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個が立つ社会

カルロス・ゴーン氏が昨夜,独演会のような記者会見を行った。

賛否があるが,私は以前のブログ(「検察の無理な捜査と~」)に記したように,ゴーン事件は,検察がスタンドプレイを狙って形式犯を無理矢理起訴した感が強い上に,長期間の勾留で自白を狙った日本の人質司法の悪しき典型であると思っている。だから,ゴーン氏が堰を切ったように思いのたけを述べたことはもっとも,とも感じた。

 ただ,その辺は多くの識者がそれぞれの立場から論じておられるので,ここで書きたいことは少し違うところにある。それは,やはり欧米人は個が立っている,と感じたことだ。

 プライベートジェットや元特殊部隊員を駆使して数十億をかけてでも自由を勝ち取り,大々的にメディアに露出して日本という国に正面から戦いを挑む。そのスケール感は日本人にはないところ。法務大臣が深夜に記者会見を開いて釈明したのは,その戦いが放置できないことを如実に示すものであるし,レバノンだけでなく,フランスF2などでも大きく取り上げられていた。

事件自体はどうみても執行猶予事案なので数十億円かけてまでするのか,と正直思ったが,それだけの怒りと反骨心が彼にはあったのだろう。その背景に,個人と国家は対等な存在である,との意識を強く感じた。

少し違う切り口ではあるが,アメリカで,IKEAの販売したタンスで死亡事故が起き,その遺族に対し,50億円を支払うこと和解が成立したということが報道されている(AFP)。同じ法律事務所は,類似事故の3家族に対し,既に54億円の和解合意も取り付けているそうだ。いかに巨大企業であるIKEAであったとしても,4件の死亡事故に対し100億を超える賠償金の支払いは,重い負担であろう。

 翻って日本の場合,どんなに悪質な欠陥の放置があり,被害が繰り返されたと死亡事故であったとしても賠償金はせいぜい5000~8000万円程度。被害者の年収にもよるが1億を超えることは滅多にない。

だから,企業も,訴えられそして敗訴しそうなら払えば良い,というスタンスであることが多い。守秘義務があるため具体例は出せないが,弁護士の実務経験においても,世界的な大企業の驚くような欠陥製品による死亡事故が先に挙げた程度の和解金を支払うだけで闇から闇,という事例に触れたこともあった。

 総じて,日本においては個の力が弱すぎる。その背景にあるのは,自身が被害者になることなど思いもよらない,という日本人の標準的思考と,我慢服従が標準装備であるその生き方。

 これと対照的なのが欧米人の思考と生き方。アメリカの医療訴訟事情を現地調査に行ったときの,元判事の言葉が忘れられない。

「自分の腕が一本失われて慰謝料が2000万円なんて考えられない。馬鹿げている。」

日本人には未だ確立されていないこういった意識を背景に,個人が巨大企業や国家と対等であると示せるような制度が確立された社会となっていくことこそ,今の日本の閉塞感や限界を打ち破ることに繋がっていくのではないか。

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