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「30代前半でも早期退職を求められる」壮絶な日本企業の現場で起きていること HRテックで人事評価がシビアになされるようになった結果…… - 山本 一郎

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 先日、大手総合商社の使えない中高年が、2,000万円という高い年収を貰いながら窓際族をやっている、通称『Windows 2000』なる新たな窓際族がいる、と話題になっていました。

 といっても、記事の初出は2013年の週刊ポストさんの記事だったんですが、いまだにTwitterではこれをもじった記事がなお垂れ流されているのが現状です。

OLが嫌う新窓際族 「ウィンドウズ2000」型上司とは|NEWSポストセブン

https://www.news-postseven.com/archives/20130404_180098.html

社内でヒマして年収2000万。商社のエリート窓際族「ウィンドウズ2000」の光と闇を教えよう|就活サイト【ONE CAREER】

https://www.onecareer.jp/articles/1418

©︎iStock.com

ウィンドウズ2000はとっくに終わった話

 で、昨今の海上自衛隊の中東派遣など中東情勢が厄介になっていたので、先日現地に急派されることになった商社マンの皆さんの壮行会に顔を出してきたのですが、口を揃えて「50代で働かずに2,000万なんてとっくに終わった話で、何かあれば最前列に押し出される予備役みたいなものですから」と力なく笑っていました。

 どうも、ネットでの話は面白いことが事実より優先されることもあって、現実には語学ができる駐在経験のある人は、健康ならバリバリ働いているし、社内でも取引先でもお声がかかる。また、経営再建を進めていた別の総合商社では、先にリストラに応じた人は退職金に加えて月額何十万円かの追加のお金をもらって独立したり、ベンチャー企業の顧問をやっていたりするそうです。

 いわゆる「使える中高年」は履歴書を書いてハローワークに行かずとも引く手あまたの状態である一方、同じ高給取りでも潰しの効かない外資系コンサル上がりの人たちが40代、50代で会社に見切られて行き場を失いどうしようもなくなっている姿をよく見ます。まあ、一度生活レベルを上げてしまうとなかなか下げられないこともあって、みんな大変そうにしているのよね。

 で、私もご契約を頂戴して月イチぐらいの訪問でお付き合いしている商社や輸出系の製造業では、将来の遊休戦力になりそうな働き手は、たとえ人手不足で30代前半でも、かなり選別して本社に残さないような人事をしているというので戦慄します。

「HRテック」による容赦ない見極め

 特に、最近は会社の人事機能に人工知能(AI)を組み合わせた「HR(ヒューマンリソース)テック」が興隆してきました。いままでは、事業部長や人事部が一人ひとり社員の経歴や実績、配属要望、家庭環境などを見て「彼はこの部門に何年になるからそろそろ異動」とか「結婚して子どもができマイホームを買ったそうだから、きっと会社を辞めないので地方転勤」などとやりくりをしていました。企業の統治はグループ会社を擁して大きくなるほど人事のルールは硬直化するのが常で、「何年の年次の人は課長やらマネージャーやらに就く」といった不文律がスパゲッティのようになって、最近は転職市場も充実して透明化されてきたので、人の出入りは増えながらも組織を人事が作るという仕組みは当たり前にやってきました。

 ところが、一部の大手企業のHRテックはかなり容赦がなく、その人の経歴や実績などから割り出した「この人は、概ね何歳までにこの会社に利益貢献してくれそうか」という推測を元に組織人事の概略を決める形になっています。例えば、過去の職歴から海外赴任・駐在などで現場を回すことで利益を上げられる人材は概ね41歳から44歳までが利益のピークで、そういう人が日本に帰ってきて利益を出せるポジションに就いても海外経験が多すぎてむしろマイナスになるので、また海外事業を補助できる人事タイミングが来るまでコストセンターで良い部門に部下をつけず置いておくと会社にとって最大利益になる、とか提案してきます。

離職リスクのアップダウンも弾き出す

 あるいは、結婚や子ども、介護など家族に関するデータもあります。会社に対する離職リスクは「これから会社に貢献してくれると見られる経歴の人が、より高い収入を目指して転職してしまう」ことが最大だとして、未婚者が残業を減らすと離職リスクが上がり、既婚者が子どもを産んだり車を買い替えたりすると離職リスクが下がります。離職リスクが高いけど会社にいて欲しい人には花形部門を任せ、妻帯者で月の小遣い2万円クラブに入っているおっさんは人気のない発展途上国の現地子会社の社長にして汗をかかせる、という具合です。

 結婚して子どもができると、勤め人の人生は一変します。過去40万人の人事データからどれだけの社員がマイホームや車を買うのか、マイホーム離れ、車離れと言いつつも子どもの教育や親の介護が人生の重荷になるほど、大手企業勤務の看板で金融機関からカネが借りられるありがたさから「フラット35(長期固定金利住宅ローン)を活用する人は、50代まで自発的な離職リスクがほぼゼロ」という冷徹な結論を人工知能は弾き出すことになります。

 ほかにも、行動遺伝学の見地からの性格が技能獲得や稼げる能力の拡大にどれだけ影響し、離職するのかしないのかは、もはやHRテックの定番とも言える基礎的な人事情報になってしまっています。その人がこの会社にいて稼ぐであろう金額と会社がその人に支払う賃金はどう設定すれば一番パフォーマンスが出るのかという問題は、明らかに企業側に情報が集まり、そこで働く人たちは一方的にスコアリングされ、まるでテトリスでもやるかのように「その時点での最適解」が示されているのが通常です。

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