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からあげクンがあえて「鶏ムネ肉」を使うワケ

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「チーズ」は定番化するまで10年かかった

第一号のレギュラーが出た後、88年にレッド、94年にチーズを発売。安定した人気を誇る3品を定番化し、その他、限定販売の「第4フレーバー」を出し続けている。フレーバー開発には、いくつものターニングポイントがあった。ざっくり記録したい。

〈バージョン1〉
90~2000年初め……試行錯誤してレギュラー、レッド、チーズを基本商品に決定。チーズは何度か発売したものの、定番化するまで10年かかった。

〈バージョン2〉
2005年……地域限定フレーバー販売開始。「愛・地球博」の開催に合わせ、愛知県で手羽先味を販売。

〈バージョン3〉
2007年……映画やアニメなどとのコラボ作戦を解禁。初めて映画『スパイダーマンⅡ』とタイアップし、刺激的なブラックペッパー風味に。

〈バージョン4〉
2015年……1.4倍大きい「でからあげクン」を発売。以降、不定期で販売。

〈バージョン5〉
2019年……新しい技術で具材を入れられるように。5月に「あらびきペッパーマヨ味」を発売。以降、不定期で販売。

ファンを巻き込む力を持っている

その他、爆発的に売れたものは、2011年に日本唐揚協会監修で作った第1弾「宇佐しょうゆダレ味」、第2弾「名古屋手羽先ダレ味」、第3弾「中津しおダレ味」や、12年、100種類目のフレーバーを記念して出した、食べるまで味がわからない「?はてな味」といった“企画モノ”だそうだ。

「はてな味は、社内でも正解を数名しか知りませんでした。でも、すでにツイッターが普及していた時期で、『これ、カルボナーラ味じゃん』←正解。とか出回ってしまい、瞬く間にバレてしまいましたね。こうしていろんな企画をしても、お客さまがおもしろがってノッてくださる。からあげクンの強さは、ファンを巻き込む力なのかもしれません」(友永)

確かにそうだ。ローソンが得意とするSNSで情報発信すれば、必ず予想以上の反響が湧く。販促担当も、さぞ楽しいだろう。2019年6月末現在、からあげクンフレーバーは258種以上にも上っている。

「カレー味」を即撤収した理由

しかし、こんなに多くのフレーバーを作るニチレイフーズは大変だったろう。

「新たなフレーバーを作り出すのは困難の連続ですが、からあげクンは弊社にとって、ローソンさんのお店を通じたお客さまとの絆として大変重要な存在。これからも新しいことに挑戦したい。直近は、限定販売フレーバーの幅がさらに広がり、最近では那覇空港限定A1ソース味(17年)、新千歳空港ガラナ味(18年)など、珍しい味も出しました」(太田)

こうした作り手のプライドはもちろん、ローソンの店と本部が一体となって楽しもう、盛り上げようとする姿勢が、長年、からあげクンを高く羽ばたかせている原動力だろう。

“からあげクン史”は、これだけではない。決して順風満帆ではなかったことも正直に残しておきたい。失敗も多々あったそうだ。超がつく売れ筋のため、新作フレーバーがコケた時、社内に走る衝撃はハンパない。

「最初の大失敗は、まだチーズが定番になる前、カレー味を出した時だと聞いています。衣にカレー粉を混ぜたわけですが、揚げると店内にカレーの匂いが充満してとんでもないと、即撤収したそうです」(友永)

「衣サクサク」「モモ肉に変更」は売れなかった

当時加盟店は相当ザワついたことだろう。また、果敢にリニューアルしようとしたことが大いに裏目に出たこともあった。「衣をサクサクにしてみた」(01年)、「ムネ肉からモモ肉に変えたみた」(03年)も、「売れなかった」という。食べ応えがあって、ジューシー、そして薄ごろも。ずっと価格は当初と変わらず200円(税抜価格)のまま。令和へと時代が移っても、からあげクンは変わっちゃいけないのだ。

ただ同時に、第二のからあげクンを目指したチキンメニューもヒットへの道を走ってきた。2005年11月、フライドチキンからコンビニ業界で初めて骨を抜いた「ジューシーフライドチキン(骨なし)」を発売。その後、進化して、09年にスパイシーな骨なしフライドチキン「Lチキ」が誕生。発売1年で約8000万食を売り、念願かなって定番になった。後日、Lチキを挟む「バンズ」まで別売りされたから、かなり攻めていた。

13年には、「ローソン史上最高品質」を謳(うた)う骨つきの「黄金チキン」が仲間入り、このあたりからは、からあげクンとはやや別路線の「食事チキン」が台頭してきたように思う。

ふだんのおかずは「Lチキ」や「鶏から」(12年発売)、クリスマスなどのハレの日は「黄金チキン」を仲間と囲む、というスタイルが定着してきた。


吉岡秀子『コンビニ おいしい進化史 売れるトレンドのつくり方』(平凡社新書)

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吉岡 秀子(よしおか・ひでこ)
コンビニジャーナリスト
関西大学社会学部卒業。会社員生活を経て、フリーランス記者として独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を各メディア、講演などを通じて発信中。近著に『コンビニ おいしい進化史』(平凡社)。その他著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)など多数。
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(コンビニジャーナリスト 吉岡 秀子)

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