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焦点:傷深い「ゴーンの遺産」 日産、追加リストラでも回復懸念


白水徳彦 白木真紀

[東京 29日 ロイター] - 昨年7月に大規模なリストラ計画を発表した日産自動車<7201.T>が早くも追加策を迫られている。新たな対策では、欧米を中心に事務系社員を削減、その他の固定費カットや販売効率化なども進めて数百億円を捻出し、2022年度を目標年次とする営業利益の大幅改善を達成したい考えだ。しかし、カルロス・ゴーン前会長の拡大戦略がもたらした高コスト体質と販売力低下は深刻で、社内には「追加リストラ策でも不十分」との見方が出ている。

<強気の期待、かけ離れた現状>

同社は昨年7月、22年度までに14拠点の工場従業員計1万2500人以上を削減する計画を打ち出し、19年度から22年度までに営業利益を8700億円と期初予想の3900億円から4800億円増やす目標を掲げた。当時の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は会見で、このうち3000億円を生産・事業体制の効率化などで、1800億円を販売拡大で確保したいとの意向を示した。

しかし、現状はこうした強気の期待とはかけ離れている。昨年11月の中間決算では、19年度の営業利益予想を3900億円から1500億円に下方修正し、年間の世界販売計画も554万台から524万台と30万台引き下げた。北米、中国、欧州、日本の各市場いずれも想定を下回る見通しだ。

日産経営陣は、昨年7月に発表した「第1ラウンド」のリストラだけでは収益目標が達成できないと判断。追加策の実施を検討しているが、「第2ラウンドでもおそらく不十分だろう」と指摘する幹部もいる。

<今が「本当に正念場」>

18年11月以降、4回にわたって逮捕され、失脚したゴーン氏は昨年末、保釈中に日本を不正出国してレバノンへ逃亡。現地から日本の司法と日産の経営幹部への批判を繰り広げている。業績についても「17年に悪化し始め、18年にさらに悪化した」と指摘し、ゴーン氏は17年4月1日付で社長兼CEOの職を西川氏に譲っているため、後任の「西川氏に責任がある」とレバノンでの会見で糾弾した。

だが、西川氏を後任として任命したのはゴーン氏自身だ。一般的に自動車事業は新車の構想から販売にこぎつけるまで数年かかる。その期間を考えると、性急に販売を増やそうとしたゴーン戦略の「負の遺産」が販売力の低下という形で日産にのしかかっている、ともいえる。

ゴーン氏は新興国市場への参入と事業拡大を目標の1つとして車種を増やし、生産能力の拡大を図った。その結果、マーケティング担当などの人員とコストは膨らむ一方、車種増加で販売効率は悪化。新車投入のサイクルも遅く、顧客をつなぎとめるための販促費投入や値引き販売に拍車がかかり、さらに過剰設備も抱えるという高コスト体質が強まった。

日産関係者は、旧ゴーン体制で「後先考えずにやった暴飲暴食のツケが大きかった」と振り返り、今回が「本当に正念場だ」と語る。

日産の昨年9月末時点の自動車事業の純現金残高は1兆1400億円。だが、ある日産関係者によると、固定費の高さや販売不振などから、営業活動による新規のキャッシュはほとんど確保できておらず、「1兆円くらいのキャッシュポジションはあっという間になくなる。今のうちに手を打たなければならない」と警鐘を鳴らす。

<経営の混乱、リストラの障害に> 

昨年12月に発足した新たな経営体制下で起きた政治的混乱も、リストラ計画の進捗を遅らせる障害となった。

日産社内には仏ルノー<RENA.PA>との提携関係(アライアンス)について、自社の貢献に見合った収益配分を受けていないと批判する「反アライアンス派」が少なからず存在する。複数の関係者によると、昨年7月に打ち出したリストラ計画に対し、こうした「反アライアンス派」が反発。その抵抗によりリストラ計画は特に昨年12月からストップし、1月中旬ごろまで頓挫していた、という。

内田誠氏を社長兼CEOとする新経営トロイカ体制もスタートからつまづいた。再生計画を策定してきたナンバー3で副・最高執行責任者(COO)の関潤氏が発足1カ月足らずで電撃退社したためだ。

関氏の役割は、反アライアンス派から「情報の蚊帳の外に置かれていた」(関係者)とも言われるナンバー2のアシュワニ・グプタCOOが引き継いだ。その後、日産経営陣が主要部門から反対派の一掃を図り、現在は「計画中のリストラ策すべてが実行に移されようとしている」と関係者は話す。

<マーケティング部門に大ナタ>

追加リストラでは、北米と欧州の地域統括会社を中心に大ナタを振るい、ゴーン氏の拡大路線のもとで雇い入れたマーケティング部門の人員を含め、計4300人以上を削減し、2工場の閉鎖を検討する。当初は18年度から22年度までに10%以上を削減する計画だった不採算車種の廃止もさらに進める意向だ。

さらに、モデルごとの販売効率も高める。18年には69モデルで520万台(1モデル平均約7万5000台)を売っており、当初は22年度に73モデルまで増やす計画だったが、ロイターが閲覧した同社の資料によると、これを同年度までに62モデルに減らし、トヨタ自動車の18年実績に相当する1モデル平均約8万7000台へ引き上げ、約540万台の販売を目指している。

「当社は年間600万台を販売できると思っていた。しかし、実際の販売能力は500万台強にとどまっている」と、ある日産幹部は経営再建の険しさを嘆く。追加リストラ策を断行しても、販売力の低下にどこまで歯止めがかかるかは不透明。収益目標の達成が遠のく懸念も消えていない。

(編集:北松克朗)

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