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寺島進、思い出の焼肉店で「松田優作と北野武の教え」を語る

 寺島進(56)の実家は、東京の下町・深川の畳店だった。

「い草(畳の素材)の匂いを嗅ぐと、亡くなった父親を思い出しますね。父は家の事情で畳屋を継ぐしかなかった。俺には『高校までは出してやるから、好きな道に進め』って言ってくれました」

 将来、何をしようか。そんなとき、近所の知り合いが持ってきたのが「三船芸術学院」のパンフレットだった。

「三船敏郎さんのプロダクションの隣に、養成所があったんです。パンフレットを見たときに、『芸術』って言葉がピカッと光って見えてね。体育と図工だけは得意だったんですよ。アルバイトで学費を稼ぎながら、通いました。

 いろいろなカリキュラムがあるなか、黒澤映画に欠かせなかった殺陣師・宇仁貫三先生(2019年1月没)の殺陣の授業をとったんですよ。木刀を振ったり、空手アクションをしたり。すぐに夢中になりました」

 殺陣師、スタントマン……。“縁の下の力持ち” に憧れた。

「宇仁先生主宰の『剣友会』に所属した縁で、いまも北野武作品などで活躍する、二家本辰己さんに出会いました。二家本さんが殺陣を担当する舞台で、『忍者の役が欲しい』ということで、俺を抜擢してくれたんです」

 この舞台の本番2週間前。ある稽古でのことだった。

「『兄貴が来るよ、兄貴が来るよ』って、やたら稽古場がざわついてるんです。誰かと思ったら、風のようにフワッと目の前に、松田優作さんが座ってたんですよ。途端に、稽古場がなんともいえない空気に包まれましてね。俺は20代前半で生意気で、『なんだよ、ジーパン刑事だろ』って感じで(笑)。

 でも、不思議と緊張感を持ったいいアクション芝居ができたんです。その後、着替えていたとき、優作さんが俺の肩を叩いて『これ以上テンション上げたらクサくなるし、これ以上下げると成立しない。本番は、このままでいけばいいから』と言ってくださって。

 ナメてかかってたはずなのに、初めて褒められたから、直立不動で『ありがとうございます!』ってなってたね」

 ハンドボール部に所属していた高校時代から、遊び場は錦糸町だった。この街の焼き肉店「三千里」にも、10代のころから通い、40年以上になる。

「ここのコムタンスープ、本当にうまいんですよ。昔は最後に残ったテールの肉を、実家で飼ってた柴犬にお持ち帰りしてましたね」

 寺島にとって焼き肉は、青春の味であり、出会いの味でもある。舞台出演が縁で、松田優作の初監督作『ア・ホーマンス』(1986年)にも、ヤクザの役で出演。撮影後、数人で夜道を歩いていると、黒いセンチュリーがゆっくりと走ってきて、真横で停まった。

「後部座席の窓が下がると優作さんで、『これからメシ食いにいくから、一緒に行こうぜ』と、焼き肉屋に連れていってくださった。優作さんの隣に座ってガッパガッパ食べてたら、ほかの人間に『あの状況でよく食えたな』って。

 焼き肉は、なかなか食べられないご馳走だったから嬉しくってね。ラクダになって、食いだめしたかったですよ(笑)」

 褒められただけではなく、怒られたことも思い出だ。

「舞台の稽古場で『ガラガラ、ペッ!』とうがいをしたとき、優作さんに『ここは神聖な稽古場だ。そんな下品なうがいをするなら、トイレでやってこい』と怒られました。いまでも、稽古の合間にうがいをするたび、優作さんに怒られたことを思い出します」

25歳。ウエスタン村(栃木県日光市)でバイト

 1980年代が終わるころ、父親と松田優作が世を去った。

「もう少し、いろんなことを聞いておきたかった。今度、大切な人に出会ったら、後悔しないように生きよう」

 そう考えていた寺島が、『その男、凶暴につき』(1989年)のオーディションで出会ったのが、北野武だ。寺島が初めてお供したのも、焼き肉店だった。

「北野監督は、有名無名にかかわらず、同じ目線で接してくれたんですね。そこにすごく希望が持てました。

 その後『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年)でも使っていただき、撮影中に北野監督と飲む機会があったんです。そのときに、『役者はいいぞ。ずっとやりつづけて、死ぬ間際に天下とったら、そいつの人生、勝ちだぜ』って言ってくださって。この道を進んでいいんだと、光をもらいましたね」

 松田優作、北野武両監督の現場に共通するのは、チームワークのよさだという。

 2020年1月24日から寺島主演のドラマ『駐在刑事 Season2』(テレビ東京系)がスタートする。東京・奥多摩の駐在所に左遷された捜査一課の敏腕刑事が、人と自然にふれ合いながら事件を解決していく人気シリーズ。この現場でも、寺島はチームワークを大事にしている。

「主役の人間は、まわりの人に支えていただいて浮かび上がらせてもらうので、感謝を忘れないようにしています。昭和のよき時代の下町の雰囲気じゃないですけど、義理人情や家族愛を大事に演じていきたいですね」

 主役を張るようになった今、憧れの人たちの教えがいっそう胸を刺す。

てらじますすむ

1963年11月12日生まれ 東京都出身 『ア・ホーマンス』(1986年、松田優作監督)で映画デビュー。北野武監督の映画作品に多数出演。主演ドラマ『駐在刑事 Season2』(テレビ東京系、金曜20時~)が2020年1月24日スタート

【SHOP DATA/焼肉 三千里 本店】

・住所/東京都墨田区錦糸4-14-9 チグサビル1F 

・営業時間/16:00~24:00(LO23:30)

・休み/月曜

※初の自伝『てっぺんとるまで! 役者・寺島進自伝』(ポプラ社)が1月11日に発売予定

(週刊FLASH 2020年1月7・14日号)

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