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からあげクンがあえて「鶏ムネ肉」を使うワケ

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1986年にローソンが発売した「からあげクン」は、累計販売数32億食以上のロングセラー商品だ。多種多様なフレーバーを発売してきたが、鶏のムネ肉を使い、店頭で揚げるという原点は変わらない。コンビニジャーナリストの吉岡秀子さんが、30年以上に及ぶ「からあげクン史」を紹介する――。

※本稿は、吉岡秀子『コンビニ おいしい進化史 売れるトレンドのつくり方』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。


コンビニエンスストア「ローソン」の看板=2019年12月23日、北海道札幌市 - 写真=時事通信フォト

老若男女に愛される万能選手に変身

業界トップの人気を誇るキャラクターといって間違いない。ローソンの「からあげクン」だ。1986年4月15日生まれ。累計販売数32億食超え(2019年6月現在)という実績は、ただモノじゃない。つねづね不思議な存在だと思ってきた。からあげクンの成長を見てきた同社の中食商品本部・本部長補佐の友永伸宏も「からあげクンほど、ファン層が劇的に広がっていった商品はない」と、話す。

発売当初のコアターゲットは若い男性。おやつに食べられるスナックメニューという位置づけで登場した。それがぐんぐん進化を遂げ、平成後半で根づいた糖質制限ダイエットブームの追い風もあって、すっかり「チキン=ヘルシー」と、から揚げのイメージは様変わり。実際からあげクンは一食約200キロカロリー、糖質8グラム(5個入り ※チーズは9グラム)なので、ごはんの代わりに食べるという人も多い。

また5個入りという数も客層を広げた。家族や友だち間で「シェアして食べるスタイル」が重宝がられ、特にお母さんが小さな子どもと一緒に楽しむケースが多いという。今やからあげクンは老若男女に愛される、「おやつ&おつまみ&おかず」として活躍する万能選手に変身している。

開発・製造はニチレイフーズが行っている

からあげクンは30年以上も前、どのようにして誕生したのか? 開発・製造を担当し続けているニチレイフーズの広域営業第一部長、太田崇は、80年代のマーケットの様子をこう話す。

「1980年前後、鶏のムネ肉はパサパサしていると消費者にあまり好まれていませんでした。とはいえ、高たんぱく質で低カロリーです。食べやすさや味付けの工夫次第でもっと好きになっていただけるのではないかと、社内でいろいろと開発を進めていたのです」

ローソンとタッグを組む前は、スーパーや弁当チェーン向けにから揚げの“代替品”のようなイメージで販売をしたという。でも、「鶏ムネ肉のから揚げ」は、なかなか定着しなかった。マクドナルドのチキンマックナゲットが全国販売を始めたのは84年。「鶏ムネ肉のから揚げをつまむ文化」は、日本にまだ定着していなかった。

「ですが、ローソンのご担当者から“スナックタイプのから揚げがほしい”とお声がけいただき、からあげクンの販売がスタートしました」(太田)

ローソンは、コンビニ業界の先陣を切って、79年に店内にフライヤーを設置していた。当時販売していたのは「アメリカンドッグ」「ジャンボフランク」と、子どもや男性にウケそうなものり。コンビニという業態が「若い男性の店」だった時代性がよくわかる。

パッケージが「おやじ」から「妖精」に

「フライヤーを置いたのは、できたてのおいしさをお客さまにご提供したかったからです。その中で当時の担当者は、まったく新しいスナックメニューを世に出したいとニチレイフーズさんと組んだのでしょう」(友永)

当時は若者ウケをねらって英字がプリントされたおしゃれなパッケージだったが、実はニチレイフーズ社員が「英字新聞を折って作った」ものだったという。微笑ましい話だ。

それが90年に「おやじイラスト」のパッケージになる。思えば平成に突入していた90年は、バブル崩壊前夜だ。イケイケのサラリーマンをねらってのデザインだったのかもしれない。そして、2003年に今の「ニワトリのように見えて、実は妖精のキャラクター」へと変わっていった。このキャラクターになったのは、たしか加盟店らの投票で決まったと記憶している。かわいらしくて、一層、子どもや女性ファンが増えた。

店頭で揚げるから、ジューシーになる

最初から売れた理由は、やはりおいしいからだ。基本のレシピと価格は、なんと今でも変わっていない。

ニチレイフーズによると「国産鶏ムネ肉が本来持つ肉のおいしさにこだわっている」という。そして最大の味のポイントは、店内で揚げるひと手間につきる。

「コンビニエンスストアのファストフードは忙しい消費者に手早く商品をご提供しないといけないため、短時間調理が求められます。そのため工場で商品を完全に加熱してしまうのが一般的ですが、からあげクンは鶏肉のジューシーさを保つためにお店で最終調理をします。お店で丁寧に調理してくださっているおかげで、鶏肉の旨みが凝縮したから揚げができるのです」(太田)

今はどのチェーンでもフライドメニューは定番だが、パイオニアであるからあげクンを「調理する」手間を惜しまなかった加盟店の努力あってのヒットだ。利益を生む“妖精”には違いないが、売れすぎた時は大変だったことだろう。

さらに「(からあげクンが)ムネ肉だからこそ、成長できた」と、友永は分析する。

「味の濃いモモ肉と違い、ムネ肉は繊細な味。だから味つけしやすいんです。からあげクンがいろんなフレーバーにチャレンジし、いつの時代もお客さまにおいしさと楽しさを提供できてきたからロングセラーになりえたと思います」

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