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経済犯罪の難しさ「清濁併せ呑むようでないと、サンズイはできない」は認められるのか?

カルロス・ゴーン被告の件については、彼が罪を犯したとする側と、無罪を主張する側、双方の言い分があろうかと思います。

問われている犯罪とは別に、この事件を契機に、日本の司法制度の問題点が改めて世界的に知らされたことは間違いのない事実と言えるでしょう。

今回の一連の報道で感じるのは、逮捕される立場であっても守られるべきものがあること、罪を何としても認めようとしない相手に対してどのような取り調べ手段までは許されるのか、そして、その方法は今回のような多額の費用がかかるような逃亡劇を行うような相手に有効なのか?という両面の難しさです。

2001年に発覚した外務省職員による「外務省機密費流用事件」を覚えていらっしゃますか?

この事件を扱った『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』は書籍として2017年に発刊され、

WOWOWでドラマ化もされ、現在はAmazonプライムビデオの会員であれば無料で見ることができます。

この『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』、今回のゴーン被告の問題についても考えるヒントを与えてくれるのでご紹介しておきたいと思います。

例えば、第5話では、第四知能犯三係 主任の羽佐間 克男という人のこんな発言が出てきてます。

役人なんて人種はプライドの塊だ。そういう連中に本心を語らせるには、人格を壊すぐらいガンガン攻めなきゃダメだ。

この発言に対し、取り調べ可視化など司法制度改革の推進を進めたいと考えている、第一知能犯情報係の斎見晃明は

そういう時代遅れな取り調べが、警察への不信を高めているのが分からないのか

と、このタイミングでは答えるシーンがあります。

登場人物について簡単に知りたい方はこちらをご覧ください。

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの - Wikipedia

第7話では、この機密費の事件から5年ほどの時間が経過した2007年となり、斎見は昇進して取調可視化推進室の責任者を打診される場面では一転、このような発言をする場面が出てきます。

・現場の刑事がどれだけ可視化に反対しているか嫌というほど分かっているつもり。
・捜査二課が扱う汚職などの犯罪は密室犯罪であり、証拠入手が難しいため、容疑者の自白が頼り。
・きれい事だけでは地位の高い役人のプライドを剥げないという認識が二課の刑事の拠り所。

そして、事件当時に斎見の上司であった町沢と居酒屋で事件を振り返る会話の中で斎見からはこんな言葉が出てきます。

・警視庁でも年々汚職が上がらなくなっている
・警察組織や世間が木崎(機密費事件を捜査した中心人物)のような刑事の存在(はみ出すこと)を許さなくなったせいだと思う
・サンズイの捜査には、少し濁った水の中で息をしているメダカのようなはみ出し刑事と、その無茶をあえて見逃すいい上司が必要なんです。

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』の著者である、清武 英利氏へのインタビュー記事ではこんな部分があります、

汚職を追った「はみ出し者」二課刑事たち ぶつかった警察組織の変貌(清武 英利) | 現代ビジネス | 講談社(2/4)

汚職事件の捜査に関して言えば、3年をかけた取材期間のうちに話を聞いた捜査関係者のなかで、「汚職がない世の中になった」と信じている人は見当たりませんでした。

一方で、近年は「この事件は筋が悪い。着手は難しい」と及び腰になる警察幹部や検察官が増えているのだということが、次第に分かってきました。

では、幹部たちは何を問題視するのか。汚職事件の摘発には、業界内での噂や、出所を公にできない情報が欠かせません。そうしたものがきっかけとなって捜査が始まり、厳しい取り調べによって裏付けを得て、立件する。それが、かつての汚職捜査のやり方でした。

そうした情報収集のために、二課の刑事たちは何をしていたか。不動産業者や国会議員の元に足しげく通ったのはもちろん、談合屋や、自分が贈賄で捕まえた業者と親しく付き合い、ネタ元にするような刑事もいたのです。「清濁併せ呑むようでないと、サンズイはできない」という証言もありました。

しかし、捜査の可視化が求められ、情報提供者との関係もクリーンであることが求められるようになってきた中で、社会規範すれすれのところで疑惑をキャッチすることは、許されなくなってきた。情報の一元管理が求められ、捜査員がどこで誰に会って、何を聞いてきたか、つまびらかにせよという警察組織の管理化が進んでしまったのです。

メダカは、少し濁った水の中でこそ、活発に泳ぎ回れますよね。それと同じように、官僚組織や世間から見て「はみ出し者」であるような二課の刑事がいても、それをあえて見逃して、うまく仕事をさせるような上司がいなくなってしまった。

繰り返しとなりますが、仮に何らかの容疑が掛けられることになってもその罪が確定するまで基本的な人権は守られるべきです。

「日本の有罪判決率は99.4%」に関連する意見も交錯している状態ではありますが、決められたルールを守ることが最優先となり、インタビュー記事にあるように、捜査することに対して及び腰になるケースが増えるのも大きな課題ではないでしょうか。

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