記事

犯罪に甘い社会が加害者バッシングの過剰化の原因

加害者バッシング=私刑制裁ともいうべき状況が、昨今、極端にエスカレートしているように思う。許せない犯罪行為がテレビなどで明るみになると、我こそ正義といわんばかりに、バッシングが広がっていく。しかもそれがエスカレートしていき、加害者の個人情報の暴露に始まり、さらには加害者本人や家族、勤務先などへの嫌がらせなど、単にネットの文章で批判するにとどまらず、実生活上に実害を及ぼすまでに至っている。

最近ではいじめを受けて自殺した中学校に対し、「いじめに関わった生徒と教師はカメラの前で謝罪しろ。さもないと中学校と大津市教育委員会、警察を爆破する」と封書で脅迫状を送ったことで、学校が臨時休校に追いつめられる事態にまで発展している。そうしたことをモラル的観点から、「行き過ぎた」「そこまでやるな」と正論を述べるのはまったくの無駄だと思う。

ここまで私刑制裁がエスカレートする背景には、犯罪に甘い社会、犯罪を隠蔽する社会、加害者保護に偏った社会、被害者を軽んじた社会にあると思う。私刑制裁をエスカレートさせないためには、・死刑だけでなく終身奴隷刑も含めた、犯罪行為に対する厳罰化・犯罪が常態化していることへの早期の警察介入・犯罪行為を見過ごさない告発システムの3つが必要だ。学校のいじめにしろ会社のいじめにせよ、セクハラやパワハラ、ストーカー被害、ブラック企業のひどい勤務実態、企業の情報隠蔽、偽装などの法令違反が、あまりにも多すぎる。泣き寝入りが当たり前、我慢するのが当たり前みたいな状況だ。

こうしたことを告発、密告しようものなら、裏切り者扱いされるから、ひどい実態があっても誰も声をあげない。仮に勇気を振り絞って声をあげても、公的機関は腰が重く、まもとにとりあってくれない。挙句の果てに見つかったとしても、恐ろしいほどの軽い罪で終わってしまい、ほとぼりさめればまた同じことを繰り返すのが常態化している。これでは国民が怒るのは当たり前だ。ふとどきな行為をして、その場をやり過ごしてごまかそうという態度に、はらわた煮えくり返り、実生活に影響を及ぼすまでもの私刑を行うのは、正論としては許されないとしても、感情的には理解できるし、一部の人はよくやったと思っているのではないか。

犯罪行為が黙認され、被害者泣き寝入り状況で、加害者が軽い罪で終わってしまうのは、日本全般に巣食う悪しき体質だ。そうした体質をいつも残したまま、適当にあしらって終わってしまうから、いつまでたっても体質が改善しない。

たとえば原発事故で情報をねじまげ隠蔽した、電力会社や官僚は誰一人として罰せられていない。しかも未だに虚偽の報告をして、想定外の津波が悪いとしようとしている。町を殺し、多くの人を被ばくさせた犯罪行為が、ろくに罰せられることもなく、料金値上げで補填され、独占的な事業権益も手放さず、事故から1年4ヵ月過ぎた今も、のうのうと営業している不思議。法令違反しているブラック企業は数あれど、よほどひどいものしか取り締まられず、常態化している。無罪なのに証拠を捏造し、有罪にしようとした検察や警察や裁判官は、ろくに罰せられることはない。だから冤罪は繰り返されている。

明らかに悪しき行為が行われているのに、罰せられない社会。それどころか見つからなければ、何をやってもいいという雰囲気。自身の立場の力を利用し、告発しようものなら圧力をかける、とんでもない社会。ダメな奴はダメ。腐った奴はいつまでも腐っている。軽い刑だとまた同じことを必ずする。二度とこのようなことが行われないよう、徹底的に厳罰に処さなければ、いつまでたっても悪しき体質はなくならない。だから私刑制裁がエスカレートする。加害者バッシングがわっと広がる。行き過ぎた行為を肯定するわけではないが、大元の体質改善を図らない限り、モラルに訴えてやめましょうといっても、私刑制裁はなくならないだろう。

ただ私的制裁は叩きやすいところばかり狙う傾向があり、それなりの力を持ったところは叩かないというのは気になる。弱いものいじめを批判しているのに、弱いものいじめしてどうするみたいな話だ。また気をつけたいのは、私刑制裁が行き過ぎると、行き過ぎた私的制裁を行った人に、私的制裁が行われる可能性があること。いくらどうしようもない悪い奴でも、自分が犯罪行為をして罰しようとすれば、それは自らがどうしようもない加害者と、同次元になることを意味する。それと国民を怒らせるニュースが過大に取り上げられるのは、たいてい重要なニュースから目をそらせるためと、視聴率がとれるからという思惑が感じられる。叩きやすい奴を叩いてせいせいするという、マスコミ誘導の単なるガス抜きしたとしても、問題の解決にはならないので注意したい。

そのような意味で、今、盛り上がっているデモは、国民を見殺しにした原子力ムラの犯罪行為に対する、合法的な国民抗議活動ともいうべきものだが、こうした声を官僚や電力会社や政治家が無視すると、かつての「一人一殺」ではないけれど、国民の怒りが爆発し、叩きやすい相手だけでなく、強大な相手に対しても「私的制裁」が、エスカレートする可能性もあると思う。

あわせて読みたい

「いじめ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    逮捕されても臆することなく、取材を続けよう〜田原総一朗インタビュー

    田原総一朗

    07月28日 08:07

  2. 2

    東京3000人は五輪強行開催によるモラル崩壊の証。もう誰も自粛しない

    かさこ

    07月28日 08:46

  3. 3

    コロナ対策は菅内閣にも直結 東京の新規感染者数が5000人超えなら菅内閣はもたない

    田原総一朗

    07月28日 14:43

  4. 4

    ロッキンは中止する必要があったのか?〜7 /8の議院運営委員会で西村大臣に質疑を行いました〜

    山田太郎

    07月28日 09:58

  5. 5

    酷暑下の札幌五輪マラソン 市民の冷ややかな声も少なくない

    NEWSポストセブン

    07月27日 09:36

  6. 6

    「きれいごとだけでは稼げない」週刊文春が不倫報道をやめない本当の理由

    PRESIDENT Online

    07月28日 12:30

  7. 7

    中国、ロシア製ワクチンと立憲民主と共産党 まあ少し可哀想ではあるけど、ブレインが悪いのとセンスがないというだけ

    中村ゆきつぐ

    07月27日 08:26

  8. 8

    上司も部下も知っておきたい 「1on1」を機能させるためのコツ

    ミナベトモミ

    07月28日 12:00

  9. 9

    立憲民主党・本多平直議員は「詰腹」を切らされたのか?近代政党のガバナンスにおける危機感

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    07月28日 09:53

  10. 10

    西村大臣の酒類販売事業者への要請撤回 首相官邸の独断に官僚からも疑問の声

    舛添要一

    07月28日 08:34

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。