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【策略のメーガン妃】エリザベス女王を出し抜いた「王室メンバー引退宣言」の真相 - 谷口長世(国際ジャーナリスト)

 1月8日は、エリザベス女王(93)の70年近い在位中、最大の憤怒の日として記憶されるだろう。この日、ハリー(ヘンリー)王子とメーガン妃は、高位王室メンバー引退宣言をインスタグラム上に電撃発表し、女王はテレビニュースでそれを知った。チャールズ皇太子もウィリアム王子も寝耳に水だった。

【写真】クリスマス演説を行うエリザベス女王の机の上からメーガン夫妻の写真が消えた

1月9日、メーガン妃夫妻の英王室引退「MEGXIT」の見出しが躍る英国大衆紙「サン」を手に、バッキンガム宮殿前から中継するテレビリポーター ©アフロ

女王との関係はもはや修復困難か

 女王は怒りを露わにはせず、「サセックス公爵(ハリーとメーガン)夫妻との話し合いは初期の段階だ。異なる手法を取りたいとの彼らの願望は理解するが、吟味には時間が要る複雑な問題だ」との声明を王室報道官に出させた。すると間髪を入れずメーガン妃は引退条件の交渉をハリー王子に任せ、カナダに発ってしまった。女王と2人の関係はもはや修復困難なノーリターンの状態に陥った。

 女王の生涯は波乱に満ちている。英国王エドワード8世が米国のシンプソン夫人との恋を成就するため1936年末に退位し、弟が国王ジョージ6世となり長女のエリザベスに次期女王の運命が巡ってきた。第2次大戦中、ナチスドイツのロンドン大空襲が始まると英首相は国王にカナダ疎開を勧告。国王は拒み一家は英国内に留まった。14歳のエリザベスはラジオを通し可憐な声で国民を鼓舞した。

 1952年、国王死去に伴い25歳で女王戴冠。2世紀をまたぐ女王の時代で最も悲しい思い出は1997年のダイアナ妃の交通事故死だった。葬儀で思わず泣き崩れそうになる12歳のハリー王子を15歳のウィリアムが健気に慰める姿に、全国民が涙を誘われた。

 やがてウィリアムは学友のキャサリンと結婚し、チャールズ皇太子を凌ぐ国民的人気を集めるようになった。女王の最愛の孫といわれたハリーは「世界で最も待望される独身男性」とマスコミに呼ばれ、英国軍士官としてアフガニスタンに赴くと、危険度の高いヘリコプターの作戦任務につく姿がさかんに報道された。

「女王は内心ハラハラだったでしょうが、ハリーの奔放なライフスタイルに一切口出しは控えました。ハリーが意中の人を連れて来る日が実現し、女王はやっと心の荷がおりたと安堵したはずです」(英王室記者)

 女王とメーガンの初対面は2017年9月3日、スコットランドの女王の夏の御用邸バルモラル城で行われた。ハニカミながらハリー(当時31)が女王に紹介したメーガン・マークル(当時35)は、ハリーより年上、離婚歴のある女優で、褐色の肌の、団栗のようにつぶらな瞳がチャーミングな米国女性だった。マスコミは英王室に初の黒人の混血女性登場と大騒ぎ。翌年5月、結婚後もハリー&メーガンフィーバーは高まるばかりで、ウィリアム&キャサリンの影はすっかり薄れてしまった。そしてアーチーの誕生で人気はクライマックスに達した。

マスコミとの軋轢、王室内はギクシャク、国民からは逆風

 だが人気に陰りも現れた。まずアーチー誕生をマスコミから極力隠したり、英メディアをプライバシー侵害や人種偏見で訴えたことなど、マスコミとの軋轢が生じた。さらにハリーが兄ウィリアムとの不仲をテレビ番組で認め、メーガンもロイヤルライフに苦言を述べるなど王室内のギクシャクが表面化した。国民からも「環境保護運動に熱心なハリーとメーガンが私用でプライベートジェット機を多用するのは変だ」と逆風が吹き出した。女王は風向きの変化に動ぜず、曾孫アーチー誕生を控えたハリーとメーガンにロンドン近郊の邸宅を贈ったり、メーガンが王室の空気に馴染むようあれこれと女王なりに試みた。

「女王がもはやこれまでと諦めたのは今回、女王のクリスマスに2人が欠席したことでした。クリスマスは欧州諸国では年に1度、肉親が集い食卓を囲む、宗教的性格の濃い大切な祭日です。それを断って2人はカナダ休暇に出発してしまいました」(前出・英王室記者)

非公式な話し合いを求めた女王にメーガンは先手を打った

 女王の決意は恒例のクリスマスの国民向けテレビ演説で明らかにされた。2018年のクリスマス演説では女王の傍らの机上の記念写真で微笑んでいたハリーとメーガンの姿が、2019年のクリスマス演説では机上の記念写真から消えたのだ。「あなたたちをもはや王室の中心メンバーとみなさない」という無言の女王のメッセージだった。

「実は、すでにカナダ休暇出発前から今回の選択的引退をめぐり非公式なやりとりが始まっていたのです。正月明けに2人がカナダから英国に戻り、王室側に性急な要求リストを突きつけた。これに対し、じっくり非公式な話し合いを求めた女王・皇太子に業を煮やした2人が先手を打ち、女王に無断で電撃発表したのです。メーガンはこの展開を見越してアーチーをカナダに残してきたとも言われています」(前出・英王室記者)

 この通りなら、メーガン妃は相当な戦略家だ。

「メーガンにとって王室はセレブの延長」

「ハリーとメーガンは、セレブリティとロイヤルティについて大きな勘違いをしています。ロイヤルティには『ノーブレス・オブリージュ』――つまり高貴な者には社会・道義的な義務が伴うのに、メーガンにはそれはどうでもいい。彼女にとって王室はあくまでもセレブの延長で、セレブは即、おカネ儲けにつながる。この勘違いが2人の電撃発表に見事に表れています」(フランス王室誌編集者)

 2人は電撃発表で「高位王室メンバーから引退」するが「引き続き女王陛下を全面で支えていく」と述べ、今後は英国と北米間を往来し選択的に王室活動に参加し、「(王室の)機構内で新しい役割を造り上げていく」と言い、「経済的自立の道を築く」とも述べている。

「かみ砕けばこういうことです。年収のうち、5%を占める国庫からの手当は放棄するが、残り95%は引き続き受給する。女王から贈られた邸宅もキープし、英国内外の警護も引き続き望む。また現在9人で構成する高位王室メンバーからの引退は、窮屈な催し出席は極力減らし、自分たちの財団の儲けにつながるイベントを優先するのが狙いでしょう。同様に『経済的自立の道を築く』の文言には、昨年商標登録したサセックス・ロイヤルのブランド製品販売で儲けようとの魂胆が見え隠れています」(前出・フランス王室誌編集者)

「ロイヤルのままおカネ儲け」がメーガン妃の狙い

 英タブロイド紙は2人の今後の収入について、コーンウォール公爵領からの収入以外に軽く年収30億円以上、多国籍企業とのスポット契約が約70億円と試算している。もっともこの試算は今の2人の人気が続いたとみての強気の数字で、あまりに楽観的過ぎるようだ。

「メーガンはセレブとロイヤルを強引に両立させようとしている節があります。米国と異なり、カナダは英連邦の一員であり元首は今もエリザベス女王です。カナダに住めばロイヤルのままおカネ儲けも可能になるというのがメーガンの狙いなのでは。ハリーがカナダの女王コミッショナー(弁務官)任命を希望しているとの報道はその流れで出たのでしょう。でも、それをすんなり女王が認めるとは考えにくいですね。ハリー自身はセレブとロイヤルの違いには無頓着です」(同前)

 ハリー王子はいつ勘違いに気づくのか。

「隣の芝生は青いという諺がある。1年もすればハリーだけ英国に戻ってくるのじゃないか」(英王室カメラマン)

 女王は側近を交え、チャールズ皇太子、ウィリアム王子そしてハリー王子の間で電話の話し合いが続いているようだ。女王の相談役になるのはジョンソン英首相のはずだが、首相は自ら蒔いた種の、今月末の英国EU離脱で頭が一杯だ。女王の孤独は、大英帝国の孤立の時代の象徴でもある。  

(谷口長世(国際ジャーナリスト)/週刊文春デジタル)

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