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人気爆発レモンサワー コカvsサントリーの新ガチンコ対決も

生産が追い付かず一時販売を休止しているコカ・コーラの「檸檬堂」

計画の5倍近く売れているサントリー「こだわり酒場のレモンサワー」

神田秀樹・サントリースピリッツ社長(左)、鳥井信宏・サントリーホールディングス副社長(中央)

レモンサワー人気は酒税改正でさらに「追い風」

 缶チューハイ市場で不動の人気を誇るレモンサワー。コカ・コーラグループが初めて手掛けたアルコール飲料の「檸檬堂」も売れすぎて一時出荷を休止すると発表したばかり。そんなコカ・コーラの進撃に待ったをかけようとガチンコ対決を挑んでいるのがサントリーだ。経済ジャーナリストの河野圭祐氏が、ますます過熱するレモンサワー商戦をレポートする。

【写真】サントリーの売れ筋レモンサワー

 * * *

 コカ・コーラとサントリーといえば飲料業界の首位と2位の好敵手。サントリーホールディングス副社長の鳥井信宏氏はかつて、飲料事業を担うサントリー食品インターナショナル社長を務めていた頃、こう語っていたことがある。

「国内マーケットで国内メーカーがトップになっていないのは、食に関わるジャンルでは外食と飲料だけ。つまり、マクドナルドさんとコカ・コーラさんですが、母国市場の日本ですから、ウチも何とかトップになりたいですよね」

 最大のライバルであるそのコカ・コーラが、局地戦ながら異種格闘に挑んできた。一昨年5月から九州エリア限定でテスト販売を行い、昨年10月末から、満を持して全国発売したレモンサワーの「檸檬堂」がそれで、コカ・コーラvsサントリーのライバル対決が、アルコール分野にまで飛び火した形だ。

 もちろん、缶チューハイなどのRTD(レディ・トゥ・ドリンク)分野全体ではキリンビールとサントリースピリッツが2強で、それぞれ「氷結」や「?196℃」といった看板ブランドが圧倒的な販売ボリュームを稼いでいる。それ以外のハイボール缶も含めて、縮小が止まらないビール市場と反比例するように伸びているのがRTDだが、中でも目を見張る勢いなのがレモンサワーだ。

 年頭の事業方針説明会の際、サントリースピリッツの神田秀樹社長は、「従来のRTD市場と一緒にせず、レモンサワーという1つの市場として捉えている」と語っていた。それだけ、まだまだ伸びしろがあるという手応えを感じているのだろう。

 実際、同社はまず、2018年2月に「こだわり酒場のレモンサワーの素」という濃縮タイプの瓶商品を売り出し、想定以上にヒットした。これを受けて昨年は、3月5日から缶商品で「こだわり酒場のレモンサワー」(アルコール度数は7%)も投入したところ、これがまたウケて、何度も販売数量の上方修正をしている。

 昨年、レモンサワー市場全体は2523万ケース(1ケースは6リットル換算)で前年比117%と大きく伸びたが、サントリーの「こだわり酒場のレモンサワー」は当初計画の、実に4.7倍の978万ケースを売った。

 サントリースピリッツの調べによると、自社のRTD商品の初年度出荷数量を、「こだわり酒場のレモンサワー」同様、販売開始から10か月の数字で比較すると、「?196℃ストロングゼロ ダブルレモン」(アルコール度数は9%)が835万ケースだったというから、「こだわり酒場のレモンサワー」はそれを上回る快速ペースということになる。

 勢いづいたサントリースピリッツでは、来たる3月17日、「こだわり酒場のレモンサワー」<キリッと男前>という、アルコール度数9%の商品を追加発売する。レモンサワーで9%といえば、俳優の阿部寛を起用したテレビCMが印象的な、コカ・コーラの「檸檬堂」シリーズの「鬼レモン」が思い浮かぶ。

 最近は「気軽に量も飲める缶チューハイなどで度数9%というのは、危険ドラッグではないか」といった指摘も出ているが、その賛否はともかく、「安価で早く酔える」という点がウケて、高アルコール商品は総じて好調だ。

「檸檬堂」のラインナップは当初の「定番レモン」(アルコール度数5%)、「塩レモン」(同7%)、「はちみつレモン」(同3%)と前述の「鬼レモン」(同9%)の計4種だが、この品揃えの多さによって、お酒が苦手な人から濃厚にガッツリ飲みたい人まで幅広い層に訴求でき、「檸檬堂」という日本的な和テイストの響きや缶デザインも消費者の支持を集めた。

 昨年11月、発売からまだ1か月にも満たない時点で、地方の、あるコカ・コーラボトラーの幹部は、「週間の集計で、缶チューハイの銘柄別販売でいきなり『檸檬堂』がトップに立った」と自信を示していたが、その後、口コミやSNS、テレビCM効果などで急速に認知度も上がっていったわけだ。

 最近、想定以上に売れていることから生産が追いつかず、「檸檬堂」の販売を一時的に休止するという発表があって話題になったが、この手の休止は、「あらかじめ生産ロットを絞り、売れ過ぎて一旦休止にすることで、さらなる広告宣伝効果を狙う、品薄商法だ」といった指摘もよく聞く。

 休止の一報後、筆者の自宅周辺のコンビニやスーパーを覗いてみたところ、大手スーパーと大手コンビニは確かに「檸檬堂」の棚は空っぽだったが、中堅スーパーでは4種とも棚に並んでいた。また、来店した子供連れの主婦が「ここはまだあるじゃない」と言って何本も買い物カゴに入れていたところを見ると、販売休止の宣伝効果はやはり大きかったようだ。

 では、消費者の味の評価はどうか。「檸檬堂」の商品は、他社のRTDやレモンサワー商品に比べて、スーパーで見比べると30円程度高い価格設定だが、シニア世代の主婦Aさんはこう語る。

「『檸檬堂』は確かに美味しい。缶チューハイにありがちな、安っぽい変なアルコール臭のする味もなく、焼酎の味わいもしっかりある感じ。炭酸も、辛くて強いものが多いけど、これはお酒の邪魔をしていない。コカ・コーラは炭酸技術に長けているでしょうから、お酒と炭酸のマッチングも上手く引き出している感じね」

 販売再開後、「檸檬堂」はさらに売り上げを伸ばしそうだが、一方で「こだわり酒場のレモンサワー」も負けてはいない。前述した高アル商品の追加もあり、今年のレモンサワーの販売計画は前年比146%の1430万ケースと、ほかのRTD商品と比較しても群を抜く高い伸びを見込む。

 これは、昨年の販売実績で4283万ケースだった「?196℃」は別格としても、1852万ケースのハイボール缶にも一気に近づく数字で、拡大中のレモンサワー人気を裏付ける。

 今年は10月に酒税改正を控え、第3のビールは増税されて10円程度、価格がアップする。一方、缶チューハイなどのRTD商品は、酒税改正のゴールとなる2026年までは酒税がずっと据え置きで、第3のビール愛飲者からの流入が見込まれている。

 さらに、東京オリンピック・パラリンピック終了後、仮に巷間言われるような景気悪化が顕在化してきた場合、当然、消費者の財布の紐は固くなる。つまり、RTD商品全般にわたってますます追い風となりそうで、その中で甘過ぎないことから食中酒に合うレモンサワーは、とりわけ有望だ。

 こうした状況下、異業種から黒船襲来のごとく登場したコカ・コーラの「檸檬堂」が、販売数字上も通年でフル寄与する今年、どこまで拡大するか。あるいは迎撃するサントリーがコカ・コーラの進撃にストップをかけるのか──。飲料からお酒に舞台を移しての両雄のガチンコ勝負、果たして消費者はどちらに軍配を上げるだろうか。

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