- 2020年01月08日 19:04
社会の分断をなくす表現は「笑い」なのかもしれない。せやろがいおじさんと話して私が猛省したこと。
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年始、沖縄に行ってました。「せやろがいおじさん 」に会いに。せやろがいおじさんとは、赤いふんどしを履いて、沖縄の綺麗な海で、世の中の違和感を大声で叫んでいる“物申し YouTuber“。社会問題への感度と、伝え方が絶妙な上に、 画面全体にテロップを表示するYouTubeっぽい編集の仕方が特徴的だ。背景は、綺麗な沖縄の海なので心が浄化され、赤いふんどしのおじさんが海に時折飛び込むので、なんかクスッと笑える。ネット世代の認知度は、ものすごく高いはず。せやろがいおじさんは、普段は、コンビ「リップサービス」のツッコミを担当し、沖縄のローカル芸人として活動している。沖縄での活動は13年目になり、沖縄の賞レースで優勝したりもしているが、食べていけずに YouTubeを始めたそうだ。 今はバイトは辞めたという。

お笑いで、社会問題を伝える。そして 、それをYouTubeという場でやる。せやろがいおじさんは、私とめちゃくちゃ近い存在だ。初めて、せやろがいおじさんにお会いした時に「同志だと思っています」とおっしゃっていただき、めちゃくちゃ嬉しかったです。
今回は、私の YouTubeチャンネル「たかまつななチャンネル」にご出演いただき、その撮影のために沖縄に参りました。現在、編集頑張っていますので、どうぞお楽しみに!
●たかまつななチャンネル https://www.youtube.com/user/takamatsuch
人間誰もが人格をいくつか持っている
せやろがいおじさんと話して、私が猛省したことがある。それは、「笑い」から逃げていたことだ。人間誰もが、多重人格なのではないかと私は思っている。大雑把と言われている人が、繊細な側面を持っていたり、厳しいと言われている人が実は優しかったりー。人間には色んな顔があるように、私だって、いろんな側面をもっている。めちゃくちゃ人を笑わせにいくモードの時もあれば、徹底的に取材するジャーナリストの時もあれば、若者世代を代表するオピニオンの時もあれば、ソーシャルビジネスをどううまく回していくか考える経営者の時もある。それを使い分けすぎていたのかもしれない。せやろがいおじさんは、あんなに、まともなことを言う物申し YouTuberなのに、芯はめちゃくちゃ芸人だった。「全部の動画で笑わせようと思っている。笑えないという人がいるかもしれないけど、僕は全部面白いと思っている」というようなご主旨の発言をされていた。動画には強いメッセージが込められているので、それがめちゃくちゃ意外だった。もちろん動画には笑えるところもある。しかし、伝えるが第一義的だと思っていたので、「笑い」を入れるという芯の強さに驚いた。分かりやすくするために、笑いを入れているのかと思ったが、それもあるが、笑わせたいの思いが強いのだ。全部体当たりで笑わせようとしていたのかと。そこで、私は全部の自分の発信が笑いが目的じゃないことを突きつけられて、心が傷だらけになった。

「笑い」が邪魔になる瞬間
私自身は、笑いが邪魔になる瞬間というのがあると思っている。例えば、がんのシンポジウムでネタをやってください。過去にこのような依頼がきたことがあったが、断った。結局、シンポジウムの司会ならできると伝え、司会をやった。自分の家族が、がんだと宣告されていて、なんとか勉強しようと、少しでも大切な人を助けたいと思っている人の前でやるのは不謹慎だと考えたからだ。
このように、笑いと馴染まないテーマがたくさんある。そう言う時に、私はファシリテーターや論点整理、分かりやすく問題を伝えるということに自分の役割を徹した。だって、せっかくたくさんの人が見る地上波のワイドショー番組において、論点がおかしいことが多いからだ。バラエティの社会問題を考えるきっかけで、そもそも論点がおかしいから議論がチグハグになったことが何度もあった。悔しかった。芸人として、伝えるというスキルを笑いではなく、「翻訳」という役割をみいだそうとしたのだ。そして、笑いを取ろうとさえ、していなかった。だから、せやろがいおじさんの全部真正面から受け止め、笑いに変えようとする姿は印象的だった。

- たかまつなな
- お笑いジャーナリスト・株式会社 笑下村塾 取締役
1993年神奈川県横浜市生まれ。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科、東京大学大学院情報学環教育部修了。フェリス女学院出身のお嬢様芸人としてデビューし、日本テレビ「ワラチャン!」優勝。また「朝まで生テレビ」「NHKスペシャル」などに出演し、若者へ政治意識の喚起を促す。
笑下村塾ホームページ
https://www.shoukasonjuku.com/