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本当に生活保護を受けるべきは誰か―片山さつき(参議院議員)、城 繁幸(Joe's Labo代表取締役)、赤木智弘(フリーライター):前編

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※公開日:7月17日(火)

“河本問題”に寄せられた声


片山: 近年、生活保護の急増が社会問題になっています。2008年には151万人だった受給者が2011年には210万人、総受給費も2008年の2.7兆円から、2012年度予算では3.5兆円に増えています。

そうしたなかで、タレントの河本準一さんの母親が、生活保護を長年にわたって受給していたという報道がありました。私は自民党「生活保護に関するPT」のメンバーであり、この問題を看過できないと思ったことから、厚生労働省の生活保護担当課長に調査を依頼し、その旨をブログで発表しました。そうしたところ、数百件にも及ぶすさまじい反響が来るようになったのです。

その内容の大半が、「年収ウン千万円の一人息子が親を養わないなら、誰でも生活保護がもらえることになる。おかしい」「本当に困窮していない人に生活保護を支払うのなら、税金を払いたくない」という、社会的不公平に対する抗議でした。

経済的困窮者に対して、民法877条では「親族の扶養義務」を定めています。多くのテレビ番組に河本さんの「生活の贅沢さ」を示す証拠が残っており、母親を養えないわけがない。指摘を受けて河本さんは一部を返還すると発表しましたが、やはりこうした行為は、社会常識に反するように思います。

赤木: 目下のところ、「親族の扶養義務」が論点になっていますが、私はその流れに違和感を覚えます。もしそれを定めてしまえば、親族全員が貧乏だけど一所懸命頑張って成功した人が、全員を養わなければならなくなる。一方、周囲がみな、ある程度裕福な家庭の人は、稼いだお金を自由に使えます。こちらのほうが不公平ではないでしょうか。

片山: もちろんそれも含めて、生活保護に関する矛盾は昔からいくつもあります。たとえば、在日外国人にも支払うか、否かという問題です。それでも1990年代までは全体の総額は1兆円台半ばで、矛盾を残したままでも制度が回っていくレベルでした。ところが3兆円を超える規模になると、もはや看過できなくなる。河本さんのように扶養能力が十分にある人の家族にまで支給しなければならないとなれば、もう制度自体が成り立たず、本当に困った方に届かなくなります。

城:現行の生活保護制度の問題は、大きく分けて三つだと思います。

一つ目は働くインセンティブがないため、受給する立場になった人がそのまま閉じこもって出てこないこと。二つ目は、十分に受給資格があるのに、自治体の“水際作戦”で却下されてしまう「漏給」の問題。日弁連の2006年の調査では、行政が不正に断ったと思われるケースのうち、もっとも多いのが子供の扶養義務を盾にとったものでした。なかには断られた人が餓死するケースもあります。

三つ目は年金制度との整合性の悪さ。国民年金の基礎年金が月6万5,000円程度なのに対し、生活保護が14万円程度であるのはバランスを逸している。生活保護の議論をするにあたっては、この三つをトータルで考えることが重要であり、そこをなおざりにして親族の扶養義務の強化にだけ焦点を当てるのは、家族のつながりを規定した「明治民法」の価値観に戻るような議論といわざるをえません。

片山:しかし、いまでも日本人の65人に一人が受給しています。もちろんすべてが不正受給者とはいいませんが、65人といえば、「2クラスに一人か二人」がもらっているということです。私に寄せられる意見も、初めは河本さんに批判的なものが多かったのが、身近な人の例を告発する具体的な内容が増えてきています。

今回のケースが「正当な受給」だとテレビで発言する弁護士やコメンテーターにつられて、生活保護に便乗する人が増えてしまい、「クラスに4人、5人」などということにならないために手を打つべき、というのがわれわれの主張です。

城:それは正論ですが、いま進もうとしている方向は、本当に妥当なのでしょうか。私は「ワカモノ・マニフェスト策定委員会」のメンバーとして、今回の「社会保障と税の一体改革」について、数多くの有識者にヒアリングを行なってきました。しかしその過程で、生活保護問題について「親族の扶養義務を強化すべき」という意見を述べたのは、保守からリベラルまで、一人もいなかった。

赤木: 河本さんの場合も、彼が親を養う義務を負うのでなく、芸能人としての所得からきちんと税金を払い、その税金を国が再配分するかたちで扶養するのが正しいのでは。

城:それが先進国の基本です。ビル・ゲイツ氏の父親や兄弟でさえも、もし貧乏になれば生活保護がもらえます。「ゲイツ氏が養わないのは、けしからん」という話を、アメリカ人がするわけがない。基本的に社会保障は、家族から切り離したうえで同じサービスを法的に受けられるようにするもの。その原資は、所得税における累進課税のようなかたちで、それぞれの能力に応じて負担する。運用上、いまの生活保護制度においては、親族の扶養義務は要件に入っていません。その流れを切ってまで、なぜ戦前の価値観に戻そうとするのか。

離婚や別居をしたほうが得!?


片山: しかし、育ててもらった親に対する恩を子供に求めるのは、おかしな話でしょうか。民法の扶養義務も、「直系(親子)と兄弟姉妹」と、「三親等以内のほかの親族」は分けて考えられています。みたことのない人を養えとまではいっていません。支払い義務についても、能力に応じて「月に3万円くらいなら」などと変えればいい。

もちろん、なかには「親からDV(家庭内暴力)を受けた」「私は育ててもらっていない」という人もいるでしょうが、それは「親子関係が破綻している」という扱いにすればよいでしょう。

赤木: 親からDVを受けたといっても、どうやって証明するかという問題があります。現行制度では、DVを受けた人が福祉事務所に対して事実関係を証明する必要がありますが、それはなかなか難しいことではないでしょうか。

片山: 実際にDVがあるのにそれを証明できないなら、制度自体に意味がないことになる。いまのDV制度は家のなかに入って調べることも認めているわけですからね。

また今回、河本さんに続いてタレントの梶原雄太さんも、母親が1年3カ月にわたって140万円を受給していたことがわかりました。不思議なのは、彼の母が、彼所有の高級マンションに住んでいること。しかも馳浩衆議院議員が、国会のテレビ入り質疑で追及したように、その調べでは、同じマンションに公務員の兄がいて、隣のマンションに会社員の弟がいる。本来なら同居して、兄弟が2万円ずつ出せば養えるはずで、こちらのほうが河本さんのケースよりもおかしいかもしれない。

このような事例も認めてしまっては、2012年の3.5兆円よりもさらに増える、という事態になってしまいます。

城:ただ、道義的に問題がある人たちに対し、「親族で養ってください」といったところで、この問題は解消しません。そもそも自民党は、倫理規定である民法の扶養義務を、強制力のある実際の法規にしようとしていますが、これは、どの程度の基準を考えているのでしょう。

片山:私が指摘したいのは、かつての日本にはあった「生活保護を受けるなんて、隣近所の手前恥ずかしい」「親子は本来、養うべきなのではないか」といった価値観が、徐々に失われつつあるという現実です。これまでの制度はこうしたモラルや親子の絆を信頼したうえで成り立つもので、それがなくなっているのなら、一定のルールを設ける必要がある、ということです。たとえば、「子ども手当」も世帯収入960万円以上の家には、支給しないことにしました。そういった基準を設定したほうがよいのではないでしょうか。また、扶養できない場合は、その説明責任を子供の側がきちんと果たすことにすれば、少しでも余裕のある子供は、かなりの割合で扶養を承諾すると思います。

城:そこはアナログで個別に判断するしかないでしょう。本当に不正受給する人は、最後は親子の籍を抜いてでもやりますよ。

片山: 実際、生活保護の受給率が高い大阪では、離婚率が高いというデータがあるんですね。日本全国のうち、大阪だけ男女仲が極端に悪いとは考えられない。真の理由は、離婚や別居をしたほうが、多く生活保護費をもらえるとの風潮がはびこっていて、大阪における生活保護受給率の高さと、「ニワトリと卵」の関係になっているのではないでしょうか。

つまり、いまの生活保護法のままでは、離婚や別居が助長されてしまうという弊害が出ているのです。

赤木: 具体的にはどのような事例があるのですか。

片山: ある失業した若い男性が、雇用保険の期限を過ぎても再就職できなかったため、生活保護の申請に行きました。しかし親の持ち家に同居しており、親が月10万円程度の年金をもらっていたので、「とりあえず親のお金で生計を立てながら、就職活動を続けるように」といわれ断られました。

それを知った第三者が「別居すれば、住宅扶助が出る」と教えました。その勧めに応じて親と形だけ別居した男性には、月に十数万円が支払われた。夫婦の擬似離婚も同じパターンです。生活の実態が変わっていないにもかかわらず、住居を変えただけで受給できるという、このような状態を放置してよいものでしょうか。

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