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「ゴーン」という怪物を作り出した日本人の体質

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除夜の鐘と共に去ったカルロス・ゴーン

「Gone wih the wind」、まさに「(除夜の)鐘と共に去りぬ」。

昨年末、日本中を驚かせる出来事がありました。日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン氏による逃亡劇です。億単位の資産があればこそ実現できたこの一件は、いろんな意味でドラマティックでした。


日本メディアの代表取材に応じるカルロス・ゴーン被告=2020年1月10日、レバノン・ベイルート - 写真=時事通信フォト

大晦日(みそか)の国民的番組である、日本テレビ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」の放送中にそのニュースは飛び込んできました。


立川 談慶『ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語』(サンマーク出版)

聞くところによるとゴーン氏は、「楽器のケースに隠れての出国」を図ったとのこと。「楽器の使いやあらへんで!」と訴えたいところだったのでしょうか。

また「プライベートジェットを使用する際、その楽器ケースのX線チェックは受けなかったのか」という率直な疑問にも、「X線チェックは『ケースバイケース』」とでもいいたくなる、大喜利ネタのような形で年を越すこととなりました。

……すみません。ま、落語家が考えることです。以下、少し斜に構えて私なりの考えを述べてみたいと思います。

それはもしかすると、「ゴーン」というモンスターを作り出したのは、日本人の体質ではないかという仮説です。

あらためておさらいするゴーン被告の功と罪

順を追ってわかりやすく説明します。

日本において業界第2位の自動車メーカー、日産自動車が経営難に陥りました。打つ手のない現状を鑑みて、当時の経営陣はフランスの自動車メーカー・ルノーの要職に就いていたゴーン氏を迎え、最高執行責任者(COO)に任命します。そこで彼は「なあなあ体質」だったその会社に喝を入れるべく「リバイバルプラン」をたたきつけ、とにもかくにも経費削減を目指します。

具体的には、5つの国内工場の閉鎖と2万人に渡るリストラなどでした。コストカッターの呼び名にふさわしい剛腕を振るった結果、日産は奇跡的なV字回復を果たし、業績は持ち直します。……と、ここまでが一般的にもよく知られている、彼の称賛に値する部分です。

そして、ここからが彼の逮捕容疑にもつながる部分です。ゴーン氏は法外に高額だと指摘され続けてきた役員報酬を、過去5年間で約50億円も過少申告し、なおかつ複雑な経路で自らに還流させて不正蓄財を行っていたというのです。

ひとことでいえばゴーン氏は、「数字上、利益を出した形にはしたが、その過程で異様に私腹を肥やしていた」ということなのでしょう。

日本の司法の手続きの煩雑さや、手間のかかるシステムから感じられる「人権意識」などについてはひとまず別問題ですから、ここではあくまでも「ゴーンの功と罪」にフォーカスしてみます。

日本人が抱く限りない性善説

ここでまた持論を述べてみたいのですが、「日本人は昔から経営者に純度を求めすぎてしまうきらいがある」のではないでしょうか。

松下幸之助や本田宗一郎など、世界に誇る創業者があまりにも偉大過ぎ、ふつうの雇われ社長にまでその精神性および潔白性を求め過ぎてしまっているように思えてならないのです。

ゴーン氏にしても、「あれ、ここまでやっても誰からも文句は出ないんだな」と、さらにその欲求をエスカレートさせてしまったのかもしれません。

これは女性に対して「肩を触っても怒られないなら、背中もOKだろう」と、その手が下までエスカレートしてしまうセクハラ事例に似ている気がします。つまり、日本人の「経営者がアコギに儲けているわけはない」という盲信が、ゴーン氏のリミッターを外させてしまったのではないでしょうか。

これこそが、山本七平氏が指摘し、わが師匠・談志も感じていた「日本教」なのかもしれません。要するに、「まさかそこまではしないだろう」という、日本人が抱く限りない性善説です。

考えれば考えるほど、日本は「性善説国家」であります。田舎道を走っていればよくわかります。道を聞けば、地元のヤンキーみたいな若者でも親切に教えてくれますし、街道筋には「お金はこの箱の中に入れてください」と記された無人販売所が点在しています。

都会に目をやっても、比較的セキュリティはしっかりしているものの、無数の自動販売機が無防備に置かれています。「渡る世間に鬼はなし」とか「武士は食わねど高楊枝」といったことわざが今の時代にまで続いているのは、「昔からそんなにあくどいことをする奴はいなかったんだよ」という事実を証明しているような気がします。

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