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「帰る場ない」、有志弁護士が虐待受けた10代を支援

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虐待や非行、貧困などの背景から家に帰ることができず、緊急保護される子どもたちがいます。しかし彼らは、そのような状況に陥っても自分を責め、親に罪悪感を抱くといいます。大阪で居場所のない子どもたちのためにシェルター(緊急避難所)を運営するNPOに話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

居場所のない未成年の女性を対象に、シェルターを運営

シェルターの個室。「ここは自分だけのプライベート空間です。安心できるという子どもの方が多いのですが、物理的に安全な場に居ても、虐待を受けていた家での感覚が不意によみがえるときがあり、怖い、落ち着かないという子どもも少なからずいます」(森本さん)

NPO法人「子どもセンターぬっく(以下「ぬっく」)」は、虐待や非行、貧困などの背景から家に帰ることができず、居場所のない未成年の女性を対象に、シェルター(緊急避難所)を運営しています。

弁護士を中心に運営されているこのシェルターは、特徴として入居者一人ひとりに担当弁護士がつき、必要に応じて法的な対応をとったり、代理人として児童相談所や親権者と交渉したりもしながら、次の居場所探しや自立支援を行っています。

特に最近注力しているのが「シェルターを出た後の子どもたちの行き先」の確保だといいます。

「シェルターはあくまで短期滞在の場所なので『出先の確保』を目標とせざるを得ません。シェルターからの退居は終わりではなく、むしろ始まりであると認識しています」と話すのは、「ぬっく」理事長であり、弁護士の森本志磨子さん(48)。

「子どもセンターぬっく」の事務局のある大阪・西天満の葛城・森本法律事務所前にて。理事長の森本さん(中央)、清水さん(右)、事務局スタッフの田辺さん(左)

「退去後に安定した生活があるわけではないので、退去後も適宜連絡をとり、面会するなどして細く長く支援を継続することが大切」と指摘します。

そのための一歩として、「ぬっく」は2020年春に自立援助ホームの開設を予定しています。「衣食住を共にするホームから進学や就職をし、社会生活を送りながら、自立した日常生活をしていく力を身につけることを目指し、生活全般を支援していきたい」と森本さんは思いを語ります。

虐待や性暴力などの被害に遭っても、「自分が悪い」と感じる子どもたち

シェルターのリビング。「入居している子どもたちが一緒に過ごす場所です。テレビを観たり、漫画や本を読んだり、音楽を聴いたりもするし、編み物やミサンガ、羊毛フェルトなどの手芸、トランポリンをしたりソファーでゆっくり話したりもします」(森本さん)

シェルターに保護されるのは、どのような子どもたちなのでしょうか。

「皆、本当にシビアな虐待を受けてきています。身体的な暴力、暴言、放任(ネグレクト)、経済的搾取、性暴力などその態様は様々ですが、多くの子どもに共通しているのは、愛されたいはずの保護者から自身の意思や気持ちをことごとく踏みにじられ、自分の意思や気持ちに反した言動を強いられてきているということ」と森本さん。

「そのために、自分の意思や気持ちすらわからず、生きている意味もわからなくて自殺念慮に囚われ、自傷や大量服薬や男性依存などによって現実のつらさから一時的にでも逃れようとすることもある」と指摘します。

「『なんで生きる必要があるん?』『なんで自分を大切にしないとあかんの?』という子どもは、本当に多い」と話すのは、「ぬっく」の運営委員であり、弁護士の清水さやかさん(39)。

「10代で安心できる家がなく、家を出ても行き場がない。そうなると子どもたちはSNSで居場所を探し、『おいで』と言われてついて行き、ごはんを食べさせてくれて、つらい話を聞いてくれた男性から性被害に遭っても『わかって行ったのだから自分も了解していたのだ』と、被害だとも思わずに自分を責めるのです」

「虐待を受け続ける中で『自分には何の力もない』と思い込んでいたり、束の間でも人の温もりが欲しい、その場限りの優しさとわかっていても優しさが欲しいと援助交際やデリヘルなど性産業の世界に取り込まれる場合も少なくありません。このような背景を持つ彼女たちは、シェルターに入ることもなっても『自分が悪い』『自分が選んだのだから』と罪悪感を抱いていることが少なくありません」

ひどい虐待を受けていても、深い孤独の中で、親と居る選択をする子も

シェルターで、入居者の誕生日にケーキを用意し、誕生日会を開催。「誕生日を祝ってもらったことがない、良い思い出がないという子も少なくなく、涙を流す子どももいます」(清水さん)

どんなにひどい虐待を受けていても、親と離れられないケースもあるといいます。

「機嫌が良い時に親としてごく普通のことをしているだけでも、その時のイメージが過大視され、子どもにとっては親に代わるものが無い深い孤独の中で、ひどい虐待を受けてもなかなか親から離れるという選択ができない場合もある」と森本さん。

天気の良い日は、お弁当を作って近くでピクニックをすることもあるのだそう。ある日のピクニックの献立

「ひどい虐待が日常的に続き、本人が『もうこんな親は必要ない』と子どもなりに悟って諦めの境地にまで達している場合は、親権停止など法的な手続きに一定の時間がかかることはあっても、自立へ向けて本人がなすべきことや目標設定はしやすくなり、私たちもその方向に沿って支援することができます」

「他方で、親自身の夫婦関係、妊娠・出産やその他きょうだいとの関係、家計収支の窮状等によって、日常的に虐待を振るう親でも、たまには子どもに対して優しく接したり服を買い与えたり、ごはんを作ったりすることがあります。
このように時折親が優しく接する経験をしている子どもは、親に対して両価的な感情に、より強く苛まれることとなり、自立の方向性を決めていくことが大変悩ましく、難しくなります」

弁護士として、また一人の人生の先輩として、「子ども担当弁護士(コタン)」の役割

ぬっく事務局の一室。シェルター入居の際の事前面談、相談対応、運営会議などを行っている

「ぬっく」では、シェルターの入居者一人ひとりに「子ども担当弁護士(コタン)」がつき、子どもの意思を聞き取り、専門分野である法的対応はもちろん、生活全般についても相談にのりながら支援しています。

「本来、意思を表現することは養育の中でその意思が受けとめられ、尊重されていくことで自然と育まれていくものです。しかしそのような経験を経てきていない子どもは『どうせ自分の人生は、自分の思う通りにはならない』『自分の思いを話しても仕方がない』と諦めていることが多く、なかなか自分を表現しようとしません」

「そんな中で、子どもの意思や希望なども一つひとつしっかり聞いて受けとめ、代理人としてそれらを整理し、かなえていくことに協力していくのが『コタン』の役割です。『自分で決められない』『決めたくない』という子どももいますが、いろいろと方法を試しながら、子どもが心を開いてくれるのを待ちます」

「弁護士だけど弁護士としてだけではない、一人の人として関わっている面もあります。時には『お母さんになって』『ぎゅっとしてほしい』と言われることもあります。母親代わりになることはできませんし、その深い孤独をコタンやシェルター職員だけで埋めることはできません。ただ、私たちの存在は子どもたちにとって社会とつながる窓口だと思っているので、『コタン』として、また一人の大人として、一人ひとりを様々な社会資源につなげていくことができたらと思っています」

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