
[東京 17日 ロイター] - 1月ロイター企業調査によると、気候変動を念頭に置いて大型台風クラスの風雨水害や気温上昇に対する備えを行っている企業はまだ少数派であることが明らかとなった。事業継続計画を策定していても、豪雨や台風による洪水を想定している企業は半数以下にとどまり、気温変化や浸水への備えは手薄となっている。また海外から批判の強い石炭火力発電について、撤退すべきとの意見は2割にとどまった。
この調査は12月25日から1月10日までの期間に実施。調査票発送企業は502社、回答社数は245社程度だった。
<供給網確認は7割超 中身は脆弱>
災害全般については、地震への備えなど、行政から従来求められている緊急時の事業継続計画(BCP)を策定している企業は77%を占めた。しかし、近年の気候変動による大型台風や豪雨が引き起こす洪水までを想定して策定している企業は45%に過ぎなかった。
「過去に台風による大潮被害で相当のダメージを被った経験があり、常に備えるようにしている」(機械)と、すでに浸水被害を想定している企業もあるが、「台風による風水害リスクが高まっていることから対策を変更している」(輸送用機器)、「これまで異常気象と言われていたような事態が今後は恒常的に発生すると考えて対策中」(卸売)など、昨年の大型台風を教訓にBCPを練り直している企業も目立つ。
自然災害を保険でカバーしている企業は全体の8割にのぼった。サプライチェーン確保への備えも、調達・供給先の立地場所を確認している企業は77%、代替調達先が複数確保されている企業も75%を占めた。「東日本大震災で調達先や外注加工先を複数化するなど、対応を進めてきた」(精密機器)という企業が多い。
ただし、これらの備えも実際の災害時には脆弱な面を抱えていることが明らかとなった。
現状のプランは「輸送経路が途絶えれば困難」(紙パルプ)、「インフラ機能が一定水準維持できることが前提」(機械)など、あくまで交通網が確保されていることが必要だ。
さらに調達先も「1次調達先は確認しているが、2次、3次と先までカバーする形での計画を立てるのは非常に難しい」(卸売)としている。また多岐にわたる原材料の全ての代替先を見つけるのは難しく、「一部の重要部材は単一調達先からのものとなり、一定のリスクがあることは認識している」(精密)といった事情もある。
気候変動を踏まえた対策はまだ始まったばかりのようだ。調達・供給製品について浸水や気温変化に対する耐性があるかどうか確認している企業は54%と半数にとどまった。
<石炭火力発電、続行支持が8割>
日本政府が推進する石炭火力発電について、国際会議の場では日本への批判が集中したが、大方の国内企業は続行を支持している。
「引き続き推進すべき」との回答は18%、「縮小して続けるべき」が62%となった。「やめるべき」との回答は20%だった。
継続支持の企業が多い背景には、まず日本の石炭火力発電の技術が優れていることがある。「世界の世論でいう火力発電と、日本の最近のそれとでは、CO2排出量が大きく異なる。それをきちんと説明するべき」(サービス)との指摘がある。
さらに、安定供給とコストの優位性があげられ「安定性や経済性の面で他の化石燃料より優れている」(機械)、「原発停止の影響により、電源確保にはやむをえない」(多くの企業)という点がある。
自然エネルギー活用についても「電力安定供給の面からリスクを感じる」(卸売)とみている企業は多い。
石炭火力発電推進政策をやめた場合、自身の企業経営への影響について「マイナスの影響がある」との回答は35%を占めた。安定供給に懸念が生じる点や、電力コストの上昇が主な理由となっている。
(中川泉 )