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山一證券に見る「破滅する企業」の典型パターン

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生き残る企業と破綻する企業は何がちがうか。『世界「倒産」図鑑』(日経BP)の筆者で、ビジネススクール講師の荒木博行氏は「山一證券の破綻は象徴的だ。“自分を許してしまうルール”を受け入れて、失敗から学ばなかった。私たちは失敗事例からもっと学ぶべきだ」という――。


写真=AFP/時事通信フォト

バブルが招く「焦り」がリスクを増やす

日本でバブル景気とその崩壊といえば1980年代後半から1990年代初頭にかけての状況が思い浮かびます。ただし、それが最初でも最後でもなく、そして日本に限らず、大好況期とその崩壊は世界各地で何度も発生しています。

こうした大きな波が起きた時、その波の様子を冷静に見極め、しっかり掴んで成果を上げ、その後に訪れる大崩壊に巻き込まれないような対応ができれば、企業にとって千載一遇の成長のチャンスとなるわけです。しかし、現実にはなかなかうまく行かず、多くの悲劇がくり返されています。

バブルとその崩壊に関わる倒産事例をひも解いていくと、「焦り」というキーワードが浮かんできます。

たとえば、金融機関には1985年のプラザ合意以降に訪れた「金余り」現象の中、それまで「貸し出せなかった」お金を「貸し出さなければならない」状況が訪れます。そうしたゲームのルール変更にあわせて、大手都銀はこぞって都内の優良案件を押さえにかかりますが、都銀の一角を占めていた北海道拓殖銀行は、その波を掴めませんでした。

融資審査の甘さが招いた巨大な不良債権

道内最大手の「拓銀(たくぎん)」としては主戦場の北海道で事業を拡大したいところでしたが、首都圏よりもバブルの到来が遅く優良案件は少ない。都内にも支店があるとはいえ、大手都銀の圧倒的リソースには勝てず、首都圏では地銀の追い上げにもあっていました。

拓銀は自らに課した大きな貸出ノルマを満たすべく、道内のインキュベーター案件への貸し出しを増やし、1990年には最高益を出します。しかしバブル崩壊による地価下落にともない、融資先の担保割れが続出。いわゆる「不良債権」は1994年に9600億円に達し、1996年、ついに破綻に至ります。

同社ではバブルの真っ只中に「総合開発部」が設けられました。それまで別々の組織に置かれていた営業機能と審査機能が一体化された組織です。「融資のスピード拡大」という課題に応えるための組織改編ですが、その結果、融資審査は甘くなり、巨大な不良債権へとつながっていきました。

焦りの先に待つ「単純化」の落とし穴

山一證券はバブル到来を機に「業界大手4社の最下位」という位置づけから脱しようと、法人顧客を頼りに「特定金銭信託(営業特金)」獲得に注力します。運用先を証券会社に一任する営業特金はそれ自体に違法性はありませんが、獲得競争が過熱する中、違法に利回りを約束する「握り」が横行。その後、バブル崩壊とともに発生した巨額赤字を子会社に付け替える「飛ばし」に手を出し、その発覚が1997年、同社101年の歴史に幕を閉じる道へとつながります。

背景にあったのは、やはり「焦り」でしょう。バブルの最中、どんどん早めに投資していけば、その分、どんどん売上は膨らんでいく。業界のそこかしこで景気のいい話が聞こえてくる。いけいけどんどんの興奮状態の中で、「今、投資しないでいつするんだ!」という大きな声に飲み込まれるように、従来なら審査に通らないはずの案件が通るようになっていく。

もちろん、それまで築き上げてきた仕組みを金科玉条のごとく硬直的に守っていればいいわけではありません。状況の変化にあわせてその仕組みを柔軟にアップデートすることは必要です。ただし、ここで注意しなければいけないのは「単純化」という落とし穴に嵌らないようにすることです。

ありがちなのはKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)の単純化です。たとえば、平時には売上の数字のほか、長期的なリレーション、ステークホルダーとの関係など、複雑な経営要素を冷静に検討していた企業でも、非常時にはそうした多角的な分析は蔑ろにされる。「とにかく売上を伸ばせ」と単純化され、やがて「どんな手を使っても売上を伸ばせ」となり、その先で、越えてはいけない「一線」を越えてしまう……。

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