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【サントリー大阪工場】世界で人気のジャパニーズ酒はどうやってつくられるのか?

羽田や成田から飛行機で海外へ向かおうとすると、免税店でひときわ目をひく商品がある。サントリーのクラフトシリーズだ。ジャパニーズクラフトジン「六 ROKU」、ジャパニーズクラフトウオツカ「白 HAKU」、ジャパニーズクラフトリキュール「奏 KANADE」は、いま海外や免税店での人気がすさまじいという。新世代のジャパニーズ酒はどうやってつくられるのか、サントリーの大阪工場を取材した。シリーズ第1回。

日本の洋酒文化を牽引したサントリー大阪工場

2025年の大阪・万国博覧会開催地やIR候補地でもある夢洲からすぐの港区海岸通に、サントリー大阪工場はある。1899(明治32年)に創業したサントリー(当時は鳥井商店)初の工場として1919年(大正8年)に開設された。

「創業者の鳥井信治郎が甘味葡萄酒「赤玉ポートワイン」を発売して人気を博した時期でした。その瓶詰工場として設立されたんですが、ヨーロッパなどからの仕入れにも、また国内への輸送にも便利な場所だったことから、この地が選ばれたのでしょう」と説明してくれたのは、工場長の岸重信さん(2020.1~ 梓の森工場長)。

岸重信工場長。

明治になって大阪湾が開港し、関西の貿易拠点となるべく開発が進んでいた。大正から昭和にかけては、さらに天保山公園など周辺開発が進み、海遊館(水族館)やユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどが開設され人が集まる場所へと発展を遂げている。

「日本人の味覚にあった洋酒文化を切り拓きたい」という鳥井信治郎の想いのもと、大正12年(1923)には京都・山崎にモルトウイスキー蒸溜所をつくってサントリーウイスキー「白札」や「角瓶」などウイスキーを製造販売するとともに、大阪工場ではヘルメスシリーズのジンやベルモット、リキュールなど数々の洋酒を世に送り出した。これらの商品を展開したことで、サントリーは日本に洋酒ブームをもたらしたのだ。

2005年には、さらにスピリッツ・リキュール工房を大阪工場に増設。2014に米蒸溜酒大手のビーム社を買収したことを機に、世界に向けた日本のジンやウオツカの製造に乗り出す。そして、大阪工場100周年を目前にした2017年にジャパニーズクラフトジン「六 ROKU」の発売を果たした。  

世界をマーケットにしたサントリーのものづくり

ジャパニーズクラフトジン「六 ROKU」、ジャパニーズクラフトウオツカ「白 HAKU」を大阪工場で製造し販売すると、日本的で繊細な味わいは、徐々にではあるが世界に認められるようになる。ジンなどスピリッツの消費は、そのほとんどが欧米だが、和食ブームもあいまって、素材の安心感や手作りの味わいが際立つサントリーのクラフトジンやウオツカは、世界のフーディーを魅了したのだ。

「ウイスキーやスピリッツなどサントリーの製品が世界に認められるには、数十年の時間がかっています。『山崎』や『白州』などのサントリーウイスキーが世界に愛されるようになったのも、ウイスキー製造を開始してから80年が経った後。そんななか、ビーム社を買収し、蒸溜酒生産量が世界3位になり認知度もあがってきました。世界での販売を目指す『六 ROKU』はその代表作です」と岸工場長は言う。 

真摯で妥協のない酒つくりが世界のファンを惹きつける

大阪工場では、蒸溜器(ポットスチル)4基を使い分け、クリーンなベーススピリッツをはじめ各種ボタニカルの浸漬、蒸溜を行っている。生産にあたっては、ジュニパーベリーなどベースになる原材料のほか、柚子や煎茶といったボタニカルに至るまですべての材料を何種類もから厳選し、丁寧な作業で蒸溜していく。

広大な敷地のスピリッツ・リキュール工房のほか梅酒浸漬タンク群、ウイスキーやブランデーのボトリングブロックなどがある。

ただし、いくら質のよい原材料を用いても、生産年や季節によって変わる味わいや香りをハイレベルに保つのは並大抵ではない。味わいを上質に導くのは熟達した職人の技や勘があるからで、長年、洋酒づくりに力を注いできたサントリーだからこその成果といえる。

サントリーの酒づくりは、要になる3つの要素でなりたっていると岸工場長。

「まず、いかに天然素材からその風味を引き出すか。たとえばバナナは包丁では切らず、手で皮をむいて表面のざらざらした質感を保ち香りを引き出します。次に、お茶など材料ごとに時間や方法を変え、ベースのアルコールに浸漬する技術。抹茶などは短期間のみの浸漬です。そして3つめに、柚子など材料によってはそのものを蒸溜する技術。この3つを駆使してジンなどをつくっていきます」

材料の厳選、製法などすべてを極め手間暇かけることは、ここでは当たり前のこと。そうでなければ良いものはつくれないという精神が貫かれているのだ。

大阪工場は、設備、生産量ともに世界有数の実力を誇る。サントリーの最初の工場であるとともに、今後は世界へ発信する要となる。世界中でクラフトジンやクラフトウオツカがさらなるブームを呼ぶ今、サントリー製のジャパニーズスピリッツやリキュールは創業者の想いをのせ、より多くの人に愛飲される存在になるに違いない。

大阪工場玄関に立つ創業者・鳥井信治郎の像。失敗を恐れず逆境に立ち向かう「やってみなはれ」の精神で日本に洋酒文化を広めた。
 

Text=中井シノブ Photograph=伊藤信

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