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性的搾取や強制労働を目的とする人身売買が横行する現実

この稼業だ、色々と汚いものも見てきたが…見たけりゃみてもいいよ。
普段眠ってる「正義の心」ってやつがムクムクと頭をもたげてくるぞ。
これは、ゆうきまさみ著機動警察パトレイバー17において、パレットの人身売買カタログに興味を示す遊馬に対し後藤隊長が投げかけたセリフだ。本エントリはそういう類いだ。



不正薬物とグローバル組織犯罪と闘う国連薬物犯罪事務所(UNODC)は人身売買に関する包括的な報告となる、TRAFFICKING IN PERSONSを定期的に公開している。このレポートを読めば普段触れることの少ない人類の闇の部分を覗くことができる。



上図はUNDOCに報告された人身売買犠牲者の人数推移だ。人数は年々増加しており2016年ではおよそ25,000人が報告されている。2007年比では67%の増加だ。UNDOCに人身売買を報告した国は97カ国に上り、一国あたりの平均犠牲者は年々増加を続け、2016年には254人となっている。あくまでこの数字は顕在化したものであり、実数はこの何十何百倍にも上ることは想像に難くない。



この図は2014年から2017年の10万人あたりの犠牲者数(縦軸)と受刑者数(横軸)を示したものだ。犠牲者数の増加に伴い検挙数も増加しているが、アジアやアフリカの国々では検挙数も検知数も低レベルだ。ただし、犠牲者数の報告が少ないことは必ずしもそれらの国々で人身売買が少ないことを意味しない。例えば2016年には東アジアから移動させられた人身売買犠牲者が別の地域で901名も発見されており、世界規模の犯罪組織が暗躍していることが察せられる。





人身売買の犠牲者の移動には地域的な偏りが見られる。移動先の地域別の犠牲者数を見ると、西欧/南欧及び北米での発見数が顕著に多い。地域、小地域間の移動量を可視化してみると、アジア、東欧、サハラ以南、南米などではほぼ地産地消(人間に対してこの単語を使うとは思わなかった)となっているが、西欧/南欧及び北米には周辺地域から犠牲者が流入していることがよく分かる。人身売買組織が略取した人物を国際ネットワークを通じて納品(人間に対して…以下略)していることが伺える。



容易に想像がつくように犠牲者の大多数は女性だ。多くは成人女性だが、少女の犠牲も増えている。性的搾取を目的とした人身売買においては、犠牲者の4人に3人が女性(少女含む)である。一方、強制労働に従事させられる犠牲者の半数は成人男性だ。



人身売買の犠牲者の性別と年代には地域的な偏りがある。西アフリカではほとんどの犠牲者は子供たちだ。一方、中央アジアでは成人男性、成人女性、子供が等しく報告されている。中央アジアでは成人男性のシェアが高く、中央アメリカ及びカリブでは少女の犠牲が増える。



報告された大半の犠牲者は性的搾取目的だ。多くの地域ではこの標的となるのは成人女性だが、中央アメリカとカリブでは少女の割合が多くなる。サハラ以南のアフリカでは強制労働目的の人身売買が一般的となる。中東では強制労働も人身売買の主要な形態であり、主に成人が関与している。中央アジアと南アジアでは、強制労働と性的搾取のための人身売買がほぼ同割合となっている。そして、東アジアでは性的搾取のために成人女性と少女が人身売買の犠牲となっている。



上図は最近(2016年以降)の人身売買の被害者を目的、地域ごとに可視化したものである。ピンク色の地域が性的搾取目的、オレンジ色の地域が強制労働目的が多く、茶色の地域ではそれらが拮抗している。この調査では全体的には性的搾取のための人身売買が最も一般的であるという結果となっているが、単に強制労働目的の人身売買が露見しにくいだけかも知れない。

性的搾取および強制労働以外の目的の人身売買は率としては少ないが、地域的な特色がある。たとえば強制結婚を目的とした人身売買は東南アジアで一般的だが(「ママ、私は売られた」 女性が少ない中国へ、国際人身売買の闇:朝日新聞GLOBE+参照)、中南米諸国では違法な養子縁組のための子供の人身売買が見られる。強制犯罪の人身売買は主に西欧、南欧諸国で見られるが、臓器取りのための人身売買は北アフリカ、中央及び南東ヨーロッパ、東欧で見られる。他にも様々な形態があり、物乞いやポルノ作成のための人身売買も報告されている。

武力紛争は人身売買を活性化させる可能性がある。法整備が未成熟で、犯罪抑止のリソースが不足している地域では、人身売買が活性化する。武装組織は子供を含む民間人を攫い、性的搾取、性的奴隷、強制結婚、武装戦闘、強制労働などに従事させるケースがある。いつでも真っ先に犠牲になるのは弱い者たちだ。



最後に示すのは顕在化した人身売買のうち、子供が占める割合を示したものだ。多くの子供が理不尽にも親元から引き離され、性的に陵辱され、労働を強制され、そして殺されている。

21世紀──人類はまだ人権を手にしていない。


P.S.
なお、日本における人身売買に対する取り組みも決して褒められたものではない。米国国務省が毎年発表しているTrafficking in Persons Reportにおいて、日本が「Tier1: 人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしている」に分類されたのは、ごく最近の2018年になってからであり、これはG7で最も遅い。同報告書では日本の現状について、JKによる援助交際や(米国国務省の公式文書にJKという単語が載るという事実!)、外国人研修・技能実習制度の悪用による外国人の強制労働、暴力団組織による外国人女性の性風俗産業での強制労働などのケースが取り上げられており、日本により踏み込んだ対策を求めている。政府の啓発のとおり「日本でも人身売買は身近な犯罪」なのである。

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