我が国の原油輸入の中東依存度は約88%に達しています。
その内訳は、サウジアラビアが約40%、アラブ首長国連邦が約25%、カタール及びクウェートがそれぞれ約8%等となっています。
日本向けの原油の約8割はホルムズ海峡、オマーン湾を通過するといわれますが、この海域を通る日本関係船舶の数は年間約3900隻にものぼります。
海上原油交易量の約3割にあたる約1700万BPD(バレル/日)の原油がホルムズ海峡を通過すると指摘されています。
もしホルムズ海峡が通行不能になった場合、サウジアラビアを東西に横断する東西パイプラインと、アブダビのペルシャ湾側からオマーン湾側に抜けるアブダビ原油パイプラインの二本の迂回ルートがあります。
しかし、その二本のパイプラインの輸送余力は合計しても380万BPD程度といわれ、ホルムズ海峡を代替することはできません。
このため、ペルシャ湾からホルムズ海峡、オマーン湾に至る航路の安全な通行を確保することは日本の国民生活にとって死活的に重要です。
また、スエズ運河から紅海、バブ・エル・マンデブ海峡を抜け、アラビア海へ至る航路も、年間1800隻の日本関係船舶が通過する重要な航路です。
ペルシャ湾岸やバブ・エル・マンデブ海峡周辺ではタンカーをはじめとする船舶が攻撃されたり、原油生産施設が攻撃されたりという事案が起きています。
中東における緊張が高まる中で、ペルシャ湾の沿岸国はもちろんのこと、アメリカやヨーロッパ各国をはじめ、インドやオーストラリアなど中東のエネルギー資源に依存している国の多くが、この海域における航行の安全を守るための活動を行うことを表明しています。
原油の大半をこの地域に依存する日本としても、国際法及び憲法を含む我が国の国内法令等にしたがって、エネルギー供給を確保するためにできることを行う必要があります。
そこで日本政府は、こうした海域における日本関係船舶の安全確保のため、中東の緊張緩和のための外交努力をしっかりと続けていくとともに、船舶の航行安全のための措置を徹底し、さらに日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集をするために、自衛隊を活用することとしました。
具体的には、不審な船の存在や不測事態の兆候をはじめ船舶の安全な航行を阻害するような事象についての情報を集めるということです。
そうした情報は、防衛省を経由して内閣官房、国土交通省、外務省など日本政府の関係部局や関係業界でも共有され、航行の安全に役立てられます。
そのために、これまでバブ・エル・マンデブ海峡東側からアデン湾の国際推奨航路上空を中心に海賊対処行動にあたっていた固定翼哨戒機(P-3C)の任務に、新たに情報収集活動を加えるとともに、オマーン湾からアラビア海北部の公海の範囲に、護衛艦を一隻派遣します。
固定翼哨戒機の活動に、大きな変化はありません。
これまで同様に、海賊や不審船などの、船舶の航行安全に影響を及ぼしかねない事象の発見に努めます。
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- 2020年01月28日 21:35