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「ポスト安倍」が霞んでいく菅官房長官の想定外

「統率力があり戦略家」と菅氏を褒めちぎっていた下地氏

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)にからむ汚職事件で、下地幹郎衆院議員(日本維新の会に離党届提出)が、贈賄の疑いが持たれている「500ドットコム」側から現金100万円を受け取ったのを認めた。

秋元司衆院議員(自民党を離党)が収賄容疑で逮捕されたIR汚職は、新しい局面に入った。そしてこの問題は安倍政権の屋台骨を支えてきた菅義偉官房長官を窮地に追い込むことにもなる。


衆院平和安全法制特別委員会の傍聴席で話す菅義偉官房長官(左)と維新の党の下地幹郎氏=2015年7月3日、東京・国会内 - 写真=時事通信フォト

今から4年以上前の2015年9月、プレジデントオンラインは下地氏のインタビューを掲載している。

聞き手を務めた作家・評論家の塩田潮氏が「菅官房長官とは、同じ1996年総選挙の初当選の同期生だそうですね」と水を向けると、下地氏は「菅さんは政党と官僚を統率する力があります。安倍晋三首相に対する忠誠心が強い。加えて、戦略家です」と菅氏を持ち上げている。

さらに沖縄問題の担当を菅氏が兼務していることに話が及ぶと「沖縄に対する愛情とか思いといったような、そんな浮ついた感じで物事を考えていないのでは…。私の政治の師は山中貞則先生(元通産相・初代の沖縄開発庁長官)ですが、山中先生は『さかしらに沖縄を語るなかれ。栄光も苦労も知らずして』と言い『本当に沖縄に入り込むやつは沖縄にこい』と口にしていましたが、菅さんは今、そういうところに入ろうとしているのではないかと思います」と褒めちぎっている。

互いに利用しあってきた「しもちゃん」「すがちゃん」

菅氏と下地氏の盟友関係は永田町では有名だ。2人は「しもちゃん」「すがちゃん」と呼び合う仲は、下地氏が自民党を離党してからも続いている。下地氏は、どちらかというと言葉が先に出るタイプ。菅氏は一歩下がり裏で流れを操るタイプ。お互い持っていないものに引かれ合っているのかもしれない。

昨年6月には96年当選の自民党議員の同期会にも、野党議員である下地氏がスペシャルゲストとして出席。菅氏との蜜月ぶりを示してみせた。

菅氏は、永田町屈指の豊富な人脈を誇る。その中でも維新の幹部で沖縄出身の下地氏とのパイプは貴重だった。維新は、野党と位置づけられてはいるが、政策面ではむしろ自民党に近く、憲法改正に向けても足並みをそろえる。

さらに下地氏は沖縄出身でもあるため、彼からもたらされる情報は大いに参考になる。菅氏と下地氏の人間関係で、沖縄県の地方選挙は、自民、公明、維新の3党の共闘関係を組むことも少なくない。

下地氏にとっても、自民党と霞が関ににらみを利かす菅氏とのパイプは「勲章」だ。

「100万円の受領」で政治生命を絶たれる可能性も

「しもちゃん」「すがちゃん」の人間関係から、下地氏が自民党に復党するという噂も取り沙汰されていた。

だが、下地氏が100万円を受け取ったことを認めたことで状況は変わった。下地氏は1月7日、維新に離党届を提出したが、松井一郎代表からは、議員辞職の要求を突きつけられている。政治生命が絶たれる可能性さえある。

菅氏も傷ついた。これにより、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移転で下地氏の側面支援を得ることができなくなる。さらに維新との関係も、距離ができてしまうかもしれない。

昨年秋以降、菅氏の周囲では、歓迎できないことが続く。昨年秋の臨時国会開会中には、菅原一秀経済産業相、河井克行法相が「政治とカネ」の問題で辞任した。菅原、河井氏は、無派閥ではあるが事実上は「菅派」であることは自他共に認めるところ。2人が去ったことで菅氏にも影響が及ぶ。

政府のスポークスマンでもある菅氏は苦しい立場に

「桜を見る会」を巡って、菅氏は記者会見で連日記者団からの追及を受け、立ち往生した。官僚からの「差し紙」を受け取って棒読みする姿は、かつて「鉄壁の菅」と言われた影もない。この件については「実は『危機管理』が苦手だった菅官房長官の実力」(12月9日付)で論じているので参照いただきたい。

菅氏は、側近の2閣僚を失い、最大の売りだった危機管理能力に疑問符がつき、今度は野党と沖縄のパイプを失いつつあることになる。さらに安倍内閣が進める成長戦略の中の重要な要素であるIRに傷がついたことは安倍政権にとっても大きなダメージだ。政府のスポークスマンでもある菅氏はさらに苦しい立場に追いやられるだろう。

永田町では「陰謀説」まで取り沙汰されるが…

永田町では「陰謀説」までささやかれる。自民党内で菅氏を面白くないと思っている勢力が、菅氏を陥れようとしてマスコミにリークしている、という説だ。

今、自民党内では安倍首相のもと一枚岩の結束を保ってきたようにみえたが、安倍氏と麻生太郎副総理兼財務相を中心としたグループ、菅氏と二階俊博党幹事長を中心としたグループに分かれて「ポスト安倍」をにらみせめぎ合いを始めている。その中で「リーク説」が出ているのだ。

実際にリークだとすれば、被害は菅氏だけでなく自民党、安倍政権全体に関わる話だけに、この説はにわかに信じ難い。しかし、ここまで菅氏にとって不都合なことが続くと、リーク説も少しずつ信憑性を帯びてくる。亀裂が生じ始めた自民党内で疑心暗鬼が増幅することにもなるだろう。

そして菅氏が「ポスト安倍」として再浮上するのも難しくなってしまった。ここから再浮上を図るのは、政治経験ゆたかな菅氏といえども並大抵のことではない。

(プレジデントオンライン編集部)

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