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現場からはどうすることもできなくて

 青菜は男に見せるな――これは私が会社で働く上での座右の銘です。茹でる前の青菜は嵩張って大きく見えるが、茹でると嵩が減ってしまう、この事を知らぬ男には、無用の疑問を抱かれてしまうため、茹でる前の青菜は見せない方が良い、そういう意味のことわざですね。青菜も仕事も同じ、男も会社の偉い人も同じですから、今なお現代に通用する言葉だと思います。

 もう一つ、大事にしている格言があるとすれば「見切り千両」辺りでしょうか。早期に手放すことで損失を最小限に抑えることの価値を説く言葉ですけれど、残念ながらこちらの方は、自分自身で実践する機会に恵まれません。私の判断で損切りすることができたならば、ずっと良い結果に至ったであろうと確信する場面は数え切れないほどあるのですが……

 少なからぬ職場では、ダメ出しや撤退の判断が、上位役職者の専権事項とはなっていないでしょうか。「下」あるいは「実務者」「現場」からの提言が上長や役員に一蹴される一方で、「上」からの馬鹿げた提案を「不可能です」「全く現実的ではありません」と断ることは許されない、それが組織の当たり前として受け入れられているところもあるように思います。

 何故「上」の言っていることが実現不可能であるか、これを実務者がいかに詳細に説明したところで、多くは受け入れられません。だいたいの場合は「それをなんとかするのが仕事だろうが」「できない理由を言うな」で済んでしまうわけです。だから結局は決定権を持たない側が折れ、「できます」「やります」と回答して終わります。結果は知りません。

 ダメ出しが上位役職者の専権事項になっている限り、例えば組織の偉い人が「アメリカと開戦する」と決めれば、それはもう実行されるしかなくなってしまいます。「下」から何を言っても意味はなく、いかにしてアメリカに勝つかを考える他ない、「やります」「できます」と言うだけが選択肢となる――まぁ昔も今も根本的な違いはないのでしょう。

 相手よりも強い立場にあるならば、根気よくダメ出しを続けていくことで、都合の良い報告を引き出すことは可能です。実態通りの絶望的な報告にも、粘り強く「なぜできないんだ」と結果が出ない理由を一つ一つ否定していくことで、最終的には「できます」という回答を引き出す、そういうのに長けた人も多いことでしょう。ただ、それで評価を高めることは可能でも、組織に利をもたらせるかは全く別問題ですが。

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