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【106カ月目の双葉町はいま】避難指示解除のち聖火リレー。福島県の実行委がルート追加を了承。「偽りの復興PRだ」。届かぬ双葉町民の怒り

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福島県の浜通りで唯一、聖火リレーのルートに含まれていなかった双葉町について、福島県の「東京2020オリンピック聖火リレーふくしま実行委員会」は23日午前の第8回会合で知事提案を了承。県は大会組織委員会に文書でルートへの追加を依頼した。避難指示が3月4日に部分解除されるのを受けた措置で、2月中旬にも正式決定される見通し。だが、双葉町民や町出身者からは「偽りの復興PRだ」、「聖火が走ったところで何も変わらない」など否定的な声があがっている。福島県知事の言う「影」の部分がますます覆い隠されていくとの懸念があるからだ。


【双葉駅周辺を走り復興PR】

午前10時に始まった実行委は非公開で行われた。冒頭、内堀知事は「今年は震災からちょうど10年目を迎える節目の年。これまでに頂いた御支援に対する感謝の想いと福島県の復興の現状や地域の魅力を様々な場面で積極的に発信していく事が重要」と挨拶。取材陣は冒頭撮影のみで退出を命じられた。委員会は30分ほどで終了。県職員によると、双葉町を追加する事に対する反対意見は無かったという。正式決定されれば、福島県内59市町村のうち26の市町村で聖火リレーが行われる事になる。

閉会後、囲み取材に応じた内堀知事は、「双葉町の一部地域の避難指示解除が決定された事を受け、『津波被災地および原発事故による避難地域』など本県の通過対象市町村の考え方をふまえ、聖火リレーの初日である3月26日のルートに双葉町を追加する事について提案をし、御了承をいただきました」と述べた。福島県オリンピック・パラリンピック推進室の担当者によると、本日中に大会組織委員会に文書で追加を依頼。「2月中旬にも回答をいただけるのではないか」という。具体的なルートはこれから決まるが、内堀知事は「双葉駅周辺でのリレーを検討している」と語った。

実行委での了承を受け、双葉町教委の担当者は「3月14日にJR常磐線が全線開通する際には、町としても記念式典などを計画している。そういう意味でも駅周辺が最適なのではないか」と語った。

「どんどん町民が帰れるような状態にしていくという事を考えた場合、聖火リレーには、ここまで双葉町は復興したんだという事をお知らせする意味合いがあります。また、駅周辺を走る事で、壊れたままの家屋や家屋解体後のさら地がありますから、その中で一生懸命に頑張っているという『影』の部分も伝えられるとは思います。一つ一つ、復興に向けて進めているという事です」。

避難指示の部分解除が、まるで聖火リレーに合わせるように「3月4日」に決まった事については「聖火リレーと全く無関係とは言い切れないし、連動していると思われても仕方ないです。ですが、聖火リレーありきで避難指示解除を進めて来たわけではありません」と否定した。この点については、福島県オリンピック・パラリンピック推進室の担当者も否定している。






(上)「東京2020オリンピック聖火リレーふくしま実行委員会」の冒頭、挨拶する内堀雅雄知事=福島県庁(中)JR福島駅には、聖火リレーをPRする大きな垂れ幕が掲げられている(下)昨年12月に東京国際フォーラムで行われた「ふくしま大交流フェスタ」では、実際のトーチを手に記念撮影するブースも設けられた

【「原発事故の幕引き図っている」】

当の双葉町民はどのように見ているのか。

「聖火リレーを走らせるために今年3月4日に町の一部で避難指示解除をして、偽りの復興PRや原発事故の幕引きを図っているとしか思えません。聖火リレーという行為があまりにも懐疑的として捉えられ、国そのものが世界中から信用、信頼を失う、その時だけのパフォーマンスになるのではないかと危惧しています」

そう憤るのは、原発PR看板撤去に最後まで反対し続けた大沼勇治さん(43)=茨城県古河市に避難中=。 双葉北小学校6年生の時に「原子力 明るい未来の エネルギー」という標語を考案。国道6号線から見える場所にアーチとして長らく掲げられていたが2015年12月、撤去された。

「私も避難指示解除を境に自主避難者となる」と語る大沼さんは、「〝復興〟とはまるで〝ファンタジーの世界〟ですよ」と表現した。五輪を軸にした〝復興〟と現実とがあまりにもかい離しているからだ。

「町民無き町に双葉駅が立派にリニューアルされ、常磐線の全線開通も近いです。一時立入りするたびに町の東側、沿岸部で中間貯蔵施設の関連施設が次々に出来ていくのを目にします。原発事故前、箱物の維持管理費に散々苦しみ、浪江町と合併までしようとした様子を見てきました。それなのに、人無き町に再び、ハコものへ多額の国税が投入されていく光景に目を疑います」

「聖火リレーが走ったからといって、双葉町の人たちが心から復興するとは思えません。一時帰宅の際に枝道を入ると、未だに原発事故からそのまま時だけが経過した道も多いのです。放射線量はかなり下がったとその部分だけ切り抜けば、〝復興〟しているイメージを植え付ける事は出来るでしょう。しかし、周辺から残留放射能が完全に消えたとは思えません。見た目やイメージ、形だけの〝復興〟は出来ても、9年間にわたって双葉で過ごすはずの人生や未来を滅茶苦茶にされ、『心の復興』は永遠に厳しいと思っています。汚染水は増え続け、燃料デブリさえ取り出せない状況の中、オリンピックのためだけに、復興をPRするべきではありません。まだ、復興していないんです。まだまだ時間がかかる。だけど頑張ってます。それで良いんだと思います」

「ふるさとは放射性廃棄物のゴミ置き場となってしまいました。原発事故前、私が住んでいた頃の町の象徴とも言える原発PR看板は、国道6号線から見えない場所へ塩漬けにされたままです。先人が原発を信じ、原発と共に歩んだ時代や過去は町にとって不要だと言われているようです。看板撤去の他にも、ご先祖様の眠るお墓の後ろにフレコンバックが積まれる粗末な光景は耐えられません」と語気を強める大沼さんは、こう疑問を投げかけている。

「これが復興と言えるのでしょうか?」






(上)双葉町沿岸部では、大津波が襲いかかった場所にフレコンバッグが積まれている=2019年6月4日撮影(中)撤去された原発PR看板は、今も屋外で塩漬けとなったまま=2019年9月6日撮影(下)双葉町民が眠る墓地の敷地内にもフレコンバックが積み上げられている=2019年4月13日撮影(3枚とも大沼さん提供)

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