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【読書感想】日韓激突-「トランプ・ドミノ」が誘発する世界危機

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日韓激突-「トランプ・ドミノ」が誘発する世界危機 (中公新書ラクレ (673))

  • 作者:手嶋 龍一,佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/12/17
  • メディア: 新書

Kindle版もあります。

日韓激突 「トランプ・ドミノ」が誘発する世界危機 (中公新書ラクレ)

  • 作者:手嶋龍一,佐藤優
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/12/17
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)

GSOMIAをめぐり揺れに揺れた日韓。両国はついに全面衝突の様相に。「安倍政権が韓国を巧妙に追い詰め破棄させたのだ。この手法は、日本を開戦に踏み切らせたハル・ノートを思わせる。短期的には“完勝”」(佐藤優氏)だが、「長期の視点に立てば極めて危うい一手」(手嶋龍一氏)だ。北東アジアに生じた日米韓の安保体制の綻びを、中露北が衝こうとしている。果たしてニッポンに苛烈な国際政局を生き抜く秘策はあるか。

 手嶋龍一さんと佐藤優さんによる、対談形式での世界情勢分析本です。

 タイトルには「日韓激突」とあるのですが、内容的には、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩氏の接近による韓国の地政学的な変化と、東アジア、中東におけるアメリカの現在の考え方について多くのページが割かれています。

 佐藤さんは、韓国に対する、日本の植民地支配に触れ、イギリスなどに比べて、日本は韓国に対する「旧宗主国」としての自覚が足りないのではないか、と述べています。

 それは、「かつて支配していた側の後世での責任」みたいなもので、日本は、台湾に対する旧宗主国としての特別な配慮(日中国交正常化後も台湾との事実上の外交関係を維持しつづけたことなど)に比べて、韓国に対しては冷淡だった、ということのようです。

佐藤優:「見えない問題」の二つ目は、日韓の国力の接近です。日韓基本条約が締結され、韓国との国交が樹立した1965年当時、国民一人当たり名目GDP(国内総生産)は、韓国109ドルに対して日本は920ドル、つまり8倍も開いていました。では今はというと、2018年に韓国3万1000ドルに対して、日本は、3万9000ドルと極めて接近しているのです。

手嶋龍一:半世紀で、韓国は日本にほぼ追いついたわけですね。日本人のどれくらいが、そういう事実を認識しているでしょうか。

佐藤:むしろ韓国のほうが物価は安いので、彼らの皮膚感覚では「追い越した」のかもしれません。韓国は格差社会ですから、インバウンドで日本にやってくる人々は、富裕層が多いでしょう。彼らは、特にそれを実感しているはずです。

手嶋:そういう感覚を持っておくことも、大切だと思います。

佐藤:日本のマンションを見ると、韓国の中産階級上層のほうが大きな家に住んでいるのが分かる。あるいは、極端な競争社会で文理融合の教育を受け、英語力も相当厳しく鍛え上げられている上層部のビジネスマンから見ると、付き合う日本人はあまり優秀に見えない。個々の能力をとっても、日本人よりも我々のほうが優っているのではないか。翻って、国際社会における韓国の地位をみると、依然日本とは雲泥の差がある。自分たちへの評価は実力相応とは思えない──。韓国の人々がそういう思いを募らせても、なんら不思議はないんですよ。

手嶋:経済発展によって韓国の人たちが自信をつけ、それゆえに自分たちに対する評価に不満を抱いている。もちろん、最大の不満の対象は日本、ということになる。

佐藤:わかりやすく言えば、「もう追いついているのに、相変わらず日本は我々をずっと下に見ているのではないか」という苛立ちが、徐々に充満しつつあるわけです。

 佐藤優さんは、現在(2019年)の時点で、日本と韓国のGDPの総額では2.5倍くらいの差がある(日本のほうが大きい)けれど、1965年の時点では、だいたい30倍くらいの差があったことを考えると、韓国の人々の実感としては、「ほとんど追いついてきた」のではないか、と仰っています。

佐藤:例えば、韓国人が「生活水準に8倍の差があった時代に結ばれた日韓の基本条約や請求権協定は不当なもの」と感じても、それ自体に不思議はないといいうことです。「もうとっくに済んだことだ」と言う日本人には、幕末に日本が欧米列強と結んだ「不平等条約」を思い出してほしい。明治の日本は国力がつくと、その不当性に非を鳴らしたでしょう。

 そう言われると、「経済力が違いすぎる時代に結ばれた条約は、こちらの弱みにつけこんだものではないのか」と思うのは、理解できるような気がします。

 日本も、明治国家が力をつけたことによって、開国時に結んだ不平等条約の改正を求めたわけですし。

 もう結んでしまった条約だから、ずっとそれに従え、と言われても、パワーバランスが変われば、納得できなくなりますよね。

 こちら側(日本側)からすると、「もう終わった話」を、なぜ蒸し返して混乱させるようなことをするのか、そもそも、そっちもだいぶ国力がついてきたじゃないか、と言いたくなるのだけれど。

 「国力がついてきた」からこそ、黙っていられないのですよね、こういうのって。

 とはいえ、日本側としても、「はいそうですか」と、後付けで条件を変えていくほどの経済的な余裕もないし、それをやっていてはキリがない。

 お互いの妥協点を探るのは、すごく難しい。

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