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千葉市のIR誘致「見送り」と幕張の未来

さて、500ドットコム事件によって大きく揺れる国内IR業界でありますが、またまた大きな報道がなされました。以下、時事通信より転載。


千葉市、カジノ見送り 誘致自治体は「作業進める」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020010700699&g=eco

千葉市の熊谷俊人市長は同日の記者会見で「(昨年の台風からの)復旧復興を最優先にしなければならない中で、IR誘致はエネルギーが非常にかかる。それらを全てやっていく環境にはないと総合的に判断した」と説明。国が示した申請までのスケジュールが想定より短かったことも理由に挙げたが、IR事業をめぐる汚職事件が見送りの判断に影響したのかとの質問には「関係ない」と話した。


ということで、全国でIR誘致を積極検討してきた自治体の一つである千葉市が、今回、国が示している2021年の区域認定におけるIR整備計画に関しては「見送る」という判断を行いました。昨年11月に北海道が行った「見送り」判断に続いて、国内有力候補地の中では2件目となります。

昨日会見を行った千葉・熊谷市長による説明では、千葉市としては昨年の台風被害からの復旧を最優先にしている中で、IR誘致には「時間が足りない」とのこと。対して、昨年の北海道による誘致見送りでも、その理由が「時間が足りない」と説明されており、この「時間が足りない」というのは今後の誘致見送りを行う地域にとってはデフォルトの「見送り」理由となるのでしょうか。また千葉市は、あくまで今回は時間不足による「見送り」であり、将来的なIR誘致の可否については引き続き研究をして行くというスタンスを維持しています。これも北海道のスタンスと同じです。

さて、千葉市の今回の決断はひとつの「賢明な判断」として受け止めるとして、今後、課題となって来るのは千葉市幕張の置かれる立場です。国内有数のMICE施設である幕張メッセを抱え、グローバルMICE都市としての地域振興が掲げられている千葉市幕張地域でありますが、実はそれほど順風満帆ではありません。幕張メッセ自体の稼働率は2016年に過去最高となり、現在も70-80%と高い水準を維持しているのは事実ですが、実は本来用途である展示会や国際会議での施設利用は低い水準に留まっており、その大半は音楽ライブとしての会場利用などエンタメ方向での利用であるのが実態です。

千葉市のIR構想というのは、その様な幕張メッセの現状を打開し、本来目指されてきた「グローバルMICE都市」としての機能を強化する為に構想されてきたものであるワケですが、もし今回、それを「見送り」とするのならば早急に代替となるMICE強化策を講じてゆく必要があります。

一方で、関東圏におけるMICE誘致を巡る競争は今年以降、激烈に厳しくなってゆきます。その理由が、今年開催が予定されている東京オリンピック。東京オリンピックが終了した後、東京都は「五輪レガシー」利用として、オリンピック向けに開発/更新された関連施設の利用推進を開始します。その中には、国際放送メディアセンター設置の為に行った東京ビッグサイトの増床分や、その他様々な関連施設が含まれており、東京オリンピック後の首都圏にはMICEに利用可能な施設供給量が一気に増加することとなります。

そして、それと同時に行われる可能性があるのが、千葉以外の関東圏域の自治体におけるIR誘致です。現在国は、各自治体のIR誘致にあたって国の進める「国際MICE振興」に寄与する大規模な国際展示場もしくは国際会議場の併設を要件化しており、もし関東圏にIR誘致が実現した場合、五輪レガシーとして供給される各種施設に加えて、IRが新たに高機能のMICE施設を供給することになります。現在、関東圏では横浜が既にIR誘致先として立候補、そして東京が未だ「検討中」の立場にあるわけですが、この両都県が最終的にIR誘致を実現した場合、「グローバルMICE都市」としての幕張は、もはや「名ばかり」になってしまう可能性があるというのが実態。

更に予想されるのが、現在、幕張メッセの稼働を担っている音楽等のエンタメ系イベントの大移動です。現在、国から大規模MICE施設の併設が要件化されているIRでありますが、実は本来、エンタメ施設であるIRは展示会や国際会議以上に、エンタメ系イベントの開催施設としての機能の方が「より競争力がある」のが実態。千葉市以外の関東圏の自治体にIRが開発された場合、現在幕張メッセの稼働を一手に担っているそれらエンタメ系イベントがIRに向けて大移動をする可能性が高く、幕張メッセは相対的に稼働を落として行かざるを得なくなるでしょう。

要は、千葉市の幕張地域が「グローバルMICE都市」としての地域振興を掲げている限り、「好む/好まざる」を関係なくして、否応なしにその他のIR誘致を行う地域と直接競合をして行かざるを得ない。IR誘致を行うのも実際問題として大変な作業ではあるのは事実ですが、一方で誘致を「見送った」としても、実は千葉市が直面するのは「イバラの道」であると言って間違いないでしょう。

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