記事

自転車のサドルを159個盗んだ男、性的な動機を疑う検察にガチ反論「乗り心地しか見ていない」

1/2

裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは自転車のサドルを盗んだとして窃盗の疑いで逮捕された羽鳥秋夫被告人の初公判。2019年12月20日に行われました。羽鳥被告人の自宅から押収されたサドルが159個もあったため、ネットがザワついたニュースです。

下着泥棒の自宅を家宅捜索した時、盗まれた下着を並べることがありますが、今回の事件で警察は、押収した159個のサドルを色が濃いものから順番にグラデーションで並べて話題になりました。

下着泥棒が盗んだ下着を並べる時は、手前に派手な下着、奥にベージュなど地味な色の下着を置くのですが、並べ方を工夫することによって、見た目のインパクトが強くなり、ニュースで大きく報じてもらえるケースがあります。また「うちの署はこれだけ仕事をしているよ」と都民や他の署へのアピールにもなるのだと思います。見事なサドル並べの画像はここに掲載するわけにいかないため、気になる方は画像検索をしてください。確かに壮観です。

サドルを盗まれたトラウマから自転車に乗れなくなった被害者


話を事件に戻します。被告人は62歳で無職。起訴された事件は2件です。1つは去年8月29日、夕方6時52分、蒲田にあるコンビニ前の路上に停めてあった女性の自転車からサドル1個、1000円相当を取り外して盗んだ容疑。もう1つは去年9月22日、夕方6時32分に洋服店に駐輪してあった女性の自転車からサドル1個、こちらも1000円相当を取り外して盗んだと。これによりサドルの値段が1個1000円ということが分かりました。

ネットでは話題になった事件でしたが、傍聴人は11人程度とガラガラでした。

検察官の冒頭陳述です。

被告人は一人暮らし。高校卒業後、飲食店を中心にアルバイトを転々とし、犯行当時も飲食店で働いていました。罪は認めていて、取り調べに対しては1〜2年前からサドルを盗んで自宅に保管していたと供述。起訴された2件ともサドルを物色している時に女性の自転車を発見して盗んだと話しています。逮捕されたのは10月1日。警察が被告人の自宅を家宅捜索したところ、159個のサドルがあったため押収しました。

被害者の年齢について言及はありませんでしたが、被害者の親が取り調べを受けているため恐らく10代だと思います。「娘は自転車に乗るのが怖くなって、普段足を運ぶ場所まで徒歩で行くようになった」という証言もあります。トラウマになっていますね。もう1件の被害者も「サドルを盗まれている間、自転車に乗れなかった。何に使うのか分かりませんが気持ち悪い思いしかありません」と述べています。

2件目の被害者の年齢も分かりませんが、こちらは息子が取り調べを受けており、被害者は高齢の女性だと思います。その息子が「前カゴにサドルをたくさん入れている男がいた。サドル泥棒だと思って声をかけたら、男はカゴの中からサドルを1つ取り出して、こちらの自転車にサドルを取り付けて逃げていきました。ただそれは違うサドルでした」と話しています。

報道によると、防犯カメラの映像を元に被告人を逮捕していますが、被害者の息子も被告人を目撃していたんですね。事件の発生時刻が夜中や早朝ならまだ理解できますが、夕方だと聞いて驚きました。夕方に堂々とサドルを盗んでいたため、違法駐車を取り締まる業者と勘違いした人も多かったのかと思われます。堂々と犯行を行ったのでしょう。

酔っ払うとサドルを盗みたくなる衝動に駆られた


取り調べに対して被告人は「自分に合ったサドルが欲しかったからやった」と供述。サドルは自宅に積み上げられていて「達成感がありやめられなくなっていた」と話しています。コレクションみたいな感覚だったのかなという印象です。

弁護人は証書を4枚持参。情状証人が来るわけでもなく被告人質問からでした。

弁護人「取り調べでは真実を話しましたね。なぜこんなことをやったんですか?」
被告人「元々、自分のサドルが盗まれたのでその腹いせというか。大人気ないですけど」
弁護人「サドルは転売目的ですか?」
被告人「それはないです。ずっと家に置いていました」

検察官はサドル1つに1000円の価値があると話していましたが、買い取り先があるのか疑問です。DVDとか本を盗んで転売しているパターンだと「職業的だ」と非難されることがあるため、弁護人としては「そうじゃないんだ」と言いたいのだと思います。でもサドルを買い取ってくれる所はなかなかないでしょう。

弁護人「自宅に置いていたそうですが、保管していたんですか?」
被告人「入り口に積み上げていました」
弁護人「何かに使っていたということですか?」
被告人「いいえ。盗んで玄関に積み上げていただけです」
弁護人「犯行当時、酒を飲んでいたということですけども、毎回ですか?」
被告人「そうですね。ただ最初は腹いせでした」
弁護人「飲まなければ盗みたいという気持ちは出てきませんか?」
被告人「まったく出てきません」
弁護人「ということは、お酒を飲むとサドルを盗みたくなるんですね」
被告人「そうです」

酔って泣き出すとか暴れるというのは聞いたことがありますけど、サドルを盗みたくなる酒癖もあるんですね。

弁護人「今後、お酒はどうするんですか?」
被告人「懲りたので一切やめようと思います」
弁護人「盗む時は自転車が停まっている場所を狙うなど計画を練っていたんですか?」
被告人「いえ、自転車に乗りながら物色をして、気になったものを盗んでいました」
弁護人「ということは行き当たりばったりなんですね」

次が特に興味深いポイントでした。

弁護人「被害者の気持ちは考えました?」
被告人「40日間ずっと考えていました」

恐らく逮捕されてからですよね。

弁護人「逮捕前は?」
被告人「家に入ると、『あー、またやってしまった』と思いました」

犯行時は迷惑をかけている認識がなく、帰宅すると冷静に戻ったようです。

弁護人「飲食店を解雇されていますが、今後仕事は?」
被告人「一日でも早く復帰したいです」
弁護人「もうやらないですね?」
被告人「鉄格子と手錠には懲りましたので」
弁護人「サドル以外も盗まないですね?」
被告人「はい、金輪際やりません」

鉄格子、手錠、金輪際とすべてのキーワードが鉄というのもなんだか…。

あわせて読みたい

「裁判」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    れいわの甘い危機管理が致命傷に

    田中龍作

  2. 2

    謙虚さに欠ける泉佐野市長の言動

    PRESIDENT Online

  3. 3

    赤ちゃんポスト 預けた母の苦悩

    NEWSポストセブン

  4. 4

    飲み会解禁する会社の多さに衝撃

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

  5. 5

    橋下氏「熊本知事の後悔分かる」

    PRESIDENT Online

  6. 6

    供託金300万円没収も「勉強代」

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  7. 7

    日本にも「テスラ」は出現するか

    ヒロ

  8. 8

    PayPayに追随した電子決済の末路

    PRESIDENT Online

  9. 9

    国際法秩序破る中国に世界的反発

    WEDGE Infinity

  10. 10

    小池氏圧勝の片棒を担いだテレビ

    マガジン9

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。