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民放特集に「女性蔑視」と批判も 導入から20年も続く女性専用車両への賛否の議論

民放各局の情報番組で今月、“女性専用車両”をテーマにした特集が相次いで放送され、Twitterなどではその内容をめぐって賛否が巻き起こっている。特集では、車内の状況について、香水の匂いがきつい、席の奪い合いが激しい、口論が起こりやすい――などと女性の意見を踏まえて紹介したものの、「女性専用車両への蔑視だ」との批判も相次いでいる。

かねて女性だけに専用車両が設けられることに対して、ジェンダー平等の観点から疑問視する意見もある。女性専用車両は2000年に京王電鉄で試験的に導入され、全国へと普及していった。20年の節目を契機に、その歩みを振り返りたい。


情報番組での扱いに対し「女性蔑視」と相次いだ批判

議論のきっかけとなったのは13日に放送された情報番組「羽鳥慎一のモーニングショー」(テレビ朝日系列)。特集では、女性専用車両を敬遠する女性が増えているとして、街頭で女性専用車両への不満をインタビューした模様を紹介した。

さらに、イラストを用いて「男性がいないため、周囲の視線を気にせずにスマホに没頭している」「顔にファーやポニーテールがかかる」などのトラブルがあると示し、車内の床に使用済みのあぶらとり紙が散乱し、ブランド品の持ち物に関する“マウント合戦”がひどいなどと報じた。スタジオでは、アシスタントの女性アナウンサーも「後ろを通ろうとして“ケツアタック”された」として女性専用車両を避けていることを明かした。

こうした内容に対して、Twitterでは「女性専用車両について蔑視した取り上げ方」「ありもしないことを言って女性をたたいている」「悪質な作り話」と批判するツイートが相次いだ。

時を同じくして15日には、情報番組「グッとラック!」(TBS系列)が「『女性専用車両』乗りたくない女性増 ナゼ」と題した特集を、「Nスタ」(同)も女性専用車両にクローズアップした内容を扱った。

誕生から20年 大阪での卑劣な事件が大きなきっかけに

東京や大阪など都市部を中心にすっかり定着した女性専用車両。戦前や敗戦直後に一時的に運用された記録が残るものの、現在の様に普及するまでの歩みは長くはない。


女性専用車両の導入への機運が高まったのは1990年代。きっかけは、1988年11月4日に大阪市の地下鉄御堂筋線で起きた卑劣な事件だ。

当時の新聞記事によると、午後9時ごろ、大阪市内を走行中の車内で、男2人組が1人の女性に痴漢行為をした。これを目撃した別の女性(当時20歳)が被害に遭った女性を逃した後、2人の男をとがめた。

男2人はとがめた女性を車内から連れ出し、マンションの建築現場に向かうとバンドで殴るなどしながら強姦行為に及んだという。男2人は痴漢行為を通じて知り合った“痴漢仲間”だった。

この事件は議論の的となり、電車内の女性の安全を求める「性暴力を許さない女の会」が発足。大阪市交通局への要望活動に取り組み、痴漢を許さない趣旨のポスターが掲げられたり、車内放送が始まる端緒となった。

男女の半数超が賛成 京王電鉄が試験導入へ

同会の積極的な取り組みを通じて、痴漢行為は社会問題として位置づけられるようになった。こうした流れの中、京王電鉄は、事前のアンケートで女性、男性双方の半数から賛成する意見が得られたとして、2000年12月に平日深夜に新宿駅を発つ電車で試験的に導入。翌年3月のダイヤ改正を機に本格導入に踏み切った。

私鉄の京王電鉄に続いて、JR各社は東日本が01年7月に埼京線で導入に向けた試験を実施。さらに、警視庁が都内を走る鉄道事業者に要望書を提出したり、与党・公明党が署名運動を展開。現在では、札幌市の市営地下鉄から福岡県を走る西日本鉄道まで、さらには高速バスへと全国各地で設置が進んだ。

Getty Images

男性差別との指摘も 任意乗車で反対の意思表示も

日常生活の中で定着した女性専用車両が痴漢被害の防止に貢献しているとの見方の一方、否定的な意見も根強い。男性が性犯罪の被害者になる可能性が考慮されていないこと、女性専用車両に乗車できないデメリットなどを挙げ、“男性差別”とする視点だ。

実際にトラブルにつながった例もある。2017年3月には名古屋市交通局と市営地下鉄東山線の約20駅に対し、廃止を迫る脅迫文とともにガソリンとみられる少量の液体が届けられた。

反対の立場の人が展開してきたのが“任意乗車”だ。反対の意思を示すために、男性が女性専用車両に乗り込むことで、18年2月には通勤時間帯の東京メトロ千代田線で、男性3人が駅員の降車するようにとの求めに応じず乗車を続け、約15分の遅延が生じる事態となった。

女性専用車両は鉄道各社が自主的に導入を進めていった経緯もあり、男性が乗車することの罰則を定めた法律もない。ネットでは、任意乗車を進めるグループへの反対意見も根強く、導入から20年が経った現在も議論は平行線のままだ。

しばしば、「男女平等に反する」という指摘に対して、解決策として挙げられるのが男性専用車両の新設だ。大阪市交通局(当時)や西武鉄道、都営地下鉄には要望が寄せられたり、検討課題となったりしたものの、実現には至っていない。

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