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自走式スーツケースは流行するのか - 土方細秩子 (ジャーナリスト)


昨年のCESでコンセプトとして発表されたFowardXという、AIを使って使用者の後を自動的に追尾する、というスーツケースが、今年製品として発表された。ForwardX社によるOVISというスーツケースで、米国で799ドルで発売が始まる。


OVISはリストバンドとセットになっており、リストバンドからの信号を感知して持ち主の横を適度な距離で並走する。AIが組み込まれており、向かってくる人や障害物を自動的に検知し、ぶつからないように避けて移動するのだという。またそれらの障害物により持ち主と離れすぎた場合、リストバンドあるいはスマホアプリに警告音を発する。盗難にあった場合でも、アプリからスーツケースの場所をすぐに特定することが可能だ。

なぜこのような製品を考案したのか、というと、アンケート調査などの結果67%の人が「旅行にはストレスが伴う」と答え、その最大の理由が荷物を運ぶこと、常に荷物に注意していなければならないことなのだという。自走式で持ち主について歩くスーツケースにより、こうした悩みは一気に解消できる。

クラウドファンディングで140万ドル

ForwardXDではOVISの開発にあたり、クラウドファンディングで資金集めを行った。その結果、3000人以上から合計で140万ドルを調達することに成功、製品化にこぎつけることが出来た。それだけ多くの人が、このような自分で引いて歩く必要のないスーツケースを求めていた、ということなのかもしれない。

同社CEOニコラス・チー氏は「OVISには2つの目と頭脳が組み込まれている。AIによるインテリジェンスと認識力が与えられ、単に持ち主をつい追跡するだけではなく、持ち主が進む方向の予測、その目的を達成するためのアルゴリズムが備わっている」と語る。

またOVISには米国の空港セキュリティであるTSA認可のロック、取り外し可能なバッテリーが備わっており、空港のセキュリティチェックもバッテリーさえ取り外せばパス出来る。バッテリーはラップトップコンピュータのものと同程度の大きさだ。こうした機能をすべて含めて、総重量は4・5キロ程度に収まっている。

OVISを操作するには、リストバンドによる完全自動運転モード、スマホアプリによるリモートモード、そしてワンタッチで手動に切り替えることも出来る。階段、エスカレーターなど、自動走行が使えない場合は手動モードにする必要がある。手動モードで置かれているスーツケースを自分の側に呼び寄せたい場合、スマホアプリのリモートを使えばスーツケースが持ち主の場所を特定して自分で近寄ってきてくれる。

ユニークなのはスーツケースにはカメラも組み込まれていて、写真やビデオを撮影することが可能なことだ。またバッテリーには2つのUSBポートがあり、スマホなどの充電機として使うことも出来る。現在ウェブサイトで予約を受付中で、今年の早い時期に発売が始まる予定だという。サイズは32Lの機内持ち込み可能なもののみで、カラーは4種類。バッテリーは1回の充電で4時間稼働し、充電に要する時間は3時間程度。

ForwardX社は2016年に設立されたベンチャー企業で、AIと自動運転のために開発された技術を使い、自走式のロボット開発に取り組んでいる。今年のCESでは紹介されなかったが、昨年は倉庫用の物流ロボット、ワゴンの形で製品をピックアップして目的地に移動するタイプのロボットも展示されていた。

Gita

続々と登場するロボットキャリーケース

ところでこの「持ち主を追跡するロボット」、スーツケース型は今回が初の市販モデルとなるが、米国では昨年末に「ロボットキャリーケース」が発売されて話題となった。Gitaという製品で、丸い形の上部にドアがあり、中に物が入れられる。グローサリーロボットなどと呼ばれるが、赤ちゃん連れの人、高齢者などが、買い物した商品を入れて運ぶ、という使い方が想定されている。ただしこちらは価格が3250ドルで、昨年12月に発売になったため「クリスマスプレゼントとしては少し高い」とニュースなどで取り上げられた。

また米小売大手ウォルマートは昨年から一部店舗で商品を棚からピックアップするロボットカートを導入。主にオンラインショッピング向けの商品ピックが目的で、従業員がオンラインオーダーに従って商品をピックするよりも迅速に処理ができ、人件費も節約できる、と全米の店舗に広げる予定だ。さらにウォルマートでは店内でのショッピング客向けの自走式ショッピングカートの特許も申請しており、自分で押して歩かなくても自動的についてきてくれるカートがいずれ登場するかもしれない。

ゴルフ場では以前からリモート式の自走手押しカートというのがよく見られていたし、車であれば安全性などが問題になるがこうした小さな自走式ロボットというのはそうした規制から外れている点で、開発しやすいものかもしれない。AIとロボティクスの組み合わせはまだまだ無限の可能性がありそうだ。 

https://cdn.shopify.com/s/files/1/0261/7593/0440/files/ovis-video.mp4?9871

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