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『国内海外 安全保障なう』 第1回 尖閣諸島問題から日本のシーレーンをどう考えるか?

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佐々淳行氏。(撮影:野原誠治)
佐々淳行氏。(撮影:野原誠治) 写真一覧
ブロガーのやまもといちろう氏が、初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏、『ニューズウィーク日本版』元編集長の藤田正美氏と共に、国家論を軸に、外交、防衛、治安維持、食糧問題(TPP)・エネルギー問題などを考える新シリーズ国内海外 安全保障なう。 記念すべき第一弾である今回は、「尖閣諸島問題から日本のシーレーンをどう考えるか?海外保安庁の政策アドバイザーでもある佐々氏から、貴重なお話も飛び出しました。

■出演
やまもといちろう氏(ブロガー、個人投資家、作家)
佐々淳行氏(初代内閣安全保障室長)
藤田正美氏(ジャーナリスト、『ニューズウィーク日本版』元編集長)
アシスタント:木次真紀(元山陰放送アナウンサー)

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◆尖閣諸島問題は閣議決定を経ず処理された



山本:現在進行形で色々あると思いますが、尖閣諸島問題、この重要なところのど真ん中に佐々先生、いらっしゃって。

2010年9月7日、沖縄県の尖閣諸島付近で、領海侵犯する形で中国の漁船が入って、海上保安庁の巡視船が出まして、そのあとsengoku38、一色さんですね、お話が一連としてありまして、佐々先生は一色さんのことについて支援されて、起訴するべきではないと強く主張されていて、最終的には不起訴という形で着地しました。
そのあと石原都知事が尖閣諸島の土地を買われる問題をアメリカのヘリテージ財団の講演会でされたというところも、重要なポイントではないかと。

藤田:今回、一番問題だったなというのは、最終的な決着の仕方、仙谷官房長官が那覇地検の決定を了とする、あの不思議な言い方ですね。

山本:仙谷さん、当時はかなりテンパってたという証言が伝えられています。問題の所在を仙谷さんは全て了承していたわけではない、あとで周囲の人から聞かされたという、不思議な、なんでそんな人が重要な役職についてんのか?っていう、関連法案を含めて法規に対する考え方だとか、認識が甘かったんではないかなぁと。

藤田:着地のさせ方を誰も考えてなかったんではないかと思いますよね。

山本:落としどころがないといいますか、起きたことを脊髄反射し続けてきた結果、那覇地検の判断をそのまま政府の是としてしまった不思議な話ですけど。

藤田:仕掛けとしては、政府の意向があって、那覇地検がそういう判断をして、呑むという形だったんだろうなという。 フジタの社員4人が拘束、中国のホテルへの軟禁ということですが、あれが非常に都合良く起こった事件で、中国としてはたまたま利用したのか、紛れ込んでしまったのか、それとも、元々何か仕掛けがあったのか?外務省の態度が、あの4人にかなり影響されたと聞いていますが。

佐々:4人の人命に関わるといったことで、仙谷さんが左右されましたね。違うんですよ。 当然中国もやる報復措置で、それでもって条件づくりするわけでしょ。船長の超法規無罪釈放を勝ち取るためには。あの時にはあの4人はかわいそうに、ODA実施の、毒ガス処理で行ってた人達でしょ。向こうの国益に合致する人の身柄をおさえるとは何事だ。しかもあの罪状はヘタすると死刑判決がでますから。

藤田:軍事施設の撮影ですよね。

佐々:そうそう、尖閣諸島に来た船長の罪と、あの4人にかかった国家秘密法違反。人命にかかわっちゃうかもしれないと、いうことを誰かが言ったんだよ。で、仙谷さんが動揺したんだよ。

あの時、総理と所管大臣である外務大臣が国連総会でニューヨークにいました。総理と担当の外務大臣が不在の時にね、仙谷さんには内閣法12条しか権限がない。なんて書いてあるかというと、内閣官房長官は、内閣の事務を処理すると、消極的権限争議を持ってるんです。消極的権限争議っていうのは複数の官庁が調停を官房長官に求めてきた時に、官房長官がしていいとか言うわけです。ところが仙谷さんには権限がないんです。総理の専権事項、あるは外務大臣の方がより権限が大きいんだけど、さらにいいますと、超法規的処置をとるには閣議決定がいるんです。例えばミグ25の時に…。

藤田:ベレンコ(※中尉亡命事件)をアメリカにね。

佐々:アメリカに亡命させました。決めたのは閣議です。それからミグ25を返還しようというのも閣議です。重要な事は日本の危機管理法令と言おうか、あるは日本の行政と言おうか、満場一致の内閣法第14条、閣議決定なんですよ、総理にだって決定権はないんですからね。それを仙石さん、何の権限であれやったの?全部自分で仕切っちゃったでしょ。ニューヨークと電話連絡したと言ってますけどね、罰則はありませんけど、僕らから言わせれば内閣法違反。政治責任上、彼は当然問責決議。

山本:それは自民党もスルーしちゃいましたよね。

佐々:自民党ってのもダメなの。国家危機管理法令ってのはないに等しかったです。例えば尖閣列島で、何を根拠にあの船長を追跡したかというと、漁業法違反なんです。領海侵犯罪っていうのは日本にはないんです。領空もありません。尖閣諸島に仮に上陸したとしても、領土領空の侵犯、主権侵害という国家犯罪なんです。あの時、漁業法違反でやってるんです。

山本:武力事態対処法(※『武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律』)ということですね。

佐々:実は、自民党で、これを最初にやり始めたのは安倍晋三さん。官房副長官をやっておられて、国家犯罪、国の領域侵犯に対する犯罪の取締、それを国家主権侵害としてやるというね。日米安保条約第6条に基づいているのね。朝鮮半島・台湾・フィリピン、これを極東という概念で規定して、ここで紛争が起こった時に、在日米軍が出動します。日本の自衛隊は出動しません。集団的自衛権がぶつかるということでね。だけれども後方支援をしましょうと。その代わり、基地の提供は条約上の義務でやりますと。こんなこと決めてるのって、アメリカは20くらい軍事条約を持ってますけど、条約上の義務ってありません。 例えば朝鮮半島が緊張したら、まず何をするかというと周辺事態法。日米安全保障条約の第6条、アメリカ軍が行動を起こした時、日本はどういう後方支援をするかというところからきてるの。でもそれはおかしいではないかと言い出したのは、確か、民主党の前原さんたちだったの。

山本:前原さんはまともなのか、まともじゃないのか、よくわからない。

佐々:あのグループが武力事態対処法をやろうって。裏をやったのが当時の官房副長官だった安倍晋三さん。それで公明党もみんな賛成してね、97%くらいの投票率で。反対したのは共産党と社民党だけ。38票だけだったの。武力事態対処法が通ったんです。そうすると前原さんが国民不在ではないかと、米軍と日本のこと言ってるけど、国民の保護がないと。猛烈に反対して、それに安倍さんたちが賛成して、公明党は冬柴鉄三さんでしたかね、賛成して、それで国民保護法(※『武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律』)ができたの。

山本:鉄三さんの件は是非ゆっくりお話聞かせて頂きたいくらい。

佐々:国民保護法ってのを見てご覧なさいよ。あれは私が担当していた有事法制の第3分類(※自衛隊・米軍の行動に直接関わらないが、国民の生命・財産を保護するための法制)、どこの省庁も担当していないというやつ、これを元々言い出したのは、中曽根さんと後藤田さん。安保室長としてオマエ仕切れってワタシ言われて。各省の調整をやって。竹下さんの時にほとんど出来上がっていたんだけど、倒れて。お蔵に入ってたヤツを、安倍晋三さんが出してくれたの。やったのは小泉純一郎だったけどね。

山本:あれもどうなんだっていう通し方でしたよね。

佐々:戦後の日本の危機管理体制でね、たとえば空襲警報っていうのを誰が出すのか、全く決まってなかったの。考えちゃいけなかったの、空襲なんて。次に避難誘導。老人ホーム、幼稚園、避難させろって言ったって誰が?自治省がやるんですか、あるいは消防?警察?自衛隊ですか?どこもやらない。緊急輸送、この間の(福島原発の時の)15万人も避難させるとなったらね、10万台くらいの輸送車がいるんですよ。どこがやるの?運輸省?警察?どこもやらない。

さらに途中病人、けが人が出たりする国家非常事態があると、トリアージ(※負傷者を重症度・緊急度などによって分類し、治療や搬送の優先順位を決める事)といいますけど、緊急治療、世界中やってんだけど、日本はやってないんです。厚生省じゃないの?保健所じゃないの?っていうことになる。

山本:原発の時もそうだったんですか。安全であることが前提で、安全が損なわれた時に、どうするかっていう議論が一切ないので、法制もなければ、対応できる官庁もない。

佐々:それはね、戦後マッカーサーの、まさに体制作りだったのよ。地方分権にしちゃって、危機管理の仕事を警察も消防もみんな仕事してるんですよ、県知事というのは地方自治の起点なんだけど、さらにその下に、当時3000くらいありましたかね、市町村に権限を与えたんです。今度の東日本災害の最高責任者は官房長官の枝野さん、危機管理法令上は、彼なの。昭和36年にできたマッカーサー法令ですよ、地方自治法に基づくところの、災害対策基本法っていうのを適応させたんですよ。そうすると責任者は市町村長なんですよ。

市町村長に原子力発電所の事故の処理をやらせたのが、かの有名な1999年の東海村JOC原発事故だったのよ。東海村の村上(※達也)村長さんってのはね、3万人の避難者の責任者だけど、彼にはそんな能力も権限もなにもないの。それで橋本(※昌茨城県)知事に上がるわけ。橋本さんが、えらい怒ってね。日本には国家ってもんはないんですかって。私に全部やれっていうのはおかしいってね。あの頃から問題になってたのが、それなの。

山本:結果として、そこからの見直しもされずに。事態認定に関しては穴がいっぱいあるという状態なんですね。

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