の会話をもつこと。心理的に安心できる環境をつくることです。それができなければ、出産直後に数週間育休をとったところで、産後うつを回避する意味でも産後クライシスを回避する意味でも効果は不十分だと思います。産後2週間後に精神的に不安定になりやすいことを示す調査結果があり、それはそうだろうなと思うのですが、そこさえ乗り切ればいいという話では全然ないので。

ちなみに小泉さんが取得するのは育児休暇であって、よくニュースなんかで男性の育休取得率とかいわれる法律で定められた育児休業とは正確には違うので、そこも注意が必要です。小泉さんのような休み方は「隠れ育休」などといって、育休取得率のカウントには含まれてはいないものの、実際には10年近く前から約半数の父親がやっていることなんです。極めてニッポンのサラリーマン的な休み方なんですね。そこからさらに一歩が進まないのが社会的課題なんです。

で、あえて今回の小泉さんの選択に苦言を呈するならば、育休取るかとらないかを悩む以前に、妻が出産するってわかっているタイミングで国務大臣なんて受けなきゃいいじゃんということです。育児するなら出世するなという意味ではなくて、大臣になることなんてあとからだってできるんだから、こんなときくらい出世より家族を優先する判断ができる男性が増えないと、結局男性の仕事優先の空気は変わらないだろうということ。

もしこれからの男性のロールモデル的な役割を彼に求めるのであれば、あるいは旧態依然の空気を本当に変えるというのなら、彼が「発信」すべきなのは、ミッションインポシブルに挑むスーパーイクメン像をアピールするのではなく、「過酷な仕事と家庭の両立は正直難しい。いまは家庭を優先させてもらいます」と等身大の父親・夫像を具現することだったのではないかと私は思います。

子育ては独りで抱えるにはつらすぎる。でもみんなで力を合わせれば、あんな幸せなことはなかなかありません。今回の小泉さんの育休取得が、小泉さん自身あるいは与党のイメージアップ戦略で終わってしまわないことを願います。

※2019年9月の時点の関連記事「進次郎大臣育休取得への期待が大きすぎて見過ごされている論点」

※2020年1月30日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容の書き起こしです。

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