

蓮池透氏は早期訪朝を訴える(時事通信フォト)

島田洋一氏は慎重派(写真/共同通信社)
2020年の日本には国論を二分する論争があるが、その一つが安倍首相の訪朝に「賛成」か「反対」か?──というものだ。ここでは「賛成」「反対」の立場の2人の識者の意見を紹介しよう。
【賛成】
●蓮池透氏(「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」元副代表)
首相の訪朝は急がねばなりません。トランプ大統領がいつ北朝鮮に興味を失うか、金正恩が敵対的な姿勢に戻るか分からない。
ただし、2つの条件があります。1つめは、生存情報を示した上での交渉です。内閣官房の拉致問題対策本部の予算を見ると、安否情報及びその関連情報の収集・分析等の名目で2013~2018年度の合計で52億3400万円計上されています。それほど予算を使って安否情報を集めていたのだから、当然日本政府は拉致被害者の生存情報を持っているはず。
もう一つは、そもそも金正日は戦後賠償が欲しくて(2002年に)小泉訪朝を認めたのでしょうから、今回も賠償メニューを用意しなければならない。
これらを満たしたうえであれば、安倍首相には早期の訪朝でトップ会談を実現させてほしいものです。
【反対】
●島田洋一氏(「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」副会長)
安倍首相はトランプ大統領に拉致問題解決を金正恩に伝えるよう要請し、トランプは拉致被害者家族に「いつも頭の中にある」「帰国させるように努力したい」とまで述べました。が、訪朝が実現したのに拉致問題は何ら進展していない。
北朝鮮は強かな国ですから日本の首相が訪問すれば、その事実を日米分断のイメージ工作に使うでしょう。
日本が北朝鮮に融和的なスタンスを見せれば、北朝鮮と関係のある国にも影響が及びます。核実験やミサイル発射などを理由に国連が制裁決議していますが、北朝鮮に物資を提供している友好的な国からすると、北朝鮮との関係をもう少し緩めてもいいだろうとなる。せっかくの制裁を日本が壊す形となります。
安倍首相が金正恩に単に会いに行くだけでは全く意味がありません。
※週刊ポスト2020年1月17・24日号