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路上生活者のダンス、現代社会の「不自由さ」を問う

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「のたれ死のうと思った」

ご自身の体験や思いを、熱く語ってくださった西さん

その後、好きだったミュージシャンと共に活動したいと、ミュージシャンの活動拠点だった沖縄でプロのダンサーを目指した西さん。しかし周囲から聞こえてきたのは、「あいつの踊りは我流だ」とか「プロとは名ばかり」といった批判だったといいます。

「すごく窮屈に感じて、ダンスは趣味にして別の仕事に就くことに決めました。
新たに事業をスタートするために見切り発車で借金をしましたが、やりたいことができないままその返済に追われ、次第にいろんなことがうまくいかなくなりました。借金が返せなくなり、勘当を引き換えに親が支払ってくれました」

「そこまで来ると、もう何もかもがおかしくなっていくんですね。勘当されたから親には頼れない。自衛隊の元仲間にも辞めた手前、頼れない。ミュージシャンやダンサー仲間からはまだ期待されているからそこにも頼りたくない。一人で壁にぶち当たりました」

大阪・西成にある三角公園の夏祭りにて、ワークショップ参加者と共に圧巻のパフォーマンスを披露。2018年8月14日、釜ヶ崎芸術大学主催「ソケリッサ!on釜ヶ崎夏まつりステージ」より(撮影:矢野大輔)

「ある日、家賃が払えなくなってワーッとなって。『とりあえず消えよう』と無我夢中で家を出ました。成り行きで東京に来て、公園や24時間営業の店で過ごし、3日にいっぺんぐらい食事する。『今日を生きられたらいい』という感覚でした」

「その日だけを生きているから、不安もない代わりに希望もない。淡々と生活を続けているうちにどんどん疲弊していきました。どうしようと思って、でも飛び降りて死ぬようなパワーもないし『じゃあ、食事をとらずにのたれ死のう』と思いました」

そして何も食べずに3週間、街中の人がたくさん行き交う場所で座り続けた西さん。「心のどこかで『何かあるかもしれない』という期待もあったかもしれない。でも、声をかけられるわけでもなく、何も起こらなかった」と当時を振り返ります。

そして3週目に入り、幻覚のようなものを見るようになりいよいよ死を覚悟した矢先、それまで寝ることだけはできたのに突然眠れなくなり、過ぎていかない時間が西さんに大きくのしかかったといいます。

「気が狂いそうになりました。『なんとかしないと』と思い、ホームレス支援をしているNPO団体『ビッグイシュー』に電話をかけて助けを求めました。生まれて初めて、誰かに『助けて』という経験でした。翌日にはビッグイシューの事務所へ行き、そこでソケリッサを紹介してもらい、一緒に踊るようになりました」

「実は自分が、ものすごくとらわれていた」

ワークショップに参加した子どもたちと踊る。2019年9月21日、町田市文化プログラム まちだ〇ごと大作戦チャレンジ事業「杜のるつぼう」プレイベント新人Hソケリッサ!杜のダンスワークショップ(撮影:岡本千尋)

「ソケリッサで踊り出した当初は、自分が派手にやったらもっと盛り上がるんじゃないかとか、自分ががんばればもっと注目してもらえるんじゃないかとか、あざとい感覚がありました。メンバーのおじさんたちを完全にあなどっていた」と西さん。

「『やるからには綺麗に見せないと』とか『ちゃんと揃ったものじゃないと』とか、自分がものすごくとらわれていたんです。でも一緒に踊り続ける中で少しずつ考えが変わって、自分が解放されていくのを感じるようになりました。調子が良い日もあれば悪い日もあるし、しゃしゃり出なくていいし、『今日はどう踊るのか』、自分の中の反応を楽しめるようになりました。その時に改めて、ソケリッサの他のメンバーのおじさんたちはすごいなと感じました」

「『進化しなければ』とか『停滞や後退してはいけない』ではなく、ただ日々の流れの中に身をゆだねてもいいんじゃないか。今はそう感じます。
自分が『こう生きたかった』がソケリッサの中にあります。理想をかなえてくれるとかっていうことではなくて、自分自身の血が通った『もう一人の自分』、それがソケリッサです」

西さんのソロシーン。2019年6月1日、アートプロジェクトTERATOTERA主催「駅伝芸術祭 リターンズ」新人Hソケリッサ!骨の路の踊りより(撮影:阪中隆文)

「自分にとって、踊ることは生きること。今の社会、人は大きな流れの中で、よくわからないうねりや感情、その化け物に踊らされている。そんなのに人生が踊らされているなら、立ち止まって実際に踊ればいいんじゃないか。そんな風に思っていて、そんな提案こそ、ソケリッサのやっていることのような気がします」

「3月公開の映画を、試写会を通して見ました。観てもらったらいろいろ思うところもあるだろうし、腹が立つかもしれないし、鼻で笑ってもらってもいいんです。ただ、一人の人間が生きる姿を見てほしい。映画のラストシーンで感じたことが、その人の何か、流れの中の一つとして、断片の記憶として何かになったりならなかったりしたら面白いなと思います。ぜひ見てください」

映画公開に合わせ、ソケリッサの生の踊りを一人でも多くの人に届けるためのチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「新人Hソケリッサ!」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×新人Hソケリッサ!」コラボアイテムを買うごとに700円がチャリティーされ、映画の公開に合わせ、一人でも多くの方に生の踊りを感じてもらうため、イベント(写真展やダンスワークショップを予定)を開催するための資金となります。

「JAMMIN×ソケリッサ」1/20~1/26の1週間限定販売のコラボアイテム(写真はベーシックTシャツ(ホワイト)、価格は700円のチャリティー・税込で3500円)。アイテムは他にパーカー、トートバッグやキッズTシャツなども

JAMMINがデザインしたコラボアイテムに描かれているのは、太陽と月が描かれた手のひら。踊る人と観る人、一人ひとり歩んできた人生と経験が、踊りの空間の中で大きなエネルギーとなって共有される様子を表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、1月20日~1月26日の1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

白でもなく黒でもない、その不確実性の中に価値を。不自由の時代に、自由を踊る〜新人Hソケリッサ!(一般社団法人アオキカク)

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。2019年11月に創業7年目を迎え、コラボした団体の数は290を超え、チャリティー総額は4,000万円を突破しました!

【JAMMIN】



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