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「日韓関係」改善には 息の長い議論を

(リベラルタイム 2020年2月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿


日韓問題の焦点である軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、韓国が失効直前に条件付きで延長したことにより、次の舞台は二〇一九年十二月二十四日に中国の四川省成都で開催される日中韓首脳会談に移った感がある。

安倍晋三首相と文在寅韓国大統領の個別会談を実現させ、韓国がGSOMIA破棄の原因になったと主張する日本の輸出管理強化(ホワイト国指定解除)について、日本側の譲歩を引き出すのが韓国の狙いと思われる。本誌が発売される時には既に結果が出ていることになるが、安倍首相が譲歩することは有り得ないと思うし、個人としても譲歩すべきではないと考える。

発端となった韓国人元徴用工に対する補償問題は一九六五年の日韓請求権・経済協力協定で、「完全かつ最終的に」解決された。ところが韓国大法院(最高裁)は昨年十月、元徴用工の請求権を認め、日本企業に損害賠償を命じた。日本側が国と国の約束である日韓請求権協定の順守を強く求めたのに対し、文大統領は「個人の請求権を認めた司法判断を尊重する」として前向きの対応を見せず、逆に「植民地支配の違法性を認めない日本政府は国家主義的だ」と批判、両国の対立は極限に達している。 

韓国政府が土壇場でGSOMIAの失効を回避した形で、文政権のブレーンである文正仁・外交安保特別補佐官は新聞や雑誌のインタビューで「次は日本が輸出管理強化に対する措置を取らなければならない」と強調している。だが、GSOMIAとホワイト国指定解除は次元の異なる問題であり、GSOMIAが日米韓三国の安全保障の象徴であっても、それがなければ直ちに我国の安全保障に支障をきたすわけでもない。

国と国の約束が守られるか否かが一番の問題であり、日韓間のズレは大きい。文政権は慰安婦問題に関し二〇一五年に日韓外相会談で確認された「最終的かつ不可逆的な解決」を受け設立された「和解・癒し財団」も一八年十一月、一方的に破棄した。朴槿恵・前政権時代の“遺物”というのが一因とされるが、政権交代に伴い二国間の合意がいとも簡単に破棄されたのでは、国と国の関係は成り立たない。

今後の打開策として韓国の文喜相国会議長が提案した「1+1+α」案があるが、まとまるとは考えにくい。日韓の企業と個人から寄付金を募り、設立した基金を通じて訴訟の原告らに現金を支払う内容だが、「完全に解決済み」とする請求権協定と矛盾するだけでなく、韓国の特異な政治状況を前にすると、仮にまとまっても、政権交代後も維持される保証がなく、最終的な解決にならない恐れがあるからだ。

以前、本欄でも触れたが、東アジアにおける二国間関係を見ると、日韓は日中に比べ情緒的で議論が成り立ちにくい面がある。歴史認識ひとつとっても、韓国には近親憎悪に似た理屈を超えた反日感情があり、これが両国関係をより難しくしている。

中国では先の大戦後、蒋介石率いる国民党政権が日本に対する戦後賠償を放棄し、中華人民共和国を建国した毛沢東も七二年の日中国交正常化に当たり、これを踏襲した。この結果、国としての連続性と国家間の約束が守られ、日本は鄧小平時代の改革開放政策に巨額のODA(政府開発援助)資金を提供し中国の発展に貢献した。

隣国関係は歴史問題から領土問題まで、とかく難しい。日韓関係は現在、かつてない危機に直面している。これ以上冷え込めば、将来が全く見えなくなる事態も懸念される。

国民にとって良好な関係が一番望ましいのは言うまでもない。地政学的に離れられない以上、なんとしても現状を打開する必要がある。そのためには拙速を避け、末永い視点で息の長い議論を重ねて行く決意が必要である。

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