記事

J1王者マリノスが気を揉む「ゴーン逃亡」と「IR汚職」 - 新田日明 (スポーツライター)

思わぬとばっちりと言えそうだ。日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が会社法違反(特別背任)罪などで起訴されたものの、保釈中に国籍のあるレバノンへ逃亡。日本のみならず世界中に大きな衝撃を与えた前代未聞の一件が、スポーツ界にも影響を与えるのではないかと懸念されている。Jリーグの横浜F・マリノスに関する株式売却の噂だ。

(Naftizin/gettyimages)

長きに渡って低迷していたものの昨季は15年ぶりにリーグ優勝。名門復活を果たし、再び上昇気流に乗ろうとしているタイミングでクラブには水面下で身売り話が浮上しているという。メーンスポンサーを務める日産自動車が経営難により、マリノスの買収先を求めて動いているというのである。1972年に創部された日産自動車サッカー部時代以来、親しまれ続けてきた名門チームの母体が変わるとなれば、それなりのハレーションも覚悟しなければいけないだろう。

しかしながら現場やクラブ内の反応は意外にも冷静だ。身売り説が浮上していても、それほど慌てふためく様子は見られない。むしろ「もう中途半端になっている日産の手からマリノスは完全に離れたほうがいい」との声も数多く聞こえてくるぐらいだ。

5年前から実質上、クラブ運営に日産はほぼ携わらなくなっている。2014年にイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティなど世界8つのサッカークラブの持株会社であるシティ・フットボール・グループ(CFG)がチーム株式の19・95%を保有するようになり、少額資本参入という形ながらも傘下クラブのビッグデータをフル活用してマリノスの運営に関わるようになっているからだ。

実際にCFGのルートを生かして招聘した元豪州代表監督のアンジェ・ポステコグルー監督が今季は就任2年目で自らのサッカースタイルをチームに浸透させることに成功している。もう今のマリノスには日産のカラーはない――。もちろん昔から応援して伝統を重んじる人の中には「マリノス=日産」と未だに頑なな信条を貫く傾向もあるようだが、それでもサポーターの多くはドラスティックな考え方に切り替わりつつあるという。

ゴーン被告によって、イメージもすっかり悪くなってしまった日産から一刻も早くオサラバしたい。CFGによって日産に頼らず別のチームへと変貌を遂げたマリノスは新たにタッグを組んでクラブ運営を担ってくれる親会社を求めている。日産も足かせとなっているマリノスの経営権を手放し、身軽になって何としてでも〝ゴーンの悪夢〟を振り払い、経営再建に乗り出したいというのが本音ではないだろうか。

ところが、そのシナリオに対してもレバノンに逃亡したゴーン被告が蛇のような執念深さを貫き続けることによって、結果的に足を引っ張られかねないというから穏やかではない。

売却先候補はどこか?

言うまでもなくゴーン被告の逃亡によって日産内部には大きな衝撃が走っている。ゴーン被告は8日にもベイルートで記者会見を開く予定。この場でゴーン被告には「日産に対して不利な情報を暴露するのではないか」との見方が出ていることから、日産幹部も気が気ではない。そうなれば日産内部も少なからず混乱し、マリノス売却どころではなくなる可能性も出てくる。

ちなみにマリノス株の売却先候補として一部メディアでも報じられているのが、マカオを中心にカジノ経営権を持つ世界最大級のIR(統合型リゾート)企業「メルコリゾーツ&エンターテインメント」社だ。すでにマリノスとは7月に同社の日本支社がトップパートナー契約を結び、ユニホームにもロゴが入っている。マリノスの地元・横浜市は日本でのIR解禁に備え、誘致を表明。

IR企業の同社にとって誘致に積極的な横浜市をホームタウンとするマリノスの経営権を握るメリットは大きい。それもあって日産からマリノス株を買い付けた同社がCFGとタッグを組んで海外企業の株式過半数取得を禁ずるJリーグ規約に抵触しないように、新たな日本法人を設立してクラブ運営に乗り出すとの具体策まで飛び交っているほどである。

ところが、横浜市のIR誘致に関しては林文子市長だけでなく神奈川県・黒岩祐治知事が全面支援の構えを見せているものの、反発する市民や地元議員、有識者も数多い。加えてIR施設の事業をめぐって中国企業側から賄賂を受け取ったなどとして現職の衆議院議員が逮捕された汚職事件も、イメージとしてはマイナスだ。その悪影響が買収話にも及んでしまうのではないかと次のように心配する声も、マリノスのクラブ内から聞こえて来る。

「他の議員にも捜査の手が及ぶなど汚職事件が広がりを見せる中で、IR企業を親会社にするという選択肢は難しくなるのではないか。いくら事件と無関係とは言え『IR』には汚職事件の捜査と話題がひと段落するまで、クロスオーバーしにくいというのが正直なところかもしれない」

名門マリノスの身売り話にも何らかの影響が及びそうな「ゴーン容疑者逃亡」と「IR汚職事件」。無風のまま杞憂に終わり、2020年シーズンも万全のクラブ運営下でチームがさらなる躍進につなげることを祈りたい。

あわせて読みたい

「カルロス・ゴーン」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    GoTo見直し 協力体制みえず幻滅

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    GoTo停止の是非を論じる無意味さ

    木曽崇

  3. 3

    医療崩壊を煽る報道に医師が怒り

    名月論

  4. 4

    松本人志のGoTo巡る案に賛同続々

    女性自身

  5. 5

    みんなで隠蔽した近藤真彦の不倫

    渡邉裕二

  6. 6

    新井浩文が語った「性的武勇伝」

    文春オンライン

  7. 7

    宮迫&中田&手越共演で「TV崩壊」

    かさこ

  8. 8

    コロナ禍で缶コーヒー離れが加速

    文春オンライン

  9. 9

    政府の問題先送り まるで戦時中

    猪野 亨

  10. 10

    欧州の学者 日本と差は「民度」

    WEDGE Infinity

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。