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児童ポルノ画像の掲載とリンクを「同視」してはならない理由

 また最高裁が問題のある判決を出してしまったようだ。メディアにもほとんど見過ごされていたようだが、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は9日、児童ポルノを見ることができるサイトのアドレスを紹介する行為が児童買春・ポルノ禁止法違反にあたるとして、被告の上告を棄却した。これにより被告を懲役8月、執行猶予3年、罰金30万円とした大阪地裁の判決が確定するばかりか、判例として今後の司法の判断にも大きく影響することになる。

 児童買春・児童ポルノ禁止法はその7条の4で「児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。 」と定めている。つまり、児童ポルノを不特定多数の人に向けて公然と陳列する行為は禁止されていることはまちがいない。

 しかし、今回被告が行った行為は、それを公然と陳列しているサイトのアドレスを掲載したということであり、児童ポルノ画像をウエッブ上に陳列したのは被告本人ではない。にもかかわらず、今回この被告は幇助ではなく、正犯として有罪となっているのだ。これは違法サイトにリンクを貼る行為を、違法行為の共同正犯と見なしていることになる。

 確かに児童ポルノ禁止法の場合は、「不特定多数」「公然と陳列」などの条件が設けられているため、この判断が直ちに著作権法違反など他の違法サイトにも適用されるとは言い切れない。しかし、違法行為が行われているサイトにリンクを貼る行為を、違法行為と「同視できる」という判断がなされたことで、あらゆる違法行為で対しても今後これが判例として参照される可能性は否定できない。

 この判決は更に注意を要する解釈を含んでいる。今回最高裁が支持をした昨年10月23日の大阪高裁判決はリンクを貼る行為について、ヤフーやグーグルなどの検索エンジンにまで言及しているからだ。判決では検索エンジンが児童ポルノサイトを表示し、そこへのハイパーリンクを提供した場合、これは「検索エンジンの利用者が児童ポルノに関連する検索語句を入力して実行することなどによって初めて設定されるものであるから、検索エンジンを開設・運営するなどの行為が児童ポルノ公然陳列の正犯に該当することはなく、幇助に該当するかが問題になるにすぎない」と述べている。つまり、検索エンジンの場合は利用者自身が検索キーワードを入力しなければならない「プル」の要素があるため、単純にウェブサイト上に児童ポルノサイトへのリンクを貼り付けた今回の被告のような正犯の扱いは受けないが、「通常は該当しない」との断り書きをつけながらも、場合によっては検索エンジンに違法サイトが表示されただけでも、検索サイトが違法行為を幇助したと判断される場合があり得るとの解釈が示されているのだ。

 今回被告の弁護人を務めた壇俊光弁護士は自身のウェブサイトで、「この判決の射程範囲は、限りなく広い。一部では、『同視』という言葉は大人気のようである。そりゃそうである。当罰性を理由に、『同視できる」と言いさえすれば何でも有罪にできるからである。(中略)刑法学者の中には、『死後生々しい死体なら生きている人と同視できる」という愚かな人もいるほどである。しかし、同視というミラクルワードで、なんでもかんでも構成要件に含むのであれば、構成要件など要らない。」と述べ、判決への強い不満と懸念を示している。

 今回の最高裁の判断は3対2と判断が分かれての多数決判断だった。リンクを正犯と同視することを支持した判事は岡部喜代子裁判長、田原睦夫、大谷剛彦の3氏、これに対して罪刑法定主義に反することを理由にあげ、正犯ではなく幇助としての裁判をやり直すために高裁への差し戻しを主張したのは大橋正春、寺田逸郎の2氏だった。

 ウェブサイトに違法画像を掲載する行為とそこへのリンクを貼る行為を「同視」した最高裁判決とその影響について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

 その他、小沢一郎氏新党設立なども取り上げる。

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