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この議論に未来はあるか?

第201回通常国会が開会した。衆議院における各党の代表質問が一巡し、野党は、IR疑惑、桜を見る会をメインテーマに安倍政権を攻めることを公言している。立憲民主党の枝野党首の代表質問のかなりの部分が「桜を見る会」で占められていた。しかし、本当のメインテーマはそこではない。年輪のように積み重なって日本の未来を決めていく、国家予算に関する吟味だ。

公表されている令和2年度一般会計の歳出総額は昨年を超える102兆円。その35%(35兆8608億円)を社会保障費が占める。そして、昨年度予算からの伸び率は5.1%。その他の費目が横ばいや微増微減であるのに比べて突出しており、予算総額が3.1%増えた主因となっている。

また、国債費は22%(23兆3515億円)。前年に比べて0.7%減少しているが、これは日銀の金利抑圧政策によって、利率が抑圧され続けていることによるもので、償還費は国債発行額の増加によって増えている。

社会保障費と国債費は、合わせて57%(59兆1636億円)。予算の6割近くがこの2つの固定経費で占められてしまっている。

この国家予算の状況は、人口構造の裏表。日本社会の硬直化はどんどん進行している。動脈硬化が進んだ高齢者のように、やがては大きなクライシスが訪れるであろう。

これに対して今回の代表質問で枝野氏は「大きな政府」を提唱した。おそらく、立憲民主党に代わって旧来からの左翼・リベラル層の期待を集めつつあるれいわ新撰組やMMTを意識しての発言だろう。また、国民民主党の玉木氏は、子ども国債を財源とした各種政策を提案した。これも基本的には同じ類。

しかし、令和2年度予算案は102兆円規模である上に、その内31.7%(32.6兆円)が国債に依存したもの。既に十分に無理をした「大きな政府」だ。これ以上無分別な「大きな政府」化や、名前はともかくとして巨額の出費を伴う政策の財源を臆面もなく「国債」で賄うなどすれば、国債の買い手が実質日銀しかいなくなっている今、通貨への信頼はダダ下がり、結局普通の国民の資産は価値を無くしていくだけだろう。(ちなみに共産党は消費税は5%に下げろ、社会保障は充実させろ、年金のマクロ経済スライドは止めろと格好のつけ放題だったが、本気でそれで財政に対する信頼や年金制度が維持できると思っているのだろうか?かなり驚いた)

一方で、このような無理をもう20年近く続けているのに経済成長率は少しも改善していない。日本の経済の低迷は他に原因があるからだ。その原因は少子化やそれに伴う人口減少だけではない。戦後75年が経過し、社会の隅々にまで蔓延した既得権益優先のシステムや、他人や成功者を貶めることにばかり熱心な精神構造が蔓延していること、そしてその裏返しともいえるアニマルスピリットの減少も大きく寄与しているのだろう。

また、怖くて自民党も立憲民主党も国民民主党も触れられないが、日本のみ労働生産性が伸びず、非正規がこれだけ増えているのも、硬直した雇用システムが変化の激しい時代にそぐわなくなっているからであることは明らか。この問題は連合をバックにした旧民主党勢には絶対に触れられない問題であるし、選挙を意識する政権与党にも手をつける様子はない。唯一、特定の利益団体を持たない維新の馬場氏のみがそこに言及されていたことは勇気ある指摘と言えよう。

野党が本気で政権交代を目指すのであれば、桜やカジノと同程度以上に、こういった本質的議論に取り組むべきだろう。同時に、安倍首相も自画自賛のような施政方針演説をぶつばかりではなく、厳しい現状を率直に認め、なおかつそれに打ち勝つ骨太のビジョンを示すべきであった。日本に残された時間はそう長いとは思えない。

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