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【読書感想】プロレスラーは観客に何を見せているのか

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プロレスラーは観客に何を見せているのか

  • 作者:TAJIRI
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 単行本

Kindle版もあります。

プロレスラーは観客に何を見せているのか

  • 作者:TAJIRI
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2020/01/14
  • メディア: Kindle版

内容紹介

《技は選手の自己紹介のためのツールに過ぎない》

《人気が出るキャラクターには共通する要素がある》

世界最高峰のリングWWEからインディー団体まで、日米マット界の「光」と「陰」を知る著者がはじめて明かす熱狂を生み出す「サイコロジー」のすべて。

自身の圧倒的な経験値をもとに綴る、目からウロコのプロレス論!

 僕はプロレスラーという存在に子どもの頃から憧れているのです。自分には絶対にできないことをやっている人たちだ、とも思っているんですよ。

 この本、日本の小さな独立系団体から、アメリカの世界最大のプロレス団体WWEまで、さまざまな場所で「プロレスラー」として自ら試合を見せるのと同時に、試合をプロデュースする側としても活動してきたTAJIRIさんによる「観客をひきつけるためのプロレス論」なのです。

「プロレスとはキャラクター産業である」

 これは、僕がかつて五年間所属した世界一のプロレス団体WWEのボスであるビンス・マクマホンの口癖である。

 彼がWWEを世界一のプロレス組織にまで押し上げることができた理由の一つはこの言葉にある。そしてまた、プロレスについての真理が込められている言葉でもあると僕は思うのだ。

 当時の僕はことあるごとに、この言葉をビンスから聞かされていた。だが現在になって振り返ると、そのころの僕はまだ、その意味がわかったような、わからないような、そんな状態だったように思う。

 この言葉の意味が徐々にだが本格的に理解できてきたのは、WWEを辞め、日本へ帰ってきて、ハッスルやSMASHといった団体のプロデュースを僕自身が手掛けるようになってからである。

 そして、いまではこの言葉は、僕の中では最重要のプロレス理論にまで昇華されているだが、その理由や、そう考えるに至った経緯についてはこれから本書の中で詳述していく。

 そもそも、プロレスとはスポーツではないし格闘技でもない。どちらかというと映画やマンガのような「表現の世界」ではないかと僕は考えている。

 TAJIRIさんは、「プロレスはキャラクター産業」であり、「技は選手の自己紹介のためのツールに過ぎない」とも述べています。こういう、プロレスファンが読むと「えっ?」と思うような言葉の使い方なども、TAJIRIさんのプロデュース能力を反映しているのです。

 個人的には、WWEの「脚本家が書いたストーリーに合わせた展開」や『ハッスル』での芸能人の参入などは、「そんな茶番がみたいわけじゃないよ……」と思うのですが、僕が大好きだった昭和プロレスの「タイガーマスクの宿敵・ブラックタイガー」とか、長州力の「俺は藤波の咬ませ犬じゃねえ!」なんていうのも、「ストーリー」ではあったのです。 

 アントニオ猪木の「プロレスは最強の格闘技」というのも、ファンをその気にさせる物語だったんですよね。

 WWEやハッスルのように「勧善懲悪などのエンターテインメントを突き詰めたストーリー」であるか、「ガチの勝負であるように見せる、あるいは、人間同士の因縁や怨念を伝えるストーリー」であるかの違いはあるけれど。

 そして、TAJIRIさんは、「プロレスラーが強かったり、すごい技を使ったりするのは『前提条件」であり、それだけで客を呼び、大金を稼げるわけではない」とも仰っています。

 WWEは、抗争の「わかりやすさ」や「面白さ」という、試合をつなぐストーリーの部分が目立ちやすいのですが、TAJIRIさんは、WWEに所属していたときのことを振り返っています。

 全員ミーティングで、毎回ビンス(・マクマホン)が最後に決まって話していたのは「表情でプロレスをしろ!ということだった。両手で四角いフレームを作り、それを顔の前で交互に動かし、

「マネー・イズ・ヒア!」

「プロレスというビジネスでは、マネーは『ここ(顔の表情)』によって生み出されるんだ!」というのがビンスの最重要なプロレス哲学の一つだった。同時期にWWEに在籍していたレスラーに再会すると、いまでもビンスのその仕草を真似しては笑い合ってしまう。

 ある時期、ビンスが「プロレスの理想的な試合の流れ」について力説したことがあった。

「まずはベビーフェイスがカッコ良いところを見せる。それをヒールが悪い手段でストップし、攻めまくって観客をイライラさせる。観客のイライラが最高潮に達したらベビーフェイスが反撃する──。こういう典型的な勧善懲悪の試合展開がエンタメを見にくる観客にはいちばんわかりやすくてウケるのだ! それを意識して、試合に臨め!」

 ボスの言うことは絶対。なので、レスラー全員がビンスに言われたとおりの流れで試合を進めてしまい、ショー全体が似たような試合ばかりになる事態となった。

 ちなみに、この後、ビンス・マクマホンの方針に異議を唱えるレスラー(エディ・ゲレロさん)が現れるのですが、そのときのビンスとのやりとりも、お互いにプロだなあ、アメリカらしいなあ、と思うものでした。

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