- 2020年01月27日 17:43
教育無償化で子育て世帯の消費は増えるのか? - 久我 尚子
1/2■要旨
■目次
1――はじめに~消費増税とともに幼児教育無償化で子育て世帯の負担軽減、消費は増えたのか?
2――増税後の子育て世帯の家計消費の状況妙
~自動車関係費や外食が増えたが無償化の影響は微妙
3――幼児教育無償化で必要なくなった利用料の使途は?
~あくまでも「子どものためのもの」
4――待機児童の解消が優先
~待機児童世帯と無償化の恩恵を受ける保育所利用世帯の不公平感
5――おわりに~高等教育無償化の影響と将来への期待
1――はじめに~消費増税とともに幼児教育無償化で子育て世帯の負担軽減、消費は増えたのか?
2019年10月から、消費税率10%への引き上げによって得られる税収を財源として、幼児教育の無償化が全面的に開始された。3~5歳児の幼稚園や保育所、認定子ども園等の利用料は完全に無償化され、認可外保育施設等は月額3.7万円を上限に、0~2歳児は住民税非課税世帯を対象に月額4.2万円を上限に無償化されることとなった。未就学児のいる世帯では、これまで支払っていた利用料の負担が軽減されたわけだが、他品目の支出が増えるなど、何か消費には変化があったのだろうか。
本稿では、総務省「家計調査」等のデータを用いて、消費増税後の子育て世帯の家計消費の状況を捉え、教育無償化による影響を考察する。
2――増税後の子育て世帯の家計消費の状況~自動車関係費や外食が増えたが無償化の影響は微妙
総務省「家計調査」の公表値のうち、幼児教育無償化の恩恵を受ける世帯がより多く含まれる層として、「夫婦共働き世帯のうち核家族世帯で、未婚の子ども2人の世帯(以下、共働き子育て世帯)」の消費支出に注目する。なお、幼稚園児のいる専業主婦世帯でも幼児教育無償化の恩恵を受けるが、無償化の影響がより大きな層として共働き世帯に注目している。保育所等の利用料は、幼稚園と比べて利用時間が長いために高くなることが多い。また、認可保育所等の利用料は世帯年収に応じて決まるため、高所得の共働き世帯ほど利用料が高くなり、今回の無償化による恩恵も大きい傾向がある。
2019年10月の増税直後の共働き子育て世帯の家計収支を見ると、1年前と比べて可処分所得が増えているためか、消費支出も全体としては同程度に増えている(図表1)。
支出の内訳を見ると、「自動車関係費」が3倍近くに大幅に増えている(図表1)。「自動車関係費」の増加は主に自動車の購入によるものだが、これは幼児教育無償化の影響というよりも、消費増税に伴う税制改正の影響だろう。今回の消費税率10%への引き上げと同時に、自動車取得税が廃止され、環境性能割が導入された。自動車の燃費性能等によっては、増税後に購入する方が安価になることもあるために、自動車の購入が増えた可能性がある。加えて、伸び率が大きな要因には、2018年10月の「自動車関係費」が他の月と比べて少なかった影響もあるのだろう(2018年の平均は31,424円)。

また、「食料」や「光熱・水道代」も前年同月と比べて+5%程度増えている。「食料」については合計で内訳の4割弱を占める「外食」と「調理食品」の支出額増加による影響が大きい。「食料」全体では前年同月より+約5千円増えているが、「外食」は18,653円から20,039円へと+1,386円(実質+4.4%)、「調理食品」は10,616円から12,221円へと+1,605円(実質+13.5%)増えている。 これは、可処分所得の増加や保育所等の利用料負担が軽減された影響もあるのだろうが、そもそも近年、共働き子育て世帯では家事の時短化需要の高まりを背景に、「外食」や「調理食品」の支出額が増加傾向にある流れとも言える(図表2)。

一方、幼児教育無償化の影響を受ける「教育」をはじめ「住居」や「被覆及び履物」、「家具・家事用品」、「その他の消費支出」は1~2割減少している。
これらについては、増税直後であり、駆け込み消費による反動減の影響があるため、今後の状況もあわせて丁寧に捉えていく必要がある1。しかし、今後とも、「食料」などの生活必需性の高い品目を除けば、教育無償化が他の消費を誘発するような状況にはなりにくいだろう。それは、教育無償化で浮いた費用は、あくまで「子どものためのもの」にとどまり、子ども以外のものには波及しにくいと考えるためだ。 1 認可保育所等以外の利用料は即、軽減されるのではなく、申請の後、自治体から振り込まれるため、恩恵を受ける時期がずれる。



