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公務員はむしろ副業に向いている? パラレルキャリアが日本を救うと言える理由 - 玉木潤一郎(経営者)

改めていうまでもないほど我が国の少子高齢化は進行している。経済面での問題は、労働力の中心となる年齢の人口である"生産年齢人口"の減少であろう。政府は次のような見通しを述べている。

生産年齢人口は1995年をピークに、総人口も2008年をピークに、それぞれ減少に転じている。
総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれている。

総務省|平成29年度版情報通信白書より

生産年齢人口が減少すればGDPにも影響し、経済の国際競争力は低下する。また福祉の面で、高齢者や弱者を支える層が薄くなっていく点も懸念されるだろう。

生産年齢人口の増加のためにまず頭に浮かぶのは、出生率の向上である。しかしここでその問題に言及することは避けたい。筆者は少子化問題の専門家ではないうえに、先進国の少子化が語られる際には経済や政策の問題だけでなく生物学上の議論など多岐に及ぶからだ。

そこでここでは日本の人口が今後も減少するという前提で、生産年齢人口を増加させる提案をしていきたい。

■パラレルキャリアの推進

パラレルキャリアは、個人が現在の仕事以外に、別の仕事や非営利活動などに並行して従事することを指す。ドラッカーが提唱したことで知られ、これからの社会における生き方の一つである。

そういう働き方ができるかどうかは個人の資質に左右されるが、パラレルキャリアの推進は企業も取り組むことができる。社員が副業に携わる際のルールを設けて、それに沿って運用していくだけだ。筆者が経営する静岡市の会社でも社員のパラレルキャリアを推進しており、ほぼ全社員が副業に取り組んでいる。

社員が別の仕事をすることで本業が疎かになるのではとの懸念もあるかもしれないが、筆者の経験した範囲ではそんなことはない。例えばオフィスワークをする者であれば、夜の時間は自由だ。従来は趣味や団らんに使っていたその時間を、別の仕事に使うことは会社にとって問題ない。酒場で飲んだくれていることが許されるなら、むしろ働いたり社会貢献したりしてもいいではないか、というのが筆者の見解である。もちろん夜は飲んだくれたいのだ、と考えるのも個人の自由である。

そして先に本稿の結論を申し上げると、パラレルキャリアは実質的な生産年齢人口の増加につながる可能性を持っている。一人が複数の仕事あるいは社会活動を持つことが可能になるからである。誤解を招かないように補足するが、これは「これからは昼も夜も、人の何倍も働け!」という概念ではない。会社の枠に囚われることなくやりたいことをやろうぜ、という自由な発想である。

■公務員に進む副業許可

そんな中、もっとも副業から遠い身分であると思われていた公務員からパラレルキャリアを進める動きが起きている。

法律では地方公務員の副業は原則禁止されているが、所属する自治体が認めれば行える。ただ、もともと副業可能な地方自治体であっても、報酬がある活動への参加を認める際の具体的な基準を示している自治体はまだ4割未満しかない。そのため副業をしたくても二の足を踏む職員が多いのが実情だ。それを見かねた総務省からは、分かりやすい許可基準を作るよう求める通知が出された。こうした副業の環境整備を促す通知が出されるのは初めてだ。

昨今の深刻な人手不足を背景に、障害者支援など様々な地域活動の担い手として公務員の活躍が期待されているのだ。実際に神戸市や福井県、長野県などが報酬を伴う地域活動への参加を促す仕組みを創設するなど、各地で副業支援の動きが出ている。

副業というと時間の自由度が高い事業主やフリーランスの方が向いていると思われがちだが、仕事時間に際限がない立場なので逆に副業に向いていない。彼らとしては少しでも多くの労力を本業に注ぎたいところだろう。その点では、むしろオンとオフがはっきり分かれている公務員や、労務環境が整備されている企業人の方が向いている。

■中央から地方への動き

人口減少による日本経済が直面する問題の一つに、首都圏への一極集中がある。そのため政府は労働力の分散にも乗り出した。

政府は2020年度に、東京圏に住みながら地方で兼業や副業をする人に交通費を支援する制度を始める。20年度予算案に計上した1000億円の地方創生推進交付金を活用し、1人当たり年間50万円を上限に3年間で最大150万円を支給する。交通費が往復で1万円を超える場合、国と地方自治体がその半分を兼業や副業先の企業に助成する。

地方で兼業、交通費支援 政府、3年で最大150万円 2020/01/10 日本経済新聞

これは一人が複数のキャリアを持とう、という施策をさらに進化させたものだ。例えば、平日は東京で仕事をする個人が週末は地方で生産活動をすることになる。

これによって現状は東京のみに集中している経済活動を、地方にも波及させることにつながる。しかもこれは単なる分散ではなく、東京での活動を維持したうえで地方の活動を増やすための動きである。

農業や町おこしイベントなど活動として地方に向いている種類のものはあるものの、ビジネスのスキームに関してはおそらく東京での経験や情報を持つビジネスマンのキャリアがものをいうだろう。その意味でも首都圏のビジネスマンが地方で副業に取り組む意義は大きい。

■働き方改革とのアライアンス

さらに、パラレルキャリアは働き方改革にも逆行しない。企業の時短勤務は個人の余剰時間を生み出すことにつながるし、育児期でフルタイムでの勤務に就きにくい女性も副業には取り組みやすい。

かつて終身雇用の時代には、個人は企業のために私生活を犠牲にしていた。クリスマスや子供の誕生日にも仕事を優先する企業戦士がもてはやされた。

しかし今後は働き方改革に従うまでもなく個人が優先されていく。パラレルキャリアは企業の枠組みに収まらない余力を持つ個人を活かすためには有効な施策である。

これまで会社に拘束されて抑えられてきた有能な個人が複数のキャリアを築くことで、実質的な生産年齢人口の増加につながるのではないだろうか。


玉木潤一郎 経営者 株式会社SweetsInvestment 代表取締役

【プロフィール】
建築、小売店、飲食業、介護施設、不動産など異業種で4社の代表取締役を兼任。
一般社団法人起業家育成協会を発足し、若手経営者を対象に事業多角化研究会を主宰する。起業から収益化までの実践と、地方の中小企業の再生・事業多角化の実践をテーマに、地方自治体や各種団体からの依頼でセミナー・コンサルティングの実績多数。

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