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「子育て負担」から逃れてきた50代男性の落ち目

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かつて育児・家事は「妻にお任せ」という世帯が多かった。そのツケが回ってきたようだ。ある調査によれば、50代の総合職では男性は女性よりも「核となるスキル」が乏しく、手持ちのスキルも現在の仕事で活かせていない。一方、子育てを終えた女性たちは、「思い切り働くぞ」とモチベーションを高めているという——。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xavierarnau

家事・育児のワンオペを担ってきた50代女性の逆襲が始まった

男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年のことでした。

この法律により、企業は、募集・採用、さらに配置・昇進・福利厚生、定年・退職・解雇にあたり、性別を理由にした差別の禁止などが定められました。

それにより男女別の仕事内容の差をなくしていくために、総合職・一般職といったコース別雇用管理制度を設ける会社が増え始めましたが、一般職の多くは女性が占めるなど、性別で偏りが生じる企業は少なくありませんでした。

また、せっかく総合職で採用されても、適した部署へ異動される機会などが男性より少なかったというケースは珍しくありません。50代の女性たちは、どのようなキャリアをたどってきたのでしょうか。

そこで今回は、公益財団法人21世紀職業財団に協力をいただき、前回(「バブル世代の男と女「働く意識」の顕著すぎる差」)に引き続き50代女性の働き方の現状や今までのキャリアについて述べます。

「自分がやった仕事を名前を書き換えられて持っていかれた」

1:男性に比べて仕事の機会に恵まれなかった50代女性

21世紀職業財団では、2019年に、「女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査 」を行いました。

(*50歳時に300人以上の企業に正社員として勤務しており、現在も正社員として勤務している定年前の50〜64歳の男女と、50歳時に300人以上の企業に正社員として勤務しており、現在働いている定年後の60〜64歳の男女、計2820人を対象として調査を実施)

職場でこれまで経験したことがあるものについて、50代男女の違いを比べると、仕事の経験に大きな違いがあることが明らかになっています。

キャリアの見直しに役立った経験
21世紀職業財団「~均等法第一世代が活躍するために~女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査――男女比較の観点から――」

違う部門への異動(男性総合職 59.7%、女性総合職 36.7%、女性一般職 43.8%)

転居を伴う国内転勤(男性総合職 30.5%、女性総合職 5.0%、女性一般職 5.2%)

出向、転籍(男性総合職 31.8%、女性総合職 9.3%、女性一般職 13.5%)

海外転勤(男性総合職 3.8%、女性総合職 0.8%、女性一般職 0.8%)

「違う部門への異動」など上記の項目に該当する機会が1つもなかったと回答した女性総合職は25.5%、女性一般職は25.0%とほぼ同等になっており、男性については16.1%です。総合職、一般職問わず、男性に比べて女性は、結果的に、異動や転勤など多様な経験を積む機会に恵まれなかった割合が高かったといえます。

インタビュー調査の中では、50代女性から下記のようなコメントが得られました(一部抜粋)。

「男性の縦社会ですから、自分がやったことを、名前を書き換えられて持っていかれるということが、まあまあ、あったのではないかなと思います」

「入社時から出る杭(くい)は打たれると言われてきた。今思えば、与えられてやるのではなくて、もっと若い頃に、出しゃばってでもやる、それは私がやりますみたいなことをすれば良かったのだなとは思うですけれども、できなかった」

「男性優位の会社なので、もう少し自分が前にいける、もっと上にいけるとか、もっと頑張れる、職位とかではなくて、こんなこともできるし、やってみたいと思っているけれども、なかなかやりづらいというか。萎縮してしまうところはすごくあった」

法律ができた当時は、働く女性が徐々に増え始めた頃ではあるものの、多様な経験を積むチャンスは男性と比べて少なく、女性自身も遠慮をして自分のやりたいことを言いづらかった状況がうかがえます。

女性総合職のほうが男性総合職よりも「核となるスキル」がある

2:50代男性総合職と女性総合職の満足度の差異

同調査では、「仕事の質・職務内容」「教育訓練の機会」「給与額」「上司から受ける援助や指示」「同僚や部下とのコミュニケーション」「仕事も含めた生活全般」の6つの項目についての満足度を調査しています。

その結果、男性総合職に比べて女性総合職のほう満足度が高かったのは、

「仕事の質・職務内容(男性52.2%、女性67.6%)」

「仕事も含めた生活全般(男性49.6%、女性62.2%)」

でした。

逆に、男性が女性より満足度がたかかったのは

「上司から受ける援助や指示(男性42.8%、女性25.5%)」

などであることが明らかになりました。

インタビュー調査では、50代女性総合職は下記のようなコメントを残しています。

「私より上の代がどんどんやめていったのは、そういう時代だったということもあり、ちょうどその狭間で、ギリギリ大丈夫な残ってもいい時代に入っていたからで、(自分が)何が突出してできたからとか、絶対にやめないでやると思っていて残ったわけではないので、本当に人を含めた環境とか、時代とか、会社の制度とか、いろんなものに恵まれていたのだと思いますね、私は」

「本当にフェイス・トゥ・フェイスでありがとうと言われることが多かったので。今は本当に橋渡しで、直接、ありがとう(と言う機会)はちょっと減ったので、ちょっとその点はちょっと寂しいかなというのはあります」

「会社に来るのが楽しかったです。仲間が、一緒に仕事をしていて、仕事も楽しかったので、逆に言うと、仕事が趣味ではないですけれども、どこか優しさがある方がまわりにすごく多くて、一緒に頑張ろうねと言う形でやってこられたのはすごく楽しかったので、なんかいつの間にか来られてしまいました」

21世紀職業財団の上席主任・主任研究員である山谷真名氏は次のように解説します。

「同じ総合職でも女性のほうが処遇も悪く、仕事経験による育成や研修など企業からの支援を受けてきていません。しかし、今回の調査結果からは、女性総合職のほうが男性総合職よりも『核となるスキル』があり、そのスキルを現在の仕事で活かせていると認識している人が多いことも明らかになりました()。総合職の女性たちは、困難な職場環境だからこそ、仕事に活かせるスキルを身につけ、それによって満足度を高めているのではないかと思います」

*「ある」+「どちらかといえばある」男64.9%、女73.4%

核となるスキル
21世紀職業財団「~均等法第一世代が活躍するために~女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査――男女比較の観点から――」

女性の仕事内容に対する満足のなかには、出世・昇進ではなく、「仕事をさせてもらうことに対する感謝の気持ち」や、「周囲と一緒に協力をして仕事を行うことへの喜び」などから生まれくるものも多く、そうしたポジティブな気持ちが、仕事に活かせるスキルの習得につながったのかもしれません。

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