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電気が足りない夏と千円の米・一万円の米

電気は足りているとする人には関係ないことかもしれませんが、万全と言えるほど電力は足りていないと思われるかたや、先日、話題となったくらげの大発生など、発電能力の低下に危なっかしさを感じるかたへのエントリーです。

1.

原発の新たな事故を危惧するのであるなら、停電(総停電を防ぐため急遽実施される計画的な停電を含む)についても同じように危惧し対策を考えておくべきではないでしょうか。ここ数日、熱中症で搬送される人々の数が報道されていますが、これが現代の日本の夏の現実です。今からでも準備できることはあります。──関東圏における、昨春の長時間停電、計画停電、昨夏のきびしい節電の経験から。

・大口需要者や製造業などは既にぎりぎりまで節電をしている。その上で不慮の事故を含め、盛夏から残暑の時期の停電の可能性を甘くみないほうがよい。

・休日よりも、オフィスや工場の稼働が盛んになる平日の、特に蒸し暑い正午から夕刻にかけて電力消費が多いことに注意。夕刻が意外と多いのは、炊事による電力使用が馬鹿にならないことを表している。とかく目の敵にされがちなパチンコ店、ネオン、大型ビジョンだが、これらが電力消費の超問題児なのではない。

・昔は○○だったは通用しない。生活様式だけでなく、都市構造、平均気温などがあまりにも違いすぎる。

・冷蔵庫は三時間程度の停電なら、ドアを開けなければ保冷効果(冷凍食品含む)が維持できる。しかしこれ以上の停電では夏場は食品の劣化が気になる。

・保冷剤を多めに冷凍しておき、緊急時にそなえる。(エアコン停止による熱中症など)

・同上、常に氷をめいっぱいつくっておく。

・保冷剤は節電によりほどんど空調が効いていない街中での救いにもなる。オフィスのみならず駅構内等も熱気が充満しているので、ハンドタオルなどでくるんだ保冷剤で首筋を冷やすのが効果的。

・保冷効果がある小型の水筒を持参するのも役に立つ。自動販売機もいざというとき命綱になる。無理をせず冷えた水分を。

・熱中症ほか健康面で危険を感じたら、エアコンを使用し室温をすみやかに下げる。非常時に室温 28度目標を遵守する必要はない。企業においても同様。

・オール電化住宅では卓上用ガスコンロとボンベの用意を忘れずに。湯を沸かすほか最低限の調理ができるようにする。

・懐中電灯と乾電池の用意を忘れずに。一度でも停電があると乾電池を求める人が増え品薄になるので要注意。

・家庭でも企業でも、電池式または充電式のラジオを用意しておく。

・携帯電話の基地局が停電すれば通常の通話のみならず、110 や 119 への通報が不可能になる。停電になれば多くの固定電話も不通になる。利用できる可能性があるもの→公衆電話、アナログ電話(商用電源を使用しない電話機で利用の場合)。利用できないもの→光回線を使用した電話、ADSL回線を使用した電話、CATV回線を使用した電話、ISDN。

・企業は停電時にいかに社員や外部スタッフと連絡を取るか、取れないならどうするか方針を定めておくべき。計画停電や特定地域だけの停電でオフィスの電力が確保できていても、携帯電話の基地局が落ちていたり、プロバイダーのアクセスポイントが落ちていれば、社員や外部スタッフと連絡が取れなく可能性が高い。

・同じく家庭では、家族同士の連絡が取れなくなる可能性が高い。特に共働きの家庭では、子供と連絡が取れないことがたいへんな精神的負担であり恐怖となる。

・停電で情報処理系が止まると、会社の死を意味する場合もすくなくない。いかに臨死状態を回避するか、事前に計画を立て対処しておかなければならない。

・停電即銀行業務停止ではないが、すぐに取引できない場合や利用制限が出てくる。店舗外 ATM は休止になる可能性が高い。停電が長期化した場合は、いつまで営業が継続できるか各行から発表されていないので要注意。

・節電で空調を控えている状態では、外回りをする社員の健康管理ができないと戦力を失う。内勤の社員も苦痛であり疲労が蓄積する。外から帰社した社員がシャツを脱いでTシャツ等になることを許可するなど体を冷やす対策のほか、十分な休憩を与えるべき。

・女性に制服着用を義務づけている企業があるが、夏の制服は空調が効いた状態を想定したものである場合が多いので、実情に合わせて制服の免除も考慮すべき。これは社内における男性のスーツ、ネクタイにも言える。

・自社の社員に限らず、営業で立ち寄る他社の社員の服装にも寛容でありたい。何がなんでもスーツ着用、ポロシャツ禁止でネクタイ強要などは考え直すべき。

・停電によってカード認証、指紋認証などのセキュリティーチェックと入り口の解錠が不可能になる。集合住宅のオートロックも使用できない。

・節電や停電で空調が効かない室内では、女性の化粧崩れが激しい。頻繁に化粧直しができない環境であるなら、女性本人のみならず(女性が化粧をしていることに期待するなら)企業側も考えておかなければならないことは多い。

・喫煙室の空気清浄機や排煙装置が止まることを喫煙者は覚悟し、これらが止まったからといって路上や禁じられた場所でタバコを吸わない。

・水道水の供給にモーター(ポンプ)を使用している集合住宅やビルでは、停電に備え飲料水を確保するほか、水洗トイレに使用する水の確保も重要。家庭では水洗トイレ用に風呂の残り湯を水源にできるので、常にバスタブに水を張っておくとよい。(3階まで水道本管の水圧で、それ以上の階はブースターポンプ使用などとしている建物もあるので要注意)

・持病を抱えている者はもしもの場合に備え、計画停電が実施された場合や長時間停電になった際に、医療機関がどのように対処するか事前に確認しておくべき。

・老人は気温の変化を感じ取りにくいだけでなく、体温調節が困難になりやすいので、周囲の者がエアコンの使用を気遣わないとならない。また様々な理由で頑固になり、エアコンを使いたがらないケースが多いので要注意。

・停電により信号は止まる。警官が手信号で誘導するのは限られた交差点だけ。ドライバーは十分すぎるほどの慎重さで運転し、歩行者や自転車も同様に。それであっても事故は起こる。しかも携帯電話から 110 や 119 へ通報できない可能性も。

・停電が復帰しても製造が困難になり品薄になるものがある。昨年の関東では牛乳やヨーグルトやパンが品薄になったが、不要不急のものであっても想定される事態は頭に入れておくべき。また、不正確な情報やデマで買い占めが発生する商品もあり得る。

・夜間の停電では犯罪を危惧すべき。停電した場合は外出を控える。街灯や商店の電飾看板、窓から漏れる光もないので懐中電灯が必要。オフィスは停電していなくとも、社員が帰る町が停電しているケースもあり得る。

・エレベーターやエスカレーターの間引き運転や停止。様々な場所で空調が効いていない状態。これらで老人、障害者、持病を抱えた人のみならず、一時的に健康状態が悪くなった人が苦労する。助け合いや譲り合いの気持ちを忘れないようにしたい。卑近な例では、弱冷とはいえエアコンが動いている飲食店を長時間占拠する人たちによって、救いを求めて来店した上記のような人が入店できないこともあった。

・節電魔や怪情報に注意。昨夏の首都圏では、理由があってエアコンを使用していても室外機が動いているのを見てとやかく言う者、門灯に明かりを点けているだけで批難がましい文書をポストに入れる者、計画停電が実施された場合に特定地域だけ電力の供給が止まらないとき、その地域に電力会社の重役が住んでいるなどと憶測を流す者が現れた。理由があって必要なだけ電力を使っているのだから、おかしな人は無視すること。重役の家などを避けて停電させられるほど細かく地域わけできないことは理解しておくこと。

いまさらのもの、抜け落ちているものもありますが、ご自愛ください。
「たかが電気」ではないと感じた人は、続きをお読みください。

2.

〈1.〉に列記したように節電だけでも、確実に生活と産業にしわ寄せがあり、限界があります。
もちろん変えなければならない生活様式、社会構造、企業体質は山積みですが、昨年の夏、あれだけつらい思いを強いたのに、今年も下請け側の営業マンにスーツ上下着用・ネクタイ着用を強いて自社だけクールビズの会社がいくつもあり、この例からだけでも私はせっかちな夢を見ないことにしています。
また変えられないものもあることが理解できるはずです。

いずれにしても、電力は食卓にとっての米のようになくてはならないものです。米がなければ麦飯やパンを食べることもできますが、電力から他のエネルギーに現状で置き換えられるものはほとんどありません。

米の価格が重要な意味を持っているように、電力の価格もたいへん重要です。
電力会社が暴利をむさぼっているとする立場を取っても、現在の電力の価格は原発が稼働している状態を想定して決定されていることまで否定できません。この現行の電力料金は、米で言えば大多数の人々が一応は購入できる価格帯のものです。もちろん、もっと安いにこしたことはありませんが。
今夏の電力料金値上げに対して、多くの人々が眉をひそめただけでなく、これではやっていけないと悲鳴を上げた企業経営者が多数いることからわかるように、電力料金と生活、電力料金と生産は直結しています。

東電以外の状況においても、まず電力会社の経営努力が前提ですが、原発が止まれば燃料価格や新たな設備投資の問題もからみ、電力料金は上昇すると考えられます。
私には各発電様式ごとの電力価格への影響を正確に試算する能力がありませんが、電力購入時に発電様式を選択できるなら、原発(および原発併用)、石炭・LNGなど火力、太陽光他再生可能エネルギーの順で電気代が高くなって行きそうです。(この順序に否定的な人も、価格差が生じることは理解していただけるでしょう)

これは米で言えば、低価格なブレンド米しか購入しない層と高価なブランド米を常に購入できる層がいることと似ています。
もし高価なブランド米しか作付けされず市販されないとしたら、低価格なブレンド米を購入する層は米が買えないか、米を買うことで生活が大きく圧迫されるはずです。
米の値上がりは、米を使った製品や外食にかかるコストに反映されます。電力の場合は、製造業におけるコスト上昇に如実に反映し連鎖的に製品価格が上昇することも考えられます。しかし、多くの製造業、特に下請け業では、電力料金の値上がり分を値段に反映できない実情があります。

電力はライフラインであり、この命綱にすがる権利は平等でなくてはなりません。私は買える、他の人のことは知らない、他の人も無理してでも買え、と誰かを切り捨てたり命令できるものではありません。
この前提のもと、短期的電力供給源、中長期的電力供給源を考えるとき、どうしても価格は外せない要素と言えます。補助金を交付するにしても、原資は税金なのです。
「たかが電気」、「たかが電気の価格」ではありません。
もし電力問題の国民投票があり、価格が争点のひとつになったとき、人々がどのような発電形式(または発電形式の比率)を選択するか興味深いところだと思います。

「貧乏人は麦を食え」という言葉が思い出されます。(*注へ)
これは、かつては大麦が米より安く、米を麦に置き換えることが可能だったゆえ影響力をもって流布しました。雑穀や大麦を健康のために食べる現代では、この言葉に1950年当時のような破壊力はないでしょうけれど。


*注:「貧乏人は麦を食え」は新聞の見出しであり、池田勇人は「所得に応じて、所得の少い人は麦を多く食う、所得の多い人は米を食うというような、経済の原則に副ったほうへ持って行きたいというのが、私の念願であります」と発言している。

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