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ゴーン被告逃亡の裏で燻る「日産・ホンダ統合説」の現実味

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◆FCAとPSAが経営統合

 海外に目を転じれば、2019年12月18日、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と「プジョー」などを傘下に抱える仏グループPSA(旧プジョーシトロエン・グループ)が経営統合することで正式に合意した。2021年に出資比率50対50の新会社を設立する。新会社のCEOにはPSAのカルロス・タバレスCEOが就任する。

 ちなみに両社の合計世界販売台数は871万台(2018年の年間実績)。独フォルクスワーゲン(同1083万台)、仏ルノー・日産・三菱自動車の3社連合(同1075万台)、トヨタ自動車(同1059万台)に次ぐ世界4位の自動車連合が誕生する。電動化や自動運転といった次世代車の開発に向け、生き残るための大型再編が始まったと見るべきだ。

 FCAは2019年5月に仏ルノーに経営統合を提案したが、6月に撤回した。ルノーの筆頭株主である仏政府は、雇用を守るために仏国内の工場閉鎖に絶対反対だった。仏政府の同意を得られず、日産がFCAとの経営統合に後ろ向きだったことから、破談した。

 ルノーとPSAには複雑な人間模様があるのをご存知だろうか。PSAのカルロス・タバレスCEOは強烈な業界再編論者でもあり、ルノーでナンバー2だった。ナンバー1のカルロス・ゴーン被告に、「そろそろトップの座を譲り渡してほしい」と直談判して、逆にカルロス・ゴーン被告に切られた。タバレスCEOの胸に一物、心に二物あってもおかしくはない。

◆日産は仏ルノーと離縁し、ホンダと再婚できるのか

 そもそも日産によるゴーン元会長追い落としのクーデターの震源地は仏政府である。仏政府の圧力の防波堤になっていたゴーン元会長は、ルノーの会長を続投する見返りに、日産をルノーに統合することで、仏政府と手を握った。日産を仏企業に組み込んだ暁には、日産にフランス国内に大型工場を建設させ、雇用を拡大するのが仏・マクロン大統領の狙いだった。

 そんなゴーン元会長の“転向”に危機感を抱いた日産の経営陣の一部が、検察と呼応してゴーンの逮捕、日産からの追放に動いた。だが、一連のゴーン事件で日産とルノーの関係は悪化。それ以降、両社の亀裂は広がり続けている。

 ゴーン元会長のクビを取った日産の悲願は、仏ルノーのくびきから抜け出し、独立を果たすことだが、ところがどっこい、内田新社長はルノーとの融和を優先させる考えだ。ホンダとの再婚には、ルノーと“協議離婚”が必須であるが、今のところ日産の現経営陣、トロイカ体制とやらに、やる気があるとは思えない。

 2019年12月、クリスマスイブの夜(20時台)には、〈日産の新経営体制に打撃。関副COOが日本電産の社長に〉という衝撃のニュースも飛び込んできた。関副COOは12月24日までに内田・新社長に退任の意思を伝えたという。

 経営再建策の「パフォーマンスリカバリー」の陣頭指揮を執る(はずの)関氏の退社は、日産のトロイカ体制の求心力のなさを早くも露わにした。それよりも、経営トップから日産の生え抜きが抜け落ち、ルノー寄りの外部出身者だけとなったことにより、経営の迷走はさらに深まる公算が出てきた。日産の2トップはルノー、いや、ジャンドミニク・スナール会長の“傀儡”とみられかねない。

 一方、ホンダは2020年夏にも、一定の条件下ならハンドルを握らず、目を前方から逸らしてもシステムに自動運転を任せられる「レベル3」の技術を搭載した車を発売する。高級セダン「レジェンド」の一部モデルに搭載する。「レベル3」の自動運転車を市販するのは、日本の自動車メーカーでホンダが初めてとなる。

 技術のホンダの輝きを、少しは取り戻してきたが、業績は振るわない。2020年3月期の国内の新車販売で、ホンダがスズキに抜かれて3位に陥落する可能性も出てきた。通期計画(小売りベース)はホンダが67万台なのに対してスズキは68.9万台。部品トラブルによる生産停止や新車の発売延期がモロに響いている。ホンダにとって屈辱の3位転落だ。

◆ホンダは対等な立場での統合

 100年に1度といわれる大変革を迎える自動車業界にとって、次世代の自動車運転車やコネクテッド―カー(インターネットへの常時接続機能を装備した自動車)の開発には莫大な資金が必要になる。一社で賄えるものではないため、ホンダがどこと組むかが焦点になっている。

 メインバンクの三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)は、かつて同じメインの三菱自動車とホンダの経営統合を画策したことがあった。しかし、経営危機に陥った三菱自を買収したのは、カルロス・ゴーン被告率いる日産だった。ずいぶん安い値段で買い叩いた。

 今回、ホンダ系の部品メーカー3社の日立入りを、メインバンクの三菱UFJは後押しした。三菱UFJはホンダ系の部品メーカーに貸し込んでおり、日立の傘の下に入れば、安心できるからだ。日産に近い日立とホンダの部品統合の狙いは、もちろん、自動車再編への布石であり、ホンダと日産の経営統合は絵空事ではなくなった。

 こうした最中、日産のナンバー3の関潤氏がケツをまくり、内田・新社長に三下り半を突きつけた。さらに、カルロス・ゴーン被告は海外逃亡犯になった。

 日産の若手幹部は、「関さんが辞めることを最終決断したのは(2019年)12月2日の記者会見の後。内田・新社長がルノーとの経営統合に関する質問に、はっきり『統合は考えていない(統合ノー)』と明言しなかったからだ」という。「最年長の関さんはNO3という処遇にも不満だった」(同)とも。

「関氏が日本電産の社長に内定」とスクープ(2019年12月24日配信)したロイターは、関氏が「日産のために働いてきたが、サラリーマン人生の最後をCEOとしてチャレンジしたい」と語った、と当事者の肉声を伝えた。

 日産がルノーとの関係を清算するのは容易なことではない。ホンダも日産・ルノー連合に吸収されることは望んでいないはずだ。「経営統合するなら対等な立場で」ということである。ホンダの関係者も「経営の独立性を担保できない相手と組むことはあり得ない」と話す。

 ただ、このまま日産の経営の混乱が長引けば、日産・ルノー・三菱自動車連合にさらなる遠心力が働く可能性もある。もし三菱自動車がスピンアウトするようなことが起これば、ホンダ・三菱自動車の焼けぼっくいに火がつくことだってゼロではない。三菱商事など三菱グループ各社はそれを望んでいるとされる。

 ゴーン事件がますます尾を引く中、日産は生き残りのため新たな業界再編へと舵を切るのか、注目である。

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