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阪神大震災から25年 災害時、メディアの発信には「タイムラインの導入を」



 2019年9月、関東を中心に甚大な被害を出した台風15号。被害が広範囲に及ぶ中、小さな町からのSOSがTwitterに投稿され、反響を集めた。あるローカル局では放送の枠を越え、熱い思いとともに被災者支援情報をツイートし続けた。災害時のSNS活用に注目が集まった2019年。そして、阪神・淡路大震災から25年が経ち考える、「ネットは人を救えるのか?」――。

 台風15号では特に千葉県の広範囲に被害が及び、マスコミ各社も正確に把握しきれない現場も多くあった。そんな中、被災状況や支援情報を発信し続けたのがローカルテレビ局の「千葉テレビ(チバテレ)」だ。



 チバテレの公式Twitterが発信していたのは、「【拡散希望!シェアして!】給水所開設情報!」「千葉市 21時まで風呂無料開放」「館山 屋根職人の協力のお願い」といった被災者向けの災害支援情報。千葉県内の避難所・給水所などのインフラだけでなく、必要とされる支援情報は市町村一つひとつに至るまで、非常にきめ細かくツイートした。

 ツイートを行っていたのはチバテレTwitterの“中の人”、業務事業部の石山孝紀部長。石山さんは「放送だと大きな情報を大づかみに伝えますが、『どこどこ地区の◯◯集会所に集まってください!』というものは放送では中々手が届かない。こぼれ落ちた地域、被災されている人々を救えるのがネットではないか」と話す。



 ツイートする際に一番気をつけていたというのが“フェイクニュースの排除”。「必ず裏の取れる情報ということを意識しながら発信していきました。これも本当に神経を使いました」。その結果、短期間でフォロワーが約2万人増加したりリプライで新たな情報が寄せられたりするなど、大きな反響を集めた。

 SNSを通じた情報発信の意義について石山さんは「皆様に活用していただいているのだと感じました。我々の存在意義がここにあったのかなと。まだ避難所が開設されていて、(被災支援は)終わっているわけではない。始めたらとことん情報を出していかなければならない。“使命感”、そこだけでずっと続けています」と語った。

■地域密着型メディアに期待される「入り口」の役割

 チバテレは特にTwitter上で存在感を示し、注目を集めていた。地域密着型のメディアだからこそできる、災害時のネット発信の可能性とは。

 防災の専門家として数々の復興事業に取り組んできた社会起業家の藤沢烈氏は「被災地の状況によって必要な情報は変わってくる。今すぐ避難しなければならない地域とそうではない地域、物資が全くないところとあるところでは必要な情報は変わる。そういった情報は全国放送では対応できないので、こういったローカル局が地域の情報を細かく出す役割がある」との見方を示す。



 一方、鋸南町を含め日本各地の災害を現地取材したAbemaNewsの辻歩キャスターは、ローカル局の人員が決して充実しているわけではないことを感じたという。「チバテレの石山さんも普段はテレビCMに関する業務を兼務していて、Twitterを運営しているのは実質2人だけだそう。そういった中で、きめ細かい情報発信を行うのは非常に大変だという実感がある。災害時においては、他のメディアと協力することなども考えられるか」と疑問を投げかける。

 これに藤沢氏は「情報の『入り口』の役割となってもらうのが良い」との考えを示し、「NHKは人員が豊富で各地域の細かな情報を持っているので、例えばチバテレが“NHKのサイトでこういった情報が掲載されている”ということを発信する。また、地域のローカル新聞社では別の細かな情報を持っていることも多いので、“このサイトや新聞に情報が掲載されている”といったことを発信する、入り口の役割を果たすことが大事だ」と述べた。

 藤沢氏は今後の災害対応の課題として「タイムラインの導入」を提唱する。ここでいうタイムラインは“時間軸”のことで、災害発生が予想される5日前に「準備開始」、4日前に「避難計画の準備」、2日前に「避難所準備と開設」、1.5日前に「避難命令と開始」、6時間前に「公共交通機関の通行停止」、災害発生から12時間後に「危機管理局による応急開始」、1日後に「被害状況の調査とがれき処理の調査」など、災害前後の対応を細かく設定する。



 「災害は発生前後の動きがおおよそ予測できる。災害の2日前にはこれをやろう、直後にはこれをやろう、2日後にはこれをやろうというように、時間軸であらゆる機関が連携するような動きが近年出てきている。メディアもこのタイムラインを意識して発信いただくことがとても大事だと考えている」と藤沢氏。

 災害時の人命救助においては、「72時間」が生死を分けるタイムリミットだとされている。藤沢氏は「大規模な災害が起きた場合、72時間の間に人命救助を進めなければならない。一般の方が避難活動・避難行動を取ってしまうと人命救助を妨げることになり、よって行政が道を止めたり呼びかけを行ったりしてその場に留まってもらう。メディアにも“72時間は人命救助のためにその場に留まってください”ということを言い続けていただく。そのあたりメディアによっては慣れていないので、こういうタイムラインにメディアを含めて取り組んでいただくことが必要だ」とも説明した。

■「災害時の情報には“賞味期限”があると考えるべき」

 ネット上に配信したニュース、特に状況が刻々と変化する災害時は、SNSで拡散される前と後ですでに状況が異なる可能性がある。内容が古くなった元のツイートを削除したとしても、一度拡散してしまうと全ての人の目に触れないようにすることは難しい。



 情報の“賞味期限”について藤沢氏は「“どこどこで毛布が足りない”という情報が1週間経っても残っていて、もうその現場には毛布が大量に届いているにも関わらず、さらに送る人が出てしまうという状況が起きている。災害時の情報には賞味期限があると考え、メディア側もいつまでの期限付きの情報なのか、いつまで有効な情報なのかを明らかにして発信することが大事だ」と訴える。

 一方で、情報を伝える側の立場として辻キャスターは「ネットで出した情報がどこまで必要としている人に届いているのか。例えば、『避難してください』という情報を出した時に、実際に避難行動に移してくれる人がどのくらいいるのか気になっている」という。



 藤沢氏は「生存者バイアスといって、『自分だけは大丈夫』と行動に移さない方が多くいる。そこで、自分に呼びかけてくれるようにパーソナルに発信してくれる『ラジオ』が災害時には非常に有効なメディアで、受け手も自分事として行動に繋がることがある」と説明。ネットではTwitterがこれに近いといい、「Twitter上で自分が信頼している人が発信をしてくれると、非常に重要な情報だと感じやすい。メディアの発信とともに、Twitterでできるだけ外部の方と連携するとより効果的だ」と述べた。
(AbemaTV/『AbemaNewsスペシャル 災害2019「ネットは人を救えるのか?」』より)

映像:SNS「助けて」から始まった災害報道

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