ゴーン被告の海外逃亡で裁判がストップする、というのは如何にも業腹だ。
ゴーン被告に悪し様に罵られている日本の司法制度だが、私はゴーン被告が言うほどには日本の司法制度は悪くないと思っている。
少なくとも法の適用は、誰に対しても平等である。
確かに冤罪事件のように明らかに間違った判決が言い渡されることもあるが、概ね日本の裁判は適正に行われており、一部諸外国のように被告人や弁護人その他の関係者が裁判官や陪審員を買収して裁判結果を歪めてしまうような事象はまったく発生していない。
死刑制度があることで、日本の司法が野蛮だとか、世界と較べて劣っているなどと批判する向きがあるが、薬物の密輸等で直ちに死刑になったりする国や国の利益を不当に侵害したとして職権乱用罪で極刑に処せられることがある国もある状況の中で日本だけが特に世界に遅れているとは言えないだろうと思う。
世界に共通の法規範が確立しているのであれば、これに従うのがいいと思うが、それぞれの国にはそれぞれの文化があり、一律にどこかの国の基準に従うべきだ、などとは言えない。
取調べに弁護人の立会い権が認められていないことから、如何にも日本の司法が人権を無視しているように論難される識者の方もおられるが、弁護人の立会いが捜査の適正を担保するために行われるものであればいいが、事実上、法の正義の実現を妨げるためだけに機能するようになってしまっては本末転倒である。
長期間にわたる身柄勾留が如何にも自白を強要するために行われているように指摘されることも多いが、勾留の要否については裁判所が判断しており、その運用も評価する者の立場によって異なることは当然だが、一部の例外を除いて概ね適正に行われていると言っていいのだと思う。
日本の裁判や日本の裁判官に対しての評価は、概ね高い。
日本の裁判の公正さは、世界に誇ってもいいはずである。
ゴーン被告は何を恐れたのか、そういう日本の裁判から逃げてしまった。
海外に逃亡してしまったことで、日本の裁判が事実上開けなくなっている。
言ってみれば、無罪の判決を得られたかも知れないのにそのチャンスを自ら放棄したことになる。
弁護人から何を吹き込まれたのか知らないが、ゴーン被告はやはり堂々と法廷で自らの潔白を主張し、それなりの証拠を示して汚名を雪ぐべきだったと思う。
結局、日本有数の刑事弁護人と世間で評価されていた二人の弁護人がゴーン被告の弁護人を辞任することになった。
そんなことでいいのかしら。
ゴーン被告に係る刑事裁判の結論がどうなるか、法律実務家の一人として私は重大な関心を持っていた。
検察官の主張はともかくとして、私は裁判所の判断が聞きたかった。
実に微妙な法律問題である。
いつまでもこのまま有耶無耶にしておきたくない。
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- 2020年01月16日 20:33