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3DCGブームはどこへ行った? 《第1回》

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小寺メルマガ「金曜ランチボックス」の中の対談部分を無償公開しています。毎週金曜日発行のメルマガから抜粋して、翌週の火曜日ぐらいに公開していく予定です。

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□対談:Small Talk

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最近対談の人選が「呑み会で会って仲良くなったおもろい人シリーズ」になってきている。2か月前のメルマガでお送りしたコブラのプロデューサー古瀬さんもそうだが、今回お話しをお伺いするJag 山本氏もそうだ。

山本氏は、(株)イーフロンティアで、プロダクトマーケティング、マネージメントグループのリーダーとして、3DCGソフトをはじめとするクリエイティブツールの販売を指揮している人物だ。イーフロンティアはその昔、英国製のPDA「PSION」用の日本語環境の開発などでお世話になったことがあるが、最近はソフト販売会社としての地位を確立しつつある。

現在扱っているラインナップとしては、LightWave、modo、Poser、Shade、Anime Creator、SketchUpPro、CINEMA4D、CARRARAなどなど。クリエイターの中には、ああ、あれもそうなの? と言うものもあるだろう。オーディオでは、以前ヤマハが代理店だったKlipshのイヤホンやスピーカーなどのハードウェア製品も一手に引き受けている。

山本氏はヨーロッパでのビジネスの経験も長く、世界のソフトウェアマーケットに精通しているという、日本では珍しい人物だ。今クリエイティブソフトウェアの世界はどういう業界地図になっているのだろうか。そのあたりからお話しを伺ってみたい。

3DCGブームはどこへ行った? 《第1回》

小寺 今いわゆるパソコンソフトの販売って、どうなってるんでしょう? 昔は3DCGとかに強い、専門性の高いショップがあって、そういうところにエキスパートが集まってラウンジっぽくなってくるみたいなこともあったんですけど、今はそういう専門ソフトってメーカー直販でダウンロードで買ったりというケースの方が多いんじゃないかという気がするんです。

その一方で、なんか名だたる3DCGソフトの販売がイーフロンティアに集まってきているという現状もまたあるわけですよね。こういうPCソフト販売の流れって、やはり昔からは変わってきてるんですかね?

山本 たとえばイーフロンティアの会社の業種はなんですかと言われると、Shadeっていう3DCGソフトのベンダーであるんですけども、ベンダー以外だと「パブリッシャー」という言い方をしてるんですね。

リンク先を見るやっぱりいまだに、ヨドバシ、ビッグカメラ、ヤマダ電機みたいな店頭でのソフトウェアの売上というのは、比率的にはけっこうあるんですよ。「けっこうある」という言い方がすごい抽象的なんですけども、たとえば……ウイルス対策ソフト。あれは更新ビジネスがメインなんですが、新規の購入との比率でいうと、少なく見積もっても6割ぐらいは店頭なんですね。

小寺 ああー、そうなんだ。やっぱりレガシーなソフトウェアのありかたって、売り方も変わってないんですね。

山本 うーん、今はそうです。ただ、今はウイルス対策ソフトの話をしましたけど、ドイツのウイルス対策もちょっと知ってるもので。それで言うと、2年ぐらいの隙間で──2008年から2009年のたった2年間のあいだで、PCのソフトウェアコーナーというのが40%縮小ぐらいしちゃったんですよ。

小寺 えっ、すると60%になったということ?

山本 そうです。今まで2列あったところが、1列と面だけ残ってる、みたいな感じになっちゃったんですよ。「そういう日が来る、来る」とは言われながらまだ平気だろうと思ってたら、ある日、ある時からもう出荷ができなくなっちゃうと。

小寺 (笑)。やめてくれ、ってこと? 出せないの?

山本 特にドイツなんですけど、ドイツの場合、Saturn(ザトゥーン)というのと、Mediamarkt(メディアマルクト)という2大ショップがありまして。

小寺 それはチェーン店なの?

山本 チェーン店ですね。Mediamarktが、日本で言ったらヤマダみたいな郊外型、Saturnがビック、ヨドバシみたいな感じなんですけど。この2大ショップが合併しちゃって。

小寺 へええ。

山本 もう、大巨頭なんですよ。ライバルにコンラッドとか、ま、ソフマップみたいなのもちょっとあるんですけど、そっちはだいぶちっちゃくなっちゃっていて。

で、そこがもう家電量販のほとんどを持っちゃってんですね。そこが返品しないで頑張ってたんですけど、ある日方針で──「こんな状態だったら携帯電話置いたほうがいいね」という、会社としての流れになりますよね。そういう大方針が決まっちゃうと、「悪いけど、ちょっと返品受けて」となって、出荷が受けられなくなって。

ドイツの場合なんかだと地方分散ですから、アキバ・新宿みたいな街がほとんどないわけですよ。ま、ベルリンとかミュンヘンとか大都市はありますけど、ミュンヘンのソフトウェアコーナーが、デュッセルドルフの5倍あるかというと、そういうわけじゃないんですよ。なので、全部がばーってなくなっちゃった。

小寺 日本はどうなんです? 今はケータイキャリアで有名になりましたけど、もともとソフトバンクって、PCソフトの取次みたいな業態なんですよね。

山本 日本で家電量販店にソフトを流通させてるのは、ほとんどソフトバンクさんなんですね。直でやられているソースネクストさんとかもありますけども、やっぱりソフトバンクさんが方針をもし急に変えたらもうそこまでです。

小寺 うん。

山本 ただシェアがそれだけあるといっても、シェア比は昔より、当然減ってます。ダウンロードが増えてるので。でもそれに食われたぶんだけではない、市場の縮小も出てきてます。それでもお店で買っている人がいる大きな理由は、さっき言ったウイルスソフトと、年賀状(作成ソフト)がいちばん売れるソフトなんですけど、この2つのソフトというのは、実はダウンロードよりお店で買ったほうが安いんです。

小寺 あーそっか、そうだよね。ダウンロードだと直販になっちゃうから値引きないもんね。

山本 そうなんですよ。あとはマイクロソフト系、Officeとかも、実はダウンロードよりお店のほうが安い。MSなんかはダウンロードとお店のMSRP(メーカー希望小売価格)は同じにしてるのに、店頭だとヨドバシポイントがつき、販売推進で○%引き、というのがつくので、そっちのほうが安い。

ポジティブに言うと、やっぱりお店に来る意味があるんだという動きはある。海外のベンダーは、ダウンロードなら自分たちでやれると思われてる方たちもいらっしゃるんですけども、じゃあお店にはどうやって届けるんだ、と。流通さんに直接ポンと送ったらやってくれるのかというと、そういうわけでもない。棚を作ってくれないですし。するとやっぱりパブリッシャーに売ってもらうっていう、レガシーなとこになってきますね。

小寺 なるほど、そういう構造なんですね。ソフトを売るというのは。

山本 あとはやっぱり、昔から言う「サポート、日本語化」のコストを誰がどう持つか、というところですね。アドビさんとかシマンテックさんみたいに、あのサイズになれば、本社にローカライズ部署を作ってやればいいでしょうけど。日本人に安く売ったとしても、じゃそのサポートを誰が受けるの? と。

そうなると、今度はマーケティングも伴ってくるわけですよね。たとえばうちですとPoserというソフトとかやってますけども、「Poser」と検索して来る人と、「人体ソフト」で来る人に分かれるわけですね。で、取っていきたいのはこの「人体ソフト」というように、マッチングワードでやるところだと。そうすると、本国のSEO部隊、SEM部隊はとんちんかんなわけですよ。何をサーチエンジン対策に入れたら売れるのかと。

じゃあ日本のSEM、SEOが強いところに頼もう、と。でも、SEMとSEOだけ強いところに頼んでも、今度は「Poser」に引っかからない。となると、そこに詳しいところはどこだろう、ということで、3Dソフトを扱ってるとこ……みたいなことで、また集まってくると。

小寺 なるほど、そういうことで、加速度的にイーフロンティアに3Dソフトが集まってきちゃってる現状があるんですか。

山本 そうですね……他のもそうなんですけどね、音楽ソフトにしても。ま、ポジティブな話をすれば、Shadeをやりながらmodoを売ってたりする、というのは、決してカニバルじゃない、というところなんですよ。やっぱり、文房具や絵を描くツールもそうですけど、「ここまでは三菱の鉛筆で描いて、でもこっちはタッチが違うからトンボ、ここはこの色鉛筆で」とかはよくある話で。

小寺さん自身も以前はLightWaveを使われてたということでおわかりだと思うんですけど、やっぱり3Dソフトってそれぞれにクセがあるんで、「こういうことやるなら別の思想のほうがいいな」とかある。私たちがユーザーさんに、メールマガジンとかキャンペーンで、Shadeを買った人にLightWaveとか、LightWaveを買った人にmodoとか勧めるんですけど、これだけで年間何億みたいな売上があるんですね。つまり、この人たちは乗り換えてるんではなくて、両方使っていただいていると。まあ、いうなれば3DCGの『世界堂』みたいな感じですよ(笑)。

小寺 ははは、なるほど(笑)。なんでも扱うと。

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