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台湾総統選、蔡英文が圧勝 中国共産党「嫌われる理由」 - 「週刊文春」編集部

 実績の乏しい現職と地味な野党候補の対決で低調も予想された1月11日の台湾総統選で、民進党の蔡英文総統(63)が史上最多得票で再選を果たした。

「台日の絆を深めていきたい」とツイート ©共同通信社

 一時は支持率が2割台にまで落ち込んでいた蔡政権を蘇らせたのは、紛れもなく中国だ。蔡氏の勝利宣言を見届けた台湾人記者は「主演女優賞が蔡氏なら、助演男優賞は間違いなく習近平氏だな」とつぶやいた。

 勝因は2つある。1つは、19年1月に習氏が行った台湾政策の演説だ。「一国二制度は国家統一を実現する最良の方法」。中台が一国であることを認めれば台湾の社会制度を保障するという習氏の誘いを、蔡氏は「絶対に受け入れられない」と断固拒否。これで支持率が急回復した。

 もう1つは、香港だ。逃亡犯条例をきっかけにデモに立ち上がった香港の若者たちの声は、台湾市民に対中関係を再考させるに十分過ぎた。「今日の香港は、明日の台湾」。蔡氏の訴えは、効果絶大だった。

 台湾演説も逃亡犯条例も反発が予想された内容であり、喫緊の課題でもなかった。それでも押し切ろうとしたのは、ひとえに一党独裁で民意を読もうともしない共産党政権のおごりだ。結果としてオウンゴールに近い形で蔡氏を勝たせてしまった習氏にすれば、求心力に影響が出かねない事態だ。選挙中は沈黙を決め込んでいた中国だが、その後猛烈な「口撃」に転じた。

「金をばらまき票を買った」中国の言いたい放題

 国営新華社通信は選挙翌日の12日、論評記事を配信。「蔡英文の政策はめちゃくちゃ、民主を悪化させ不満が絶えない」とこき下ろし、選挙戦では蔡陣営が(1)金をばらまき票を買った(2)サイバー部隊を使い相手候補を誹謗中傷した(3)大陸への敵意をあおり民衆を脅した、など言いたい放題。「台湾独立は歴史の逆行であり、一時のまぐれで愚行を重ねても幻滅に終わる」と逆に脅した。

 蔡氏の再選に「祝意を表する」(茂木敏充外相)などと談話を出した日本、米国、英国にも中国外務省がかみつき、各国に抗議し、「独立勢力に誤ったシグナルを送るな」とコメントした。

 今後、中国は蔡政権への圧力を高めることが予想されるが、国内では「武力統一」の議論さえ飛び交っている。共産党系機関紙・環球時報の胡錫進編集長は12日、自身のSNSで「武力統一は容易ではないが、切れないカードではない」と踏み込んだ。

 だが、どれだけ吠えても劣勢は隠しようもない。米国との貿易摩擦は長期化し、香港デモも収束が見えない。加えて「中国ノー」の台湾民意が示された。

 22年党大会で3選を目指す習氏にとって、戦略の立て直しは必至だ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年1月23日号)

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